2022/06/29【新型コロナウイルス:COVID-19】オフィスやレストランのCO2濃度が高いと新型コロナ感染リスクも高まる

マスクの着用が米国と世界で減少するにつれ、新型コロナウイルスの飛沫核感染(空気感染)のリスクは増えていく。マスクのないスポーツジムや食料品店、ガソリンスタンドなどは、マスク着用時とくらべてはるかに危険だ。蔓延が続く一方で各国政府が新型コロナ政策を縮小する今、私たちはマスクなし環境がもたらすリスクのレベルを早急に認識する必要がある。
最近の飛行機での移動において、私たちは呼気中CO2濃度を機内における新型コロナ感染リスクの代替指標として用いることを検討してきた。周囲のCO2レベルが高いほど、近くの人々が吐き出す呼気の影響が大きくなり、周囲における新型コロナウイルスのリスクも大きくなるというのが基本的な考えだ。
この考えは、飛行機内だけでなく私たちの日常生活にも拡張できる。パンデミック開始当初の数カ月間、私たちは高いCO2濃度環境にいる機会が少なく、感染リスクも小さかった。最近になって、オフィスでの仕事やレストランでの食事、休暇中の旅行など、多くの個人あるいは人が集まる場面の主催者の行動が日常に戻り、今後の新型コロナウイルス感染リスクの高まりを感じさせている。
パンデミックの1年目、多くの人々が、新型コロナウイルスは飛沫核、すなわちエアロゾル(呼気)中のウイルス粒子経由では感染しないことを示唆していた。彼らの考えは、ウイルス伝染を大きな飛沫、すなわちくしゃみや咳の排出物や、ドアの取っ手やテーブルなど、表面にウイルスが付着した媒介物を経由した伝染に限定していた。こうした見解がマスク着用に対する懐疑心を生み、多くの国々がマスク着用の義務化を実施する中、米国が実施に踏み切らなかった原因となった。
この理論は最終的に一掃された。理由は実生活環境における実験結果による。たとえばジウ・ペンとホセ・L・ヒメネスの研究は、密閉した室内環境でCO2濃度を分析し、新型コロナウイルス感染リスクとCO2濃度の関係を定量化した。予想通り、CO2濃度の高い密閉環境に感染者がいると、伝染する可能性がはるかに大きいことが示された。
換気されていない場所では、気体は高速で移動し容量いっぱいに拡散する。液体が入れられた容器を満たすのと同じように、気体は同じことをはるかに速く行う。感染者と同じ部屋にいると、接触しなくても発病することがあるのはこれが理由だ。空気は、部屋の向こうからあなたのところまでウイルス粒子を運んでくる。
これが、CO2濃度が新型コロナリスクの適切な代替指標である理由だ。空気中のCO2が多ければ多いほど、もし同じ部屋に感染者がいれば、そのCO2がウイルス粒子を運んでいる可能性は高い。これを踏まえて、飛沫による感染リスクの減少に役立つツールを3つ紹介する。
1つ目はCO2モニター(二酸化炭素濃度計)だ。同じ部屋に感染者がいると仮定すると、この閉じられた空間のCO2濃度は、新型コロナ感染リスクと相関がある。個人用のモニターは50ドル(約6700円)程度で買うことができるので、新型コロナ感染や後遺症を防ぐ有効な投資になりうる。また、店舗や企業は施設内のCO2濃度をモニターすることによって、顧客の安全を確保することができるだろう。
最近、私たちはニューヨーク市のさまざまな場所の典型的な日におけるCO2濃度を測定した。数値は場所によっても人の密度によって異なり、屋外の458ppmから非常に混雑した地下鉄内の2366ppmまでさまざまだった。ニューヨークでの地下鉄移動など、生活上避けられない場面は数多くあるが、CO2濃度をある程度意識することで、リスクをある程度緩和することは可能だろう。
2つ目のツールは、高効率粒子空気(HEPA)フィルターだ。HEPAフィルターは、循環する空気から最小0.3μmの粒子を除去する。新型コロナ粒子は最小0.1μmだが、HEPAフィルターは汚染されたCO2を吸い込み、ほこりやちり、さらにはウイルスを運ぶ飛沫をろ過することで、ウイルス粒子が人から人へと運ばれる機会を減少させることができる。
近年の飛行機ではHEPAフィルターが広く用いられており、タクシーや地下鉄よりもCO2濃度が低いことも多い。タクシーや地下鉄で見知らぬ人と同乗する際にはマスクの着用を強く推奨する。車中のCO2濃度はエンジンの燃焼によって高く計測される可能性はがあるが、閉じた空間がウイルスに拡散の機会をもたらしていることは間違いない。
3つ目のツールはUV(紫外線)光源だ。ウイルスは継続するUV照射への露出によって不活性化されるという証拠が示されている。媒介物上では特にそうだが空気中でも有効だ。紫外線は人間の目には見えない。日常的に混雑する地域に大規模なUV光源を設置することで、空気中や物体表面のウイルスを不活性化させ、ウイルス感染を抑制することが期待できる。
私たちは学校、レストラン、劇場、図書館、交通機関、競技場をはじめとするすべての公共施設が、大容量の換気装置を備え、HEPAフィルターとUV光源によって可能な限り場内を殺菌することを推奨する。こうした要件は地域、州、あるいは国レベルで義務化し、その他の建築基準と同様に強調されるべきだ。
飛行機内の分析のところでも述べたように、世界の政府が新型コロナ対策を後退させている現在、新型コロナから我が身を守る責任は個人に求められている。パンデミックはまだ終了にほど遠い。この病気から自らを守るためにとるべき対策として、私たちはマスク着用の継続、ワクチン接種、そして上に挙げたツールの利用を強く推奨する。
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