2021/09/01【新型コロナウイルス:COVID-19】デルタ株「空気感染」の防ぎ方 感染した場合の備蓄品リスト、要介護者がいる場合の対策は

ウイルス量が従来株の千倍というから、感染力が強くないわけがない。猛威を振るうデルタ株は子どもにも広がり、子どもから大人にうつる。脅威には違いないが、しかし、敵を知れば対策の立てようはある。命を守るための防御術をもれなく紹介したい。
=============
家庭に持ち込まないために
敵を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず――。孫子の兵法の一節を、いまこそ肝に銘じたほうがいい。敵はこの場合、全国で新型コロナウイルスの感染者に占める割合が、9割を超えたとされるデルタ株である。
東京都の新規感染者数は、5千人を超える日が多くなった。また、子どもへの感染が増え、子どもが大人にうつす例も目立つ。恐怖が先に立つのも無理はないが、そんな敵にも強みがあれば弱みもある。
まずはこの変異株を俯瞰し、敵の性質を理解することだ。冷静な視座を失わなければ、デルタ株も乗り越えられよう。最初に、デルタ株の感染力が強いわけを、理解しておきたい。
現在、多いのは家庭内感染で約65%、続いて職場感染が約15%というが、なぜ家庭内感染が多いのか。
「デルタ株では、たとえば5人家族に感染者が1人出ると、5人全員が陽性になってしまうことが多い。最初の武漢株の2・25倍と感染力が強いからです。ただし、毒性が強くなっているとは感じられません。いま入院している方は、8割以上が60代以下で、ほとんどがワクチン未接種。重症者は増えていますが、それは重症化率が高いからというより、感染者の数が多いからという認識です」(東京都医師会の角田徹副会長)
浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫医師によれば、
「気道から出るウイルスの数が従来株の千倍ほどもある、という中国のデータも出ています」
というから、感染力が高いのも無理はない。このことと、子どもの感染増を結びつけて説明するのは、大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授の宮坂昌之氏である。
「人間に備わる免疫の一つが、入ってきた異物をとりあえず攻撃する自然免疫で、子どものほうが大人より強い。子どもは種々のワクチンを打ち、自然免疫が鍛えられているからです。ところが、ウイルスの数が増えすぎると、子どもでも最初の関門である自然免疫が突破され、体内への侵入を許してしまいます」
では、なぜ子どもが大人に感染させるのか。
「カナダのオンタリオで出された論文には、0~8歳児は、それ以上の年齢とくらべて1・5倍ほど、他人にウイルスをうつしやすいと書かれ、0~3歳児はその傾向がより顕著。子どものほうが親との接触が多く、喋ったり周囲に触れたりするからだと思われます」
加えて、デルタ株の感染経路を確認しておくと、
「米CDC(疾病予防管理センター)の実験では、感染経路の99・99%は飛沫で、環境(接触)感染はほとんどない。アルコールなどで繰り返し環境消毒をしている家庭や施設が多いですが、マンパワーを飛沫対策に回したほうがいい」(矢野医師)
これらを踏まえて、防衛策を練っていきたい。
=============
Q.小学校、習い事に行かせていいか? 
「いま、多くの人が学校の再開を怖がって、学級閉鎖や休校を口にしますが、慎重に進めてほしい」
と、矢野医師は訴える。
「子どもがどういう状況で感染するかを調べた米国の研究によると、最も感染が少ないのは対面授業でした。生徒がマスクをしっかり着用しているか、教師が監督しているからでしょう。逆に感染が多かったのは、課外活動やパーティーなど。管理されている対面授業は安全だと認識してほしい。また、休校にすると、子どもがいる医師や看護師が働けず、医療が崩壊します」
東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授も言う。
「学校生活は子どもにとって大切な場で、塾や習い事は継続しなければ子どもにとって意味がない。換気頻度を増やし、季節によっては窓を開け放したりしながら、継続すべきです。そして子どもたちには、手洗いやアルコール消毒をしっかりさせることです」
宮坂氏も強調する。
「デルタ株でも子どもは重症化しないので、大人が危ないという