2021/12/27【新型コロナウイルス:COVID-19】新型コロナ、飲み薬で変わる治療 自宅で服用

新型コロナウイルスの治療薬に米メルクの飲み薬が米国などに続き、日本でも承認された。患者が自宅で服用ができるほか、医療機関も管理が容易となり医療逼迫の緩和につながる可能性もある。新たな変異型「オミクロン型」が世界各地で広がるなか、新型コロナへの治療法・治療薬についてまとめた。

■コロナ軽症飲み薬、国内初「モルヌピラビル」

メルクの飲み薬「モルヌピラビル」は、ウイルスが増殖する際に必要な酵素の働きを抑え、体内でウイルス量が増えるのを抑制する抗ウイルス薬。臨床試験(治験)では、1日2回5日間服用すると、重症化リスクのある軽度から中程度の症状の患者が入院・死亡するリスクを約30%下げる効果があった。自宅で治療しやすくなる飲み薬の登場で、医療機関の負担軽減につなげる。米国では米食品医薬品局(FDA)が12月23日、重症化リスクの高い大人を対象にした緊急使用を承認した。一方、フランスは治験で期待した効果が得られなかったため、5万回分の発注を取り消した。
日本政府はのべ160万回分について約12億ドル(約1300億円)で契約している。メルクは年内にも日本で供給を始め、まず20万回分を、2021年度内にさらに40万回分の供給を見込む。メルクは実験室レベルでの所見からオミクロン型に対しても有効である可能性が高いとしている。濃厚接触者に投与する発症予防の用途での治験も進めている。

■ファイザーの飲み薬、米で承認 塩野義も開発急ぐ

米ファイザーは開発中の飲み薬「パクスロビド」について、FDAが緊急使用の許可を出した。ファイザーが重症化リスクの高い人を対象に実施した治験では、発症後3日以内に投与したところ入院・死亡リスクが89%減った。
オミクロン型にも有効とされており、初期の治験ではオミクロン型のウイルスの複製を阻止する効果を確認したとの分析を示した。ファイザーと日本政府は、200万人分を供給することで合意している。
塩野義製薬も飲み薬「S-217622」の開発を急いでいる。感染初期に投与して重症化の抑制と発熱やせきなどの症状改善を狙う。20日に実験室レベルでオミクロン型にも有効なことが確認できたと発表した。国内の宿泊療養施設や病院などで軽症者と無症状者を対象にした最終段階の治験に入っている。一定数の感染者がいる韓国やシンガポール、ベトナムなどでも最終治験を始める。
いずれの飲み薬も特性上、投与効果が期待できるのは発症直後に限られる。発症数日以内に陽性と判定され、医師の診断で薬が投与されなければならない。

■ロナプリーブ、「オミクロン型」には推奨せず

軽症・中等症患者向けには、中外製薬の抗体カクテル療法「ロナプリーブ(カシリビマブ・イムデビマブ)」、英グラクソ・スミスクラインの「ゼビュディ(ソトロビマブ)」が使われている。いずれも人の免疫の仕組みを利用する抗体医薬品で、点滴か注射で投与する必要があり、自宅療養の患者には使いにくい。
ロナプリーブは発症予防薬としても特例承認されている。重症化リスクがありワクチン接種歴がないなどの条件をみたす濃厚接触者や無症状の感染者を投与対象に加えた。これまでは重症化リスクがある軽症や中等症の患者に使っていた。用法・用量に「皮下注射」も新たに加えた。発症後の治療目的の場合は点滴を優先し、やむをえない場合のみ皮下注射を検討するよう求めている。
厚労省は、ロナプリーブについて、オミクロン型への感染が疑われる場合には使用を推奨しないように自治体に通知すると明らかにした。効果が従来に比べて1000分の1以下に低下するとの報告があるためという。

■中等症から重症の治療には

新型コロナの発症から数日たつと、患者によっては免疫の暴走で肺炎が進み血中酸素飽和度が下がってくる。この段階で使用することが多いのは炎症を抑える「デキサメタゾン」などのステロイド薬だ。PCR検査で陽性になった人は通院で血液検査や胸部エックス線検査などを受け、炎症の兆候がみられたらすぐにステロイド薬を飲み始めるのがよいとされる。ウイルス量を調べ、増加の時期を過ぎたころが投与に適しているという。
2021年8月には抗ウイルス薬「ベクルリー」(レムデシビル)が、新型コロナ治療薬として公的保険の対象になった。国内外で呼吸管理が必要な重症者に使われた時期もあるが、中等症に向くことがわかってきた。ステロイド薬や免疫を抑える働きをもつリウマチ薬「オルミエント」(バリシチニブ)のほか、関節リウマチの点滴薬「アクテムラ」(トシリズマブ)と併用されることもある。製薬大手の中外製薬は12月に入り、販売するアクテムラについて、新型コロナウイルスの重症肺炎患者向けに使えるよう、厚生労働省に承認を申請した。アクテムラはすでに海外で新型コロナ向けに実用化されている。
重症患者の最後の砦(とりで)となるのが、体外式膜型人工肺(エクモ)だ。エクモは病状が悪化した肺を休ませるため、機械で肺の機能を代替する人工肺だ。高度な知識・技術が必要で操作できる医療従事者は限られる。全国で約1400台あるが、重症者が急増するとフル稼働になるため人材が不足する懸念がある。
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