2021/11/20【新型コロナウイルス:COVID-19】新型コロナは、これから感染しても「死なない病気」と言える、これだけの理由

減少傾向にある新型コロナの日本の感染者数。それに追い風となるのが、現在米国メルク社が開発中の「モルヌピラビル」だ。これにより、世界中のコロナ対策は転換点を迎える確率が高いことを前編の「新型コロナ、ここにきて「マスクなしの生活」の可能性が見えてきた…!」でお伝えした。後編では、さらにその具体的な根拠を記す。

■どんな意味があるのか

世間の風当たりが強くなるのを恐れて、専門家たちは本音を言えないでいる。しかし、この飲み薬が普及する来年3月にはマスクを外せるようになる可能性が十分にある。
日本においても、富士フイルム富山化学や中外製薬、興和などが重症化リスクを防ぐ飲み薬の開発を進めている。その中でも、専門家の間で注目を集めるのが塩野義製薬の「S-217622」だ。「モルヌピラビル」と同様に軽症・中等症患者のための薬で、塩野義製薬は、年内の承認申請を予定しているという。
「『モルヌピラビル』は、もともとインフルエンザの治療薬をコロナでも効くように開発されたものです。一方、『S-217622』はコロナを治療するために一から作られた薬です。高い効果を発揮する治療薬になるでしょう」(浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫氏)
塩野義製薬の手代木功社長は、「S-217622」について「来年3月までに最低100万人分を用意したい」と今年度内の供給開始を目指すことを発表した。つまり、来年3月には、二つの飲み薬が薬局で処方されるようになるのだ。
すでにコロナ患者に使われてきた治療法にも、新たな動きが広がっている。たとえば、軽症・中等症患者に対して2種類の薬を同時に投与する「抗体カクテル療法」だ。
注射や点滴によって投与されるため、これまでコロナ患者は通院か入院をしなければ治療を受けることができなかった。それが、9月からは自宅療養者も往診で「抗体カクテル療法」を行えるようになり始めている。
11月4日には、「抗体カクテル療法」が予防薬として投与されることが了承された。ワクチンのように、感染も防げるようになったのだ。
私たちはコロナに感染しないように2年近くマスクをつけ続けてきた。有名人を含めた多くの感染者が亡くなったことで、コロナが「死に至る病」であると思われたからだ。
だが、仮に感染したとしても、飲み薬を服用してすぐ治るようになれば話は変わってくる。外に出られないほど辛かったら、自宅で「抗体カクテル療法」を受ければいい。

■海外の「脱マスク」

米ボストン在住・在勤の医師で、公衆衛生の専門家である木下喬弘氏はこう語る。
「ワクチン接種により死亡リスクが低下し、コロナに感染しても、38度程度の熱が数日間続くだけになれば、インフルエンザと同等の扱いにできるかもしれません。
感染したくない人はマスクをつければいいし、そうでなければマスクを外してもいいという判断が許容されるようになると思います」
来年3月、メルク社の「モルヌピラビル」だけでなく、塩野義製薬の「S-217622」も私たちの手に渡る。この二つの「武器」によって、コロナにかかることが脅威ではなくなる。
来春にマスクを外せる根拠は他にもある。ワクチンの「ブースター接種(3回目接種)」だ。
「ブースター接種は、2回目接種と比べると感染予防効果が10倍、重症化予防効果が20倍に上がると言われています。接種後に感染するブレークスルー感染も、9割以上の確率で抑え込めるというデータもあります。
12月から医療従事者に、来年1月から高齢者に向けて始まるようです。現在のペースで接種が進んだ場合、遅くとも来年の夏までには希望者全員がブースター接種を行っているでしょう。
3回目接種が済んだら、あとはインフルエンザと同じように年に1~2回の接種を行うようになると思います」(矢野氏)
これまでアレルギーなど体質の問題で注射を打てなかった人にも朗報がある。複数のメーカーが新たなタイプのワクチンの開発を急いでいる。
米バクサート社は常温で保管できる錠剤型ワクチンの治験を進めているし、塩野義製薬は注射を使わずに鼻に噴射する経鼻型ワクチンを開発中だ。
経口治療薬、抗体カクテル療法、ワクチン―。いまやコロナに対しては、二重三重のセーフティネットが張られている。ワクチン接種で感染予防ができる上にコロナにかかったとしても薬で治せるわけだ。ここまでくれば、マスクを外したとしても問題ないだろう。
海外では、多くの国が「脱マスク」に向けて舵を切り始めている。
たとえば昨年7月からマスクの着用を義務づけていたイギリスは、今年7月に義務を解除している。現在、一日の感染者数が4万人を超えるほど感染拡大が止まらない状況下にあるが、ロックダウンをしたりマスクの着用を義務づけたりする様子はない。

■「世間の空気」も変わる

前出の木下氏は、その理由をこう推測する。
「人口の7割近くがワクチンを打っているイギリスでは、感染者の数は増えているものの死亡者数や重症者数は低く抑えられています。感染が広がったとしても医療崩壊の心配がないのであれば、自由な経済活動を優先するべきだという考え方なのでしょう」
治療薬の開発やワクチン接種が進んだことにより、海外諸国は日常生活を取り戻すべくコロナ対策を転換している。感染者数が激減した日本においても、マスク着用について議論を重ねてもいい時期だ。そうでなければ、永遠に元の生活には戻れない。
ただ、日本ではマスクを外すにあたって大きなハードルがある。「世間の空気」だ。
いまマスクを外して街中を歩いていたら、冷ややかな目で見られることは間違いない。この「空気」は変わるのか。医療法人同友会顧問で社会医学指導医の大室正志氏はこう語る。
「’09年に新型インフルエンザが大流行したとき、行政から要請を受けたわけでもないのに日本中の会社に消毒用アルコールが置かれました。しかし、感染が落ち着いてくると、なし崩し的になくなっていったんです。
コロナも同じように、感染者の少ない状態が長く続けば、テレビで連日速報が打たれることもなくなり、世間の関心が薄れていくと思います。社会が脅威だと見なさなくなれば、自然とマスクをつける人も少なくなるでしょう」
ワクチン接種が進んだことにより、コロナの死亡率は流行当初の3%台から1%以下にまで下がっている。
これから飲み薬が普及することも考慮すれば、仮に今後「第6波」が起きたとしても、医療崩壊に陥る可能性はきわめて低い。もはや、自分と周囲の安全をきちんと考慮しているのであれば、マスクを外してもいい段階に来ている。
福岡市のみらいクリニック院長の今井一彰氏はこう解説する。
「来年春には、みんなマスクを外せる状況になっていると思います。ただ、現時点でも常時マスクをつける必要はありません。ジョギングやウォーキングの際は外しても大丈夫でしょう。
大勢の人が集まっていたとしても、映画館やコンサートホールのように大声を出さない環境ではマスクはいらないと思います。また、換気さえ行われていれば飲食店でもマスクをつけなくても問題ありません」
待ちに待った日常生活が、もうすぐ戻ってくる。
『週刊現代』2021年11月13・20日号より
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