エボラウイルス Ebola Virus


感染症法では1類の感染症に分類されている、極めて致死性の高い危険なウイルスです。

病原体について

エボラ出血熱はエボラウイルスによる感染症です。感染症法では1類の感染症に分類されています。

エボラウイルスはマールブルグウイルスと共にフィロウイルス科(Filoviridae)に属します。短径が80〜100nm、長径が700〜1,500nmで、U字状、ひも状、ぜんまい状等多形性を示すが、組織内では棒状を示し、700nm前後のサイズがもっとも感染性が高いです。スーダン株とザイール株との間には生物学的にかなり差があります。

特徴

ザイール株は極めて強い病原性を示し、速やかに死に至らしめます。

病原体はレベル4に分類されており、ウイルス増殖を伴う作業は最高度安全実験施設(BSLー4施設あるいはP4施設)でなされる必要があります。

日本では国立感染症研究所村山庁舎にグローブボックス式P4施設が1981年に設置されました。世界では宇宙服式、グローブボックス式を含めて30カ所以上で稼働中である。アフリカではガボン及び南アフリカ共和国にP4施設があります。

主なアウトブレイク事例

スーダン(1976、1979)

1976年6月末、ス―ダン南部のヌザラ、マリディを中心に284名が感染し、151名(53%)が死亡しました。ヌザラの町の綿工場で倉庫番の男性が発症し、次々と家族、医療関係者等に伝播したもので、さらに独立した2例から家族内、院内感染として感染拡大が生じました。

1979年にはヤンピオで5家族34名が発症し、22名が死亡しました。

コンゴ民主共和国(旧ザイール)(1976、1977、1995)

1976年のスーダンでの発生から2カ月後、北部のヤンブク教会病院を舞台として大発生が起こりました。病院とそこに出入りしていた患者と家族、医療関係者の間で感染拡大が生じたものです。

初めは、ヤンブク教会学校の教師(44歳男性)がマラリアの疑いで注射を受け、その同じ注射器で他の注射を受けた9人全員が感染し、全員死亡しました。それらの患者との接触、医療を通じ伝播が起こった。マスク、手袋、ガウン、注射器等の基本的不足による。

約2カ月の間に318名の患者中280名(88%)が死亡した。結局、米国CDC、WHO、ベルギーのチームが入り、終焉しました。

コートジボアール(1994)、ガボン(1996)

この2カ所での発生にはいずれもチンパンジーが関与していますが、チンパンジーはヒトと同様終末宿主であり、自然界の宿主ではないとされています。

前者は、死亡したチンパンジーの解剖に携わっていたスイス人女性が感染したもので、後者では、森で死亡していたチンパンジーに子供たちが接触し、感染発症したことが発端です。

1996年10月のガボンでの発生では、原因・経路は不明です。

ウガンダ(2000~2001)

スーダンとの国境に接する北方地域のグルで10月に始まり、南のマシンデイ(27例)や遠く離れたムバララ(5名)でも発生し、計425名の患者と225名の死亡者(53%)を出して過去最大の流行となりました。

他地域への感染の拡大は、グル地区で行われた葬式に参加して感染した者や家族間で感染した者が国内移動したことによります。死者の清拭や、葬儀の際の死者とのお別れの儀式による血液や体液との接触が感染拡大の原因です。そのため女性感染者が269名(63.3%)を占めたが、患者の平均年齢は27歳で、最低年齢は日齢3日、最高齢は72歳でした。

また、しばしば問題となる医療従事者の感染は29 例でした。この時のアウトブレイク時では、WHOを主体に全世界から23のチーム、104名の人材が派遣され、国際的な対策チームが組織され対応しました。日本人専門家は計5名が参加し、臨床例の対応にあたりました。

ガボンとコンゴ共和国(2001〜2002)

2001年12月にガボンとコンゴ共和国の国境地帯で発生し、2002年4月までにガボンで65例(死亡者数53 名)、コンゴで32名(死亡者数20 名)の流行がありました(致命率は両方で75%)。

コンゴ共和国とウガンダ(2003~2007)

コンゴ共和国(2回)及びウガンダで、100人を超える患者発生の報告がありました。

西アフリカ(2014~)

エボラウイルス症患者(疑い例を含む)の累計は、総数で1975例、うち死亡例1069例で致命率は54%。

国別の内訳(報告国)は、ギニアで510例(死亡377例)、リベリアで670例(死亡355例)、シエラレオネで783例(死亡334例)、ナイジェリア12例(死亡3例)です。2014年6月24日時点(総数618例)で、51例(8%)が医療従事者でした。

流行の第一波は、2014年1月から3月にかけて発生し、多くの症例がギニアから、またリベリアからも複数の症例が報告されています。一時、ギニアにおいては症例数が減少傾向にあったが、第二波が2013年5月に始まり現在まで持続し、ギニア・リベリア以外に、シエラレオネにおいても多数の症例が報告されています。

なお、ナイジェリアの最初の死亡例は、リベリア人の40歳男性で、空路でリベリアからトーゴ、ガーナを経てナイジェリアに行き、渡航中に発症、ナイジェリアの病院でエボラウイルス症と診断され、数日後に死亡した例でした。

また、リベリアにおいては、2名の米国人医療従事者がエボラウイルス症と診断されました。

感染の危険のある地域

アフリカ中央部で発生しています。2014年3月にはギニアで集団発生が報告され、西アフリカ(ギニア、リベリア、シエラレオネ)では夏以降に爆発的な流行がみられています。周辺国や医療支援を行った国でも感染例が報告されています。

感染経路

エボラウイルスに感染した動物や感染した人の体液に、傷口や粘膜が接触するとウイルスが侵入、感染します。

また、症状が出ている患者の体液等(血液、分泌物、吐物・排泄物)や体液等に汚染された物質(シーツ、衣類、医療器具、患者が使用した生活用品など)に傷口や粘膜が触れても感染することがあります。

現在は、未発症の患者からは感染しないと考えられています。ウイルスは飛散しにくい形状なので、通常は空気感染も起こりません。しかし、直接、飛沫を浴びた場合には感染する可能性があります。

潜伏期間と症状

2~21日(通常7~10日程度)の潜伏期間の後、38度以上の高熱、頭痛、筋肉痛、のどの痛みなどの風邪様の症状で始まります。

続いて、嘔吐、下痢や内臓機能の低下がみられ、さらに進行すると身体のいろいろな部分から出血し、死に至ります。

致死率が非常に高い病気です。

予防

ワクチンはありません。

感染が疑われる人との接触、流行地域での行動は可能な限り避けてください。感染防御対策を行っている多数の医療関係者でさえも感染しています。

壁や机に付着した体液に触れるなど、予想もしないところが感染源になることがあります。周囲に付着したウイルスは感染力を保持していると考えて行動してください。

動物も感染しますので、動物の死体に近づくこと、触ることも避けましょう。加熱処理の信頼できない肉を食べることは論外です。

一方、未発症の人は血液や体液にウイルスが出ていないので感染させることはありません。流行地に滞在した健康な人がウイルスを持ち込むこともありません。

善意を持って流行地を支援する人々には過剰な懸念を抱くことなく、冷静に対応しましょう。

消毒

アルコールなどの消毒薬だけでなく、石けんでも感染力をなくす効果があります。

もし、感染の可能性のある患者と接触した場合には、直ちに石けんで体を洗うことを考えてください。

治療

特別な治療法はありません。

症状を軽くするための補液と対症療法を行い、生存の確率を高めるための治療を行います。

早期に安静を保つことが有効であり、早期発見が重要と考えられています。

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