サルモネラ属菌 Salmonella spp.


日本でのサルモネラによる食中毒の発生件数は減少傾向にありますが、平成11年(1999年)までは食中毒の二大原因でした。

病原体について

サルモネラ(Salmonella)は、人に下痢症状を起こす細菌ですが、数多くの種類があります。

感染症法の3類感染症の腸チフスの病原体であるSalmonella Typhi(チフス菌)や同じく感染症法の3類感染症のパラチフスの病原体であるSalmonella Paratyphi A(パラチフスA菌)も、サルモネラの仲間です。

サルモネラは、O抗原(67種類)、H抗原(80種類)、K抗原といった3つの抗原の有無や種類の組み合わせにより、総計で約2,500種類の血清型があります。

特徴

サルモネラは、鶏、豚、牛などの動物の腸管や河川、下水など自然界に広く分布しており、2,500種類以上もの血清型が知られています。

特にサルモネラ・エンテリティディス(Salmonella Enteritidis)は、1980年代後半から、欧米諸国で流行し、我が国でも平成元(1989)年以降急激に増加しました。

発症には大量の菌が必要と言われていましたが、最近では、少量の菌で感染し発症することが分かってきました。汚染を受けた食品の摂取により起こり、高熱を発するのが特徴です。この菌の発症菌数は一般に10万個程度とされてきましたが、サルモネラ・エンテリティディスは数十個の菌量で発症するとの報告もあります。

また、大型の事例が多く、学校、福祉施設、病院で多発しています。多剤耐性菌の発生は大きな問題になっており、最近は日本でも見られるようになってきました。

サルモネラ感染症は、冬季より夏季に多いです。
年齢的には、子どもたちがサルモネラ感染症になりやすく、小さな子ども(特に1歳未満の乳児)、高齢者、免疫が弱まった人、HIV感染者等でサルモネラ感染症は、重症となりやすいです。

厚生労働省の「食中毒事件発生状況」によれば、日本ではサルモネラ属菌による食中毒の年間発生件数は以前より減っています。日本における主な原因物質別の食中毒の年間発生件数推移(平成7年-平成22年)はグラフのとおりです。 日本においては、発生件数で見ると、平成11年(1999年)まで食中毒の二大原因物質はサルモネラ属菌と腸炎ビブリオでしたが、平成17年(2005年)からは、カンピロバクターとノロウイルスが食中毒の二大原因病原体となっています。

原因となる食品

サルモネラに汚染されている肉や卵を原材料として使用した場合で、牛肉のたたき、レバ刺、食肉調理品(特に鶏肉)、うなぎやスッポン等、また、ネズミやペット動物を介して食品を汚染する場合があります。

前述のように、サルモネラ・エンテリティディスに汚染された鶏卵による食中毒が増加しており、生たまご入りとろろ汁、オムレツ、玉子焼き、自家製マヨネーズなど、鶏卵を原料とし、十分な加熱工程のない食品が原因となっています。

潜伏感染と主な症状

潜伏期間は約5~73時間で、腹痛、水様性下痢、発熱(38℃~40℃) が主症状です。嘔吐、頭痛、脱力感、倦怠感をおこす人もいます。

感染経路

経口感染

サルモネラは、人や鳥や動物の消化管に住んでいます。

人は、動物の糞に汚染された食物を食べることにより、サルモネラに通常、感染します。サルモネラに汚染しても、通常の食物とにおいも見かけも何の変わりもありません。汚染された食物は、しばしば動物由来のもので、牛肉、鶏肉、牛乳や卵といったものが見られます。しかし、野菜を含めあらゆる食物が汚染される可能性があります。

トイレの後で手を洗うことを忘れた感染者が汚染された手で触れることにより食品はサルモネラに汚染することがあります。

接触感染

サルモネラは、ペットの糞にも見られることがあります。

特に下痢をしているペットには注意が必要です。ペットの糞に触った後、手を洗わなかったような場合に、人がサルモネラに感染することがあります。

爬虫類(カメ、ヘビ、イグアナ、トカゲ等)と両生類(カエル、イモリ、サンショウウオ等)は特にサルモネラを持ちやすい生物です。爬虫類と両生類は下痢症状もなくサルモネラを持っていることがあります。爬虫類や両生類を扱った後にはすぐに手をよく洗った方が良いです。

爬虫類や両生類を扱った後で子どもたちが手をよく洗うように大人は注意する必要があります。

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