2021/01/15【新型コロナウイルス:COVID-19】新型コロナ対策 個人の自由制限『許される』86% NHK世論調査

新型コロナウイルスによる生活や意識の変化などについてNHKは世論調査を行いました。感染症対策のため人の移動や経済活動の制限など個人の自由を制限することについて、86%の人が『許される』と回答しています。
NHKは去年11月4日から12月7日にかけて全国の18歳以上3600人を対象に、郵送法で世論調査を行い、64.8%にあたる2331人から回答を得ました。
調査結果によりますと、生活への影響については「大いに影響があった」33%、「ある程度影響があった」49%を合わせて82%が『影響があった』と回答しました。
収入の増減については『減った』と答えた人が30%、「変わらない」が65%、『増えた』が2%でした。
雇用形態別では「非正規雇用」が「正規雇用」よりも、また、職業別では「自営業者」がほかの職業よりも収入が減った人の割合が高くなっています。
また、感染症対策のため人の移動や経済活動の制限など個人の自由を制限することが許されるかどうかについては、『許される』が86%、『許されない』が12%でした。
さらに、感染症対策のため政府や自治体がとる措置について具体的に挙げて許されるかどうか聞いたところ、『許される』とした人の割合は、「外出の制限」が87%、「休業要請」が82%、「携帯電話の位置情報による個人の行動把握」は52%となりました。
そのうえで外出を禁止したり休業を強制したりできるようにする法律の改正が必要かどうか聞いたところ、「必要だ」が42%、「必要ではない」が19%、「どちらともいえない」が38%でした。
日常生活への影響
今回行ったNHKの世論調査の結果を詳しく見ていきます。
まずは、日常生活への影響や新しい生活様式についてです。
▼国内で感染が起きてから生活にどの程度影響があったか聞いたところ、
◇「大いに影響があった」が33%
◇「ある程度影響があった」が49%
◇「あまり影響はなかった」が16%
◇「全く影響はなかった」が1%でした。
『影響があった』という人が合わせて8割あまりに上りました。
▼現在(調査時)、具体的にどのような影響があるかについては
◇「親や友人など会いたい人に会えない」が49%
◇「1日中家で過ごすことが多い」が30%
◇「気持ちが落ち込むことが多い」が14%
◇「仕事の負担が増えている」が14%
◇「収入が減って生活が苦しい」が11%でした。
仕事や収入への影響だけでなく交流の機会が大きく減っている現状が浮かび上がっています。
▼感染を防ぐため政府が呼びかけている「新しい生活様式」について日本の社会に定着すると思うことを聞いたところ、
◇「マスクや手洗い」が91%
◇「部屋の消毒や換気」が53%
◇「テレワークなどの新しい働き方」が51%
◇「3つの密の回避」が51%
◇「キャッシュレス決済」が46%などとなりました。
ストレス
▼感染拡大前と比べて、ストレスを感じることが増えたかどうか尋ねたところ
◇「大幅に増えた」と答えた人が14%
◇「ある程度増えた」が53%
◇「変わらない」が30%でした。
ストレスを感じることが『増えた』と答えた人に、何がストレスになっているか複数回答で尋ねたところ、
◇「マスクの着用など感染防止対策に気を遣うこと」が76%
◇「気軽に遊びに行けないこと」が75%
◇「自分や家族が感染するかもしれないと考えること」が75%で
◇「気軽に旅行や帰省ができないこと」が66%
◇「飲み会や食事会を控えていること」が53%
◇「行事やイベントが中止になること」が52%などとなっています。
▼感染を避けるために医療機関での受診を控えたことがあるか聞いたところ、
◇「控えたことがある」は39%
◇「控えたことはない」が32%
◇「そもそも受診する必要がなかった」が28%でした。
「控えたことがある」と答えた人を男女別に見ると、
◇女性が45%
◇男性が32%となり、
18歳から70歳以上までのいずれの年代でも女性の方が多くなりました。
マスク着用への意識
マスク着用に対する意識も聞きました。
