2020/04/30【新型コロナウイルス:COVID-19】民間のPCR検査会社 現状は… 新型コロナ

新型コロナウイルスの感染を確かめるPCR検査を行う長野県の検査会社がNHKの取材に応じ、現状では検査依頼に対応できているとしたうえで、今後、検査数が急増した場合、中小の検査会社では物資の確保や人手不足で対応が難しくなる可能性もあると話しました。
長野県と埼玉県に検査所を持つ「ミロクメディカルラボラトリー」は、3月から新型コロナウイルスのPCR検査を請け負っていて、契約を結んだ長野県や茨城県の病院などで採取された検体の検査を行っています。2か所の検査所で1日に合わせておよそ100件の検査を行う態勢を整えていますが、現状では依頼は1日におよそ30件程度だということです。
しかし、今後、検査数が急増した場合、中小の検査会社では必要な物資の確保に時間がかかったり、人手が不足したりして対応が難しくなる可能性があるということです。鼻から検体を採取するときに使う棒や、検体を運ぶための液体、それに検査に必要な試薬の需要が各地で高まっていて、メーカによっては手に入れるまでにおよそ3週間かかるものもあるということです。
また、検査に使う機械を増やすために今月中旬に注文したところ、納品は5月下旬になると言われたほか、検体を病院から検査所に輸送するのにも手間がかかるため、中小の検査会社にとっては契約を結ぶ病院をなかなか広げられない事情もあるといいます。
社長の玉井清子さんは「検査の依頼はまだそんなに多くはありません。検査を受けられない人が多くいる状況をなんとかしたいと思い、需要が多い東京などほかの地域からも受託できないか検討している」としたうえで、「PCR検査自体、時間と手間がかかるもので、検査技師の不足や機械や物資などの納入に時間がかかっているので、思うように進まないのが現状だと思う。数だけにこだわらず、必要なときに必要な検査ができるようにどのように判断していくかが大切だと感じる」と話していました。
PCR検査 3割以上が民間会社
厚生労働省によりますと、現在、国内で実施できる新型コロナウイルスのPCR検査は、28日の時点で1日当たり1万6000件余りで、このうち民間の検査会社がおよそ5820件と3割以上を占めています。
一方、実際に民間の検査会社でPCR検査が行われた件数は4月に入って増えているものの、4月27日が2187件、4月に最も多かった25日が2669件となっています。
NHKがPCR検査を受託している27社のうち大手3社に取材したところ検査態勢は整っていて、今のところは依頼された分に対応できているということです。しかし、中小の会社のなかには、メーカーによっては検査に必要な試薬や物資、機器などを手に入れるのに時間がかかるケースがあり、今後、検査が急増した場合に対応できるか懸念する声もありました。
どんな場合に検査?
新型コロナウイルスへの感染の有無を調べるPCR検査。今はどんな場合に行われているのでしょうか。
厚生労働省によりますと、まず、37度5分以上の発熱やかぜの症状が4日以上続いたり、4日たっていなくても強いだるさや息苦しさがある場合、保健所などに設けられている「帰国者・接触者相談センター」に連絡するよう呼びかけています。高齢者や基礎疾患のある人、それに妊婦は、症状が2日程度続いた時点で相談してほしいと呼びかけています。
相談センターで検査が必要と判断された場合、一般に公開されていない「帰国者・接触者外来」を紹介され、そこで検体を採取します。
また、このルートとは別に地域の医師会などが検査センターを立ち上げて、保健所を通さずに検査を行う仕組みも始まっています。かかりつけ医が必要と判断すれば、センターを受診してもらい、PCR検査に必要な検体を採取していきます。
厚生労働省は「医師が必要と判断した場合は検査を行うべき」としていますが、どんな場合に検査が必要だと判断していくのでしょうか。日本環境感染学会は「入院治療の必要な肺炎患者で、ウイルス性の肺炎を強く疑う症例」とし、原則として軽症患者は検査の対象外だとしています。
また、東京都の医師会は、かかりつけ医の診断の目安として、血液検査やレントゲン検査などをしてほかの肺炎ではないか確認したり、一般的な肺炎の治療を行い3日間程度様子を見ても症状の改善が見られない場合は、新型コロナウイルスに感染していることが否定できず、PCR検査が必要だとしています。
検査受けられず重症化する人も
家族がPCR検査をなかなか受けられず、重症化してしまったと訴える女性がいます。
取材に応じたのは埼玉県に住む20代の女性で、80代の祖父が新型コロナウイルスに感染しました。女性によりますと80代の祖父は4月6日に37度5分の発熱があり、1度、熱が下がったもののその後、再び発熱しました。かかりつけ医を受診したうえでPCR検査を受けようと自治体の相談窓口に電話を掛けましたが、全くつながらなかったといいます。
祖父は検査を受けられないまま自宅療養を続け、窓口に電話した2日後に自宅で倒れて救急搬送されました。そこでようやくPCR検査を受け、感染が確認されましたが、今度は入院できる病院がすぐに見つからず、保健所から再び自宅待機するよう指示されたといいます。
病状はさらに悪化し、翌日には呼吸困難に陥って医療機関に入院し、集中治療室で治療を受ける事態となりました。
女性は「一刻も早く検査を受けてもらいたかったが、保健所に電話しても全くつながりませんでした。救急車で運ばれてからも重篤な状況が続き、『覚悟してください』と言われてことばを失いました。検査をもっと早く受けられるタイミングがあったと思うし、もっと対応が早ければという悔しい思いでいっぱいです」と話していました。
「しっかり検査を行っていくことが基本」厚労省
必要な人が検査を受けられていないという指摘について、厚生労働省大臣官房の迫井正深審議官は「現在は感染が大きく広がっているので、弾力的に判断していく必要があるが、それがまだ浸透していないのかもしれない。検査体制がまだ十分でないという意見もあるが、基本的には大きく件数を伸ばしてきている。医師が必要だと判断したものは、しっかり検査を行っていくことが基本で、より現場に近い医師会などにも参加してもらいながら、スピード感を持って対応にあたっていきたい」と話しています。
「自己判断で受診は避けて」専門医
感染症の専門医で埼玉医科大学総合診療センターの岡秀昭准教授は検査体制を拡充していく時の課題について、「医師の中には防護服の使い方や検体の採取のしかたに不安を持つ人もいるが、マニュアルや物品が非常に不足している。安全に検査を行うための対策も進めていくべきだ」と指摘しています。
また、検査を受ける側も注意が必要だと指摘し、「全く症状の無い人が不安を取り除くために検査を受け始めると現場の医療崩壊を促しかねない。症状の無い人や軽い人が陰性証明を求めに自分の判断で医療機関を受診するのは避けてもらいたい」と話しています。
判断をめぐって開業医は…
患者にPCR検査を受けさせるかどうかの判断をめぐっては、開業医の間でも考えに隔たりがあります。
NHKが都内の複数の開業医に聞いたところ「症状が軽くても悪化する前に手を打つことが大事で、必要な検査はどんどんやっていくべきだ」という声がある一方で、「現状では症状が軽い場合、陽性であっても自宅待機などになってしまうことを考えると、軽症者の場合は必要以上に検査を受けさせなくてもいいのではないかと思うし、そう考える医師は他にもいると思う」という声も聞かれました。
https://www3.nhk.or.jp/…/20200430/k10012412061000.html

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