メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 MRSA

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
MRSA Methicillin-Resistant Staphylococcus Aureus
バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)
VRSA Vancomycin-Resistant Staphylococcus Aureus


MRSAはこの黄色ブドウ球菌の仲間で、性質は黄色ブドウ球菌と一緒ですが、耐性遺伝子を持っており、抗生物質(菌を殺す薬)が効きにくくなっています。

その為、治療が思うように進まず、患者の抵抗力だけが頼りになる場合が多いのです。

重症化すると、敗血症、髄膜炎、心内膜炎、骨髄炎などに陥って死亡する事も少なくありません。

病原体について

MRSA は黄色ブドウ球菌が耐性化した病原菌であり、黄色ブドウ球菌と同様に常在菌のひとつと考えられ、健康な人の鼻腔、咽頭、皮膚などから検出されることがあります。

薬剤耐性菌であるため薬剤の使用が多い病院で見られることが多く(耐性菌は抗生物質の乱用により出現すると言われている)、入院中の患者に発症する院内感染の起炎菌としてとらえられています。しかし病原性は黄色ブドウ球菌と同等で、健康な人にも皮膚・軟部組織感染症などを起こしえます。

特徴

黄色ブドウ球菌は非常にありふれた菌で、私たちの髪の毛や皮膚、鼻の粘膜、口腔内、傷口などによく付着しています。

しかし、黄色ブドウ球菌は、基本的に弱毒菌のため、私たちの抵抗力がしっかりあれば、特に重症化することはありません。

MRSAはこの黄色ブドウ球菌の仲間で、性質は黄色ブドウ球菌と一緒ですが、耐性遺伝子を持っており、抗生物質(菌を殺す薬)が効きにくくなっています。その為、治療が思うように進まず、患者の抵抗力だけが頼りになる場合が多いのです。

重症化すると、敗血症、髄膜炎、心内膜炎、骨髄炎などに陥って死亡する事も少なくありません。

バンコマイシンは耐性菌の出現が少ない抗菌薬としてMRSAの治療に汎用されていましたが、1996年のバンコマイシン低度耐性黄色ブドウ球菌(VISA)やバンコマイシンヘテロ耐性黄色ブドウ球菌(ヘテロVISA)の発見を始め、2005年にバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)のバンコマイシン耐性遺伝子(vanA)を獲得したバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)の出現が報告されていることから、その使用には十分な注意が必要とされています。

主な症状

黄色ブドウ球菌であるため同一ですが、本菌が免疫力の低下した患者に感染すると、通常では本菌が起こすことはないような日和見感染を起こすこともあります。

一旦発症するとほとんどの抗生物質が効かないため治療は困難になります。

特に、術後の創部感染、骨感染(骨髄炎)、感染性心内膜炎(IE)、臓器膿瘍は難治性化し、適切な治療を受けられないと後遺症ばかりか死に至ることもあります。

院内で感染者が判明した場合、感染者の治療も重要であるが、感染を広げないことも重要であり、標準予防策に基づく適切な感染管理が必要となります。

重症化しやすい状態

  1. 無菌室が必要になるくらい抵抗力が低下した場合
  2. 大手術の後
  3. 重症の熱傷(やけど)を負った場合
  4. 血管内にカテーテルを長時間入れている場合

このような場合にMRSAに感染すると、様々な病気を起こしやすく、治療しにくいため、MRSAは大変恐れられていますが、家庭や施設で生活されている方々に、重症化しやすい状態の方は少ないため、MRSAのために実害が起きるということは通常考えにくいと言えます。

保菌と発症

MRSAは非常にありふれた菌で、鼻の中にMRSAを付着したまま家庭や施設で過ごされる方もいます。MRSAが付着しているけれども、病気は起こしていない状態を「保菌」していると言います。

MRSAを保菌していても、健康な人であれば、数日で自分の抵抗力で駆除してしまいますが、高齢になるとそのまま「保菌」した状態が続くことがあります。

しかし、「保菌」しているからといっても、家庭や施設で過ごせるような人であれば、重症化して、実害を及ぼすようなことはありません。つまりMRSAを「保菌」していても心配はなく、周りの人にも害は及ぼさないということです。

一方、MRSAを「発症」している患者というのは、感染した結果、咳やくしゃみ、発熱、下痢のような症状が現れて、臨床的に問題となる感染症状を呈している患者のことです。

代表的なMRSA感染症とは、髄膜炎、肺炎、腹膜炎、腸炎、敗血症などです。

感染経路

MRSAをもったご利用者や、撒き散らされた菌で汚染された床などが汚染源となり、それに触れたり、空中に舞い上がった菌を吸込んだりして人に移り、その人の手指を介して、次々と広がっていきます。

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