▼外出時にマスクを着用していない人を見かけたら、
◇「非常に気になる」と答えた人は36%
◇「やや気になる」は51%
◇「あまり気にならない」は11%
◇「全く気にならない」は2%でした。
一方、▼自身のマスクの着用について他人の目がどの程度気になるかについては
◇「非常に気になる」が43%
◇「やや気になる」が36%
◇「あまり気にならない」が14%
◇「全く気にならない」が6%となりました。
収入・働き方
新型コロナウイルスの感染拡大が収入や働き方に与えた影響です。
▼収入の増減については
◇『減った』が30%、
◇「変わらない」が65%
◇『増えた』が2%でした。
収入が減った人の割合は雇用形態別では「非正規雇用」が40%で、「正規雇用」(32%)よりも多く、また、職業別では「自営業者」が63%で他の職業よりも多くなっています。
▼これに対し、支出については
◇『増えた』が32%
◇「変わらない」が43%
◇『減った』が23%で
増えたという人が多くなっています。
また、働き方の変化について、回答者のうち「仕事をしている」と答えた1422人を対象に聞きました。
▼働き方への影響を聞いたところ感染が起きた後に始めた取り組みは
◇「オンライン会議」が18%
◇「在宅勤務を含むテレワーク」が17%となっています。
こうした新しい働き方を始めた人は東京がそれ以外の地域よりも多く、「オンライン会議」では27%、「在宅勤務を含むテレワーク」では33%に上っています。
▼労働時間の変化については
◇『減少した』が26%
◇「変わらない」が62%
◇『増加した』が11%となっています。
▼今後、現在の仕事を失ったり収入が減ったりする不安をどの程度感じているか聞いたところ、
◇「大いに感じている」が17%
◇「ある程度感じている」が36%
◇「あまり感じていない」が32%
◇「全く感じていない」が15%でした。
家事・子育て・家族
家族や家庭をめぐる変化です。
▼感染が拡大する前と比べて、家族の関係に変化があったか聞いたところ、
◇『よくなった』が9%
◇「変わらない」が76%
◇『悪くなった』が6%でした。
また、回答者のうち家族がいる人2130人を対象に家事や育児の変化を聞きました。
▼家事の時間に変化があったか聞いたところ、
◇「増えた」は24%
◇「変わらない」は63%
◇「減った」は2%でした。
男女別に見ると、家事の時間が「増えた」という人は、
◇女性では28%
◇男性では19%でした。
▼子育ての時間の変化では、
◇「変わらない」が25%
◇「増えた」が9%
◇「減った」が1%でした。
◇子育てを「していない」が55%となっています。
男女別では女性のほうが子育てをする時間が増えた人の割合が高く年代別で見ると
◇18歳から39歳では女性が19%、男性が13%
◇40代・50代では女性が17%、男性が10%でした。
自由の制限
自由の制限についてです。
▼感染症対策のため人の移動や経済活動の制限など個人の自由を制限することが許されるかどうか聞いたところ
◇「許される」が22%
◇「どちらかといえば許される」が65%
◇「どちらかといえば許されない」が10%
◇「許されない」は2%でした。
▼さらに、感染症対策のため国や自治体がとる措置について具体的に挙げて許されるかどうかも聞きました。
「許される」または「どちらかといえば許される」と答えた人の割合は、
◇「外出の制限」が87%
◇「休業要請」が82%
◇「携帯電話の位置情報による個人の行動把握」は52%となりました。
そのうえで▼外出を禁止したり休業を強制したりできるようにする法律の改正が必要かどうか聞いたところ、
◇「必要だ」が42%
◇「必要ではない」が19%
◇「どちらともいえない」が38%でした。
「必要だ」と答えた人を年代別にみると
▽18歳から29歳までが33%
▽30代が36%
▽40代が39%
▽50代が43%
▽60代が44%
▽70歳以上が48%と、
年齢が高くなるにつれて必要だと考える人の割合も高くなる傾向がありました。
感染専門家「ひと事のように考えている可能性」
