2022/02/18【新型コロナウイルス:COVID-19】新型コロナ 病床使用率の増加傾向続く 医療現場では何が?

新型コロナ対策のまん延防止等重点措置について、政府は、大阪など17道府県の期限を来月6日まで延長する一方、沖縄など5県は20日の期限をもって解除することを決定しました。
「基本的対処方針分科会」の尾身茂会長は、「いまオミクロン株の拡大で直面している最大の課題は、高齢者の間で感染が増え、たくさんの人が入院し、重症者、亡くなる人が多くなってきていることだ」と話しています。
各地の病床使用率や感染者数はどのように推移しているのか、また厳しい地域での医療体制ひっ迫の状況をお伝えします。

■各地の病床使用率データ

まん延防止等重点措置の開始時期と今月16日時点の病床使用率・重症者用病床使用率を比べてみると、18日に延長の方針が決定した17道府県と、すでに来月6日までの適用が決まっていた東京など首都圏1都3県を含む14都県では、すべて増加しています。中でも大阪、福岡、兵庫などの19都府県の病床使用率は50%を超えています。
一方、まん延防止等重点措置の解除が決まった5県については、重症者用の病床使用率が低いか、感染者数が減少しています。

■病床ひっ迫 各地で起きていることは

状況が厳しい地域では…
<確保した病床数超える重症患者を受け入れて>
大阪 北区の加納総合病院では、重症患者用の病床を2床、中等症患者用の病床を21床確保して新型コロナに感染した患者の対応にあたっていますが、先月末から急速に入院患者が増加しました。
17日の時点で重症患者が7人と確保した重症病床を超えていて、中等症病床もほぼ満床となっているということです。
病院を運営する法人の加納繁照理事長は「高齢者にとってオミクロン株は弱毒性ではないのは明らかだ。重症患者を受け入れるためには3倍から5倍のスタッフが必要で、病棟にはかなり大きな負担がかかっている状態だ」と話しています。
病院では一般の救急の患者の受け入れにも大きな影響が出ています。
院内感染を避けるため、一般の救急搬送についても患者に新型コロナの検査を行っていますが、感染が確認される割合が3割近くになっていて、新型コロナ患者用の病床に空きがなければ、搬送を受け入れられない状況があるということです。
加納理事長は「そもそも2月は非常に負担がかかる月だが、それと同時に感染が拡大し現場は二重苦になっている。それでも一生懸命対応するので一時足りなくなったPCR検査の試薬の安定供給と、容体が落ち着いた患者の速やかな転院を受け入れてもらえるような体制作りが必要だ」と訴えています。
<内科系の集中治療室をすべて新型コロナ患者用に転換>
名古屋大学医学部附属病院の内科系の集中治療室では、15床ある病床をすべて新型コロナの患者専用に転換し、人工呼吸器が必要となるような重症患者を受け入れてきました。
2週間ほど前から高齢者を中心に増え続け、18日も10床以上が埋まっています。
治療にあたっている山本尚範医師は、1人でも多くの重症患者を受け入れられるよう、人工呼吸器が外れた患者のリハビリにも力を入れていますが、高齢者の回復には時間がかかるとしたうえで、「自転車操業の状態はこの数週間ずっと続いている。医療機関の負担はかつてないレベルでいま高まっている」と話しています。
<高齢者が入院できず施設で死亡>
大阪府内の高齢者施設では先月末、入所者の1人が新型コロナに感染していることが確認され検査を行ったところ、入所者41人のうち、8割にあたる33人が感染する大規模なクラスターが起きました。
施設では近くにある病院に往診を依頼し治療を受けましたが、入所者2人については症状が悪化しているためすぐに入院が必要だと診断されました。
施設では保健所に2人の入院を依頼しましたが、このうち80代の男性については入院先が見つからず、看病を続けたもののその後施設で亡くなったということです。
施設の関係者は入所者が亡くなったことについて、「施設には医師がおらず見守ることしかできなかった。早く入院できていたら救えた命だった可能性があり、残念です」と話しています。
そのうえで「必要なときにすぐに病院にみてもらえるよう、重症者が最優先で入院できる体制をつくってほしい」と訴えていました。

■専門家「医療現場 これから正念場 高齢者などに追加接種を」

感染症に詳しい東京医科大学の濱田篤郎特任教授は、現在の感染状況について「新規感染者数からいえばピークを越えていると考えていいと思う。ただ、減少のスピードはまだそれほど早いとは言えず、先行している沖縄でも減り方は緩やかで、減少してきたからといって、安心はできない。重症者数や死亡者数は新規感染者数の増加に少し遅れて増えるが、それがまさにこれからで、医療現場はこれからが正念場だ」と述べました。
そのうえで「デルタ株が主流の『第5波』まではウイルス自体の病原性が高く、肺炎を起こして亡くなるケースが多かった。ところが今回は例えば糖尿病の人がかかると血糖値がものすごく高くなるなど、もともとある疾患が悪化して亡くなる人が増えている状況がある。病床や検査態勢を拡充し、自宅療養者が医療を受けやすいようにする対策に引き続き力を入れていく必要がある。高齢者や重症化リスクの高い人たちにワクチンの追加接種をなるべく早く進めていくことも重要だ」と指摘しました。
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