2020/06/12【新型コロナウイルス:COVID-19】保育の現場 感染リスクがストレスに 新型コロナウイルス

緊急事態宣言の解除で、多くの保育所で子どもの受け入れが再開されていますが、保育の現場ではいわゆる「3つの密」が避けられず、感染リスクがあることがストレスになっている実態が、保育士の団体などを対象にしたアンケート調査でわかりました。
全国社会福祉協議会は、新型コロナウイルスによる保育の現場への影響を調べるために、先月下旬、各都道府県の保育士や認可保育所の団体の代表らおよそ300人を対象にアンケート調査を行い、221人から回答がありました。
それによりますと、現場でストレスの要因になっているものを3つ聞いたところ、「『3つの密』が避けられず、子どもや保育者に感染リスクがあること」が90%で最も多く、次いでマスクや消毒液などの不足で十分な感染予防ができないこと65%、安全な保育の方法がわからないことが43%などとなりました。
協議会によりますと、緊急事態宣言の解除で休園などしていた多くの保育所で子どもの受け入れを再開しているということですが、乳幼児が相手の保育の現場では密接や密集を避けることが難しく、アンケート調査では、こうした現状に多くの保育士が不安を感じていることがうかがえるとしています。
協議会では「感染防止対策に関する情報共有や研修を行うなどして、現場の負担を軽減していきたい」としています。

試行錯誤続く

保育現場では、「3つの密」を避けるための工夫など、感染防止に向けた試行錯誤が続いています。
東京・千代田区で一時預かりのサービスを提供している保育施設では、子どもを預かる際、事前に体温を測るほか、家族にも発熱やせきの症状がないかを確認するようにしました。
また、子どもたちが手にするおもちゃなどの消毒の回数を、これまでの1日2回から1時間ごとに増やしたほか、換気も頻繁に行うようにしているということです。
そして、子どもどうしの距離を少しでも確保するため、おもちゃを離して置いて1か所に集まらないようにしたり、食事の際は、これまで1人の保育士が2人の子どもに同時に食べさせていたのを、1人ずつ別々にしたりしているということです。
施設長の早坂今日子さんは、「飛まつによる感染を防ぐ対策を徹底しているが、その分、保育士の手がかかるようになった。治療薬もない中、未知の病とどう向き合うか、以前より気をつける点が増えている」と話していました。

保育士「子どもが好き 感染してもしかたない」

都内の認可保育所にパートで勤めている30代の保育士の女性は、緊急事態宣言が出されている間は園の指示で休業し、今月から復帰しました。
女性は、「園児の8割くらいは登園を再開している状態だが、園側からは、感染防止のために、どういったことに気をつければいいかという説明もないまま、慌ただしくスタートした。いろんなことに気を配るという意味では、今のほうがストレスがかかっている」と話していました。
勤務先の保育所では、「3密対策」として、子どもたちのクラスを室内と屋外の2つに分けるなどの対応を取っているということですが、暑さが厳しさを増す中、外遊びが限定されつつあり、女性は、対策に限界があると不安を募らせています。
そして、自分自身の感染リスクについて、「子どもが好きで、仕事が好きで働いていて、感染してもしかたないと思っている。本当に怖かったらきょうにでも辞めると思うが、覚悟してやっている」と心の内を打ち明けました。
そのうえで、「感染すれば、私たちの年代でも死んでしまう可能性がある。ものすごく気持ちをすり減らしていることに何の手当もないのはひどいと思う。現場で働く人には、危険手当として、慰労金のようなものは払ってほしい」と話していました。

慰労金の支給を

アンケート調査をおこなった全国社会福祉協議会は、保育士たちは、感染への不安を感じながら保育サービスの提供を続けているとして、今月1日、厚生労働省に対し、医療や介護の分野で働く人たちと同様に慰労金を支給するよう求める緊急要望を行いました。
また、立憲民主党など野党3党も、今週、厚生労働省に対し、慰労金の支給を要望しました。
これに対し厚生労働省は、これまで保育所では、医療機関や介護施設とは異なり、感染者の集団=クラスターが発生していないことや、子どもは高齢者などに比べると重症化するリスクが低いことなどを理由に、保育士を支給対象とするのは難しいとしています。
一方で、自治体の中には、独自の支援を行っているところもあります。東京・練馬区では、保育士に1人当たり最大2万円の慰労金を支払う予定にしているほか、愛知県大府市は、保育施設で働く職員に対する見舞い金として、施設に対して助成を行っています。

保育現場の処遇改善を

保育や子育ての問題に詳しい恵泉女学園大学の大日向雅美学長は「新しい生活様式が感染予防対策に必要だということは十分にわかるが、ソーシャルディスタンスを守れというのは基本的に保育にはなじまない。子どもを抱き締め、だっこするのは保育の原点であり、何をすれば安全に保育できるかを考える、新しいステージに入っている」と指摘しています。
そのうえで、子どもと保育士双方の体温チェックをはじめとした健康管理を徹底したり、施設内の消毒や換気を徹底したりすることで、保育士と子どもたちが安心して触れあえる環境を整備することが重要だとしています。
また、大日向学長は、慰労金の支給も含め、保育現場の処遇の改善を進めないと担い手不足がさらに深刻になると危惧していて「保育の仕事は、介護や医療と同じくらいになくてはならない社会的インフラとして、政府が認めているという意思表示がほしい」と話しています。

厚生労働省の支援策

厚生労働省では保育現場の感染防止対策への支援として、都道府県が保育施設に対して、子ども用のマスクや消毒液を配布する費用を全額補助しています。
また、12日成立した今年度の第2次補正予算にも、施設の職員に対し感染防止対策などの研修を行う費用を全額補助することや、感染リスクへの不安など、職員の精神的な負担を減らすために、専門の相談窓口を設置したり、専門家による支援を行ったりする自治体に対する補助も盛り込まれていています。
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