世論調査の結果について、新型コロナウイルス対策にあたる政府の分科会のメンバーで感染症対策に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「多くの人は自分が感染することを恐れて、感染者は強制的な手段を取ってでも自分とは離れたところに行ってもらいたいと、自分とは切り離したひと事のように考えている可能性がある。強制的な措置が行われると、その病気のリスクを必要以上に深刻にとらえて、過去には実際に感染者の差別につながったこともある。自分が感染者の側になったときのことを考えてほしい」と指摘しました。
そして「去年4月に感染の大きな波が来た際には『なるべく外出を控えてほしい』と呼びかけるなど、お願いベースの緩やかな対策を取った。強力な措置をとっていた外国からは、要請だけで収まるわけがないと思われていたが、感染者数の減少につなげることができ、緩やかな決まりでみんなが要請を守ったことが評価された。いまは感染のフェーズがより深刻になり、多くの人が思い切った対策をしないといけないと思っているということだと思うが、『せっかく緩やかな対策ができていたのに』という思いはある」と述べました。
そのうえで岡部所長は「感染症対策で自由を制限するかどうかは、本来なら平常時、頭が冷静な時に考えなければいけないことだ。個人の自由を制限する法律は一度決まれば改正されない限り、いつまでも生きているので、次の感染症の流行のときにも持ち出されてしまう。時限的なものにするなど、歯止めをかけることを検討しても良いのではないか。さらに、新型コロナウイルスの感染者の致死率などをほかの病気と比較してどこまで強烈な法律が必要なのか、冷静に考えることが重要だ」と話しています。
憲法学が専門 京都大学 曽我部教授「過剰防ぐ必要」
個人の自由の制限に関する世論調査の結果について、憲法学が専門の京都大学の曽我部真裕教授は「全体として私権制限はやむを得ないという意見の割合が多いが、個人の自由の制限が『許されない』『規制に協力できない』と考えている人がなぜそう考えるのか注意して見ていく必要がある。こうした人たちのなかには、行動制限に協力したくても生活に大きな打撃があってできないという人もいる。協力が難しいという人が協力してもよいと思える対策を考えていくことが必要だ」と指摘しています。
そのうえで「感染症の深刻さが増すなかで一定の規制はやむを得ないが、規制が過剰ではないかや、別の目的に乱用されないか、行きすぎを防ぐ必要がある」と言います。
曽我部教授は「営業の制限や移動の制限などを検討する際には、本当にその規制に効果があって必要なのか、必要だとすれば規制が最小限になっているか、十分に検討し、規制が運用される段階では、国会やメディア、SNSなどで監視を続け、権利の制限が必要以上に拡大されないよう注意していく必要がある。ヨーロッパでは、権利の制限が行きすぎたときに行政の監視をするオンブズマンなどが機能しているが、日本では、そうした仕組みが弱いため、監視の機能を強化していくことも必要だ」と指摘しています。
憲法学が専門 専修大学 棟居快行教授「自由安全両立を」
また、同じく憲法学が専門の専修大学の棟居快行教授は「感染が拡大し死者も出る中で、自分だけが自主的に規制をして個人でその責任を負うよりも一斉にルールをはっきり決めてほしいと考える人が多くなっているのではないか」と指摘します。
そのうえで、「ただ、自由の制限が許されるという人たちも、一方的に規制だけを望んでいるわけではなく、強制力を伴う分、それに対する補償もしてほしいという考えだろう」と話します。
棟居教授は、「コロナの時代、個人の『自由』と感染のリスクを回避する『安全』を天秤にかけたとき、『自由と安全をぎりぎりのところで両立する』というこれまでの考え方から、安全のほうを一時的に広めに取るという考え方もあり得るだろう。一方で、政府は規制が行きすぎないように一時的な規制にしたり、規制と補償をセットにするなどして国民に提示してほしい」と話しています。

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