2019/05/22【HIV】子供約500人を含む600人以上がHIVに感染 注射器使い回しや輸血が原因か /パキスタン

パキスタン南東部シンド州で、子供約500人を含む600人以上がHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染していることが明らかになった。感染の拡大には自らもHIVに感染している小児科医が関わっていたとして、当局は先月末に同医師を逮捕し調べを進めていたが、ここにきて注射器の使い回しや安全性が確保されていない輸血などパキスタンの医療機関の管理システムに重大な欠陥があることが分かってきた。『The Guardian』『Zero Hedge』などが伝えている。
「パキスタンの国家エイズ対策プログラム(NACP)」によると、シンド州ラカルナで最初のHIV感染が確認されたのは今年4月24日のことだった。しかしその感染は急速に広がり、パキスタン保健省は同地域に仮設クリニックを開設しHIVの検査を行ってきた。
シンド州当局によると、ラカルナでは5月20日の時点で1万人以上が検査を受け、少なくとも子供494人、成人113人、計607人がHIVに感染しているという。感染した子供のうち60%は5歳以下で生後2か月の乳児も含まれており、今後更なる感染の拡大が予想されている。
感染がラカルナ周辺に集中していたことから当局は、ラカルナの公立病院で働くムザファー・ガンハロー医師(Muzaffar Ghangharo)がHIVの感染源であるとし、4月30日に同医師を逮捕していた。ムザファー医師はラカルナ郊外のラトデロでも私立クリニックを経営しており、ウイルスに汚染された注射器の使い回しで感染を拡大させたとみられている。
ムザファー医師は「自分がHIVに感染していることを知らなかった。数か月前に事故で輸血を受けた時に感染したのかもしれない。故意にHIVを感染させてはいない」と主張しているが、当局はそれが真実なのか、感染源は同医師の血液なのか、そもそも医師の資格を持っていたのかなどについて調査を進めてきた。『The Guardian』によるとムザファー医師の診察を受けていた4人の子供がHIVで死亡しており、両親らが同医師の責任を追及しているという。
しかしながらパキスタンでは静脈注射による薬物乱用者や性労働者、湾岸地域への出稼ぎ労働者がHIVの感染を広げていることも分かっており、HIVの感染拡大は今に始まったことではなく、今回たまたま数字が明らかになっただけとみる者もいるようだ。「国際連合エイズ合同計画(UNAIDS)」によると、パキスタン国内には無資格の医師が60万人いるとしており、「パキスタン医師・歯科医審議会」はシンド州だけで約20万人の無資格医師が医療行為を行っていると明かしている。
シンド州ヘルスケア協議会のCEOであるミナジ・キドウァイ医師(Minhaj Kidwai)は、これまでの調査について次のように語っている。
「これだけの感染を一人の医師の責任とするには無理があります。注射器の使い回し、輸血や点滴の安全性など問題は山積みで、捨てられた注射針を集めて医師に売りつけている者さえいることが分かっています。ここ3週間でラカルナでは600の施設が政府から安全性に問題があると警告され、147の施設が閉鎖されています。また、床屋でカミソリの刃を使い回していることも一因だと考えられています。小さな子供の割礼を床屋で行っている地域もあるほどです。」
2月に生後16か月の幼児を診察し、HIVに感染していることを突き止めたイムラン・アカバル医師(Imran Arbani)は、「この地域の医師の多くはHIVについての知識がほとんどなく、訓練も受けていません。衛生状態も悪く、偽医者が横行しています」と語っている。またこの幼児の両親は「最初の医師は誤診で、娘の具合は悪くなるばかりでした。また医師らは内服薬を処方せず、注射器を使うことが多いのです。今の娘の症状は落ち着いていますが、不安は尽きません」と明かしている。
シンド州政府と保健省は現在、UNAIDS、国際連合児童基金(ユニセフ)、世界保健機関(WHO)や国際連合の機関らと協力し、感染の拡大防止に向けて動いている。感染者の大半は罪のない子供たちである。彼らが苦しむことがないように、感染者への対策もしっかり行ってもらいたいものだ。
https://news.nicovideo.jp/watch/nw5332777

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