2022/04/25【アデノウイルス】欧米での小児重症急性肝炎の報告について /国立感染症研究所

■事例概要

2022年4月以降、欧米で月齢1ヶ月から16歳までの小児の重症急性肝炎症例の集積が報告されている。4月21日時点で、世界保健機関(WHO)の症例定義に合致する症例は、計12か国(欧州11カ国、米州1カ国)から約170例報告されている。そのうち、英国からの報告が最も多く114例が報告されている。
・4月21日時点で症例の約10%(17例)が肝移植を要し、死亡例1例が報告されている。
・小児の原因調査中の肝炎症例の報告数の増加は続いているが、真の症例数の増加なのか、認知度の上昇の影響を受けたものかは明らかでない。
・最も多く検出された病原体はアデノウイルス(74例)であり、原因として疑われている。急性肝炎は、従来、典型的なアデノウイルスの臨床像ではなく、引き続き、リスク因子検証のための疫学調査と、化学物質や他の病原体を含めた原因探索が行われている。
・現時点では、アデノウイルスを原因の一つとして想定した基本的な感染対策、つまり、手指衛生や飛沫感染予防等の注意喚起が行われている。

■国外の状況

・2022年4月以降、WHOの症例定義に合致する、小児における原因が明らかではない重症急性肝炎症例の集積の報告が、計12カ国(欧州11カ国、米州1カ国)から報告されている。
・4月21日時点で、少なくとも合計169例が報告され、うち、英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)からの報告(114例)が最多である。また、スペイン(13例)、イスラエル(12例)、米国(9例)、デンマーク(6例)、アイルランド(5例未満)、オランダ(4例)、イタリア(4例)、ノルウェー(2例)、フランス(2例)、ルーマニア(1例)、ベルギー(1例)からも症例が報告されている(図1)。
・4月21日時点で、全症例の約10%にあたる17例が肝移植を要し、死亡例1例が報告されている。
・症例の年齢分布は、月齢1ヶ月から16歳までで、多くの症例で、腹痛、下痢、嘔吐等の消化器症状が先行した後に、急な肝逸脱酵素の上昇(アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)またはアラニントランスアミナーゼ(ALT)500 IU/L以上)と黄疸を呈した。ほとんどの症例では発熱は認められなかった。
・いずれの症例からも肝炎ウイルス(A型、B型、C型、D型、E型)は検出されておらず、海外渡航歴や他国との疫学的な関連性は確認されていない。
・少なくとも74例からアデノウイルスが検出されており、亜型が確認された症例のうち18例からアデノウイルス41型が検出されている。また、20例からSARS-CoV-2が検出されており、うち19例がアデノウイルスとの共感染(同時に感染していること)であった。
・報告症例数が最も多い英国及びオランダでは、現在、アデノウイルスの市中感染例の増加が報告されている。
・アデノウイルス41型は、下痢、嘔吐、発熱などの原因ウイルスとして知られているものの、健康な小児における急性肝炎の原因ウイルスとしては認識されていないことから、この重症肝炎の原因として一元的に説明することは難しい。
・小児の原因不明肝炎症例におけるアデノウイルス検出例の増加は、アデノウイルスの検査が強化されたことにより、これまで潜在していた同様の症例の探知がなされるようになった結果かもしれず、真の増加かどうかは不明である。
・症例報告を受けた各国では、臨床情報、曝露歴の調査に加え、中毒物質やその他の病原体探索についても精査を進めており、並行して、サーベイランスを強化している。まだ報告を受けていない国においても症例探索を実施し、リスク因子を同定するための疫学調査を行うことが推奨されている。アデノウイルスを含め、手指衛生や飛沫感染予防等の基本的な感染対策の注意喚起が行われている。

■国内の状況

・小児の急性重症肝炎が著しく増えている兆候はない。
➢感染症法に基づくサーベイランス対象としてのウイルス性肝炎(E型肝炎・A型肝炎を除く)では、小児の報告は稀である。ウイルス性肝炎の報告は急性肝炎(B型肝炎、C型肝炎、その他のウイルス性肝炎)のみ全数報告のため、疾患としての全体像は、その傾向を知ることができない。2020-2021年は報告数は減少している。肝炎ウイルス以外が原因とされた症例の報告数については、2021年以降、横ばい~微増であるが、そのほとんどがサイトメガロウイルス、EBウイルスによるもので、アデノウイルスを原因とした症例は報告されていない。よって、原因不明あるいはアデノウイルスによる小児の肝炎が国内で大きく増えているという兆候はない。
➢学会等医師のネットワークや、小児肝移植を行う医療機関においても、小児の重症肝炎や移植例が増えているという情報は把握されていない。
・アデノウイルスが国内で通常想定される以上に流行している兆候はない。
➢欧米の事例では、アデノウイルスが原因である可能性が挙げられている。しかし、咽頭結膜熱、流行性角結膜炎、感染性胃腸炎など、アデノウイルスの流行状況を反映すると考えられる症候群の発生傾向に異常はみられていない。

■今後の見通し

・報告のあった各国で、症例が著しく増加している兆候はなく、患者の周囲に容易に感染し急速に感染者が増加するような状況ではないと考えられる。
・国内でも、小児の重症肝炎が増加している兆候はない。また、可能性のある原因の一つとして挙げられているアデノウイルスが国内で通常想定される以上に流行している兆候もない。まずは医療関係者への注意喚起により、類似症例の探索を進める段階であると考えられる。
・原因として感染症が疑われてはいるものの、確定ではない。原因究明は、各症例について様々な感染症のみならず化学物質等の原因を含めて広範囲に行うことが必要である。仮に何らかのウイルスや化学物質が当該患者から検出されたとしても、特にこれまで肝炎の原因として知られていないものだった場合、それが原因とは言い切れない。このような事例の原因究明には、症例の集積による分析が不可欠であり、一定の時間を要する。
・すでに諸外国で原因探索が行われており、これらの進捗から知見を得つつ、丁寧な調査・分析を進めていくことが重要である。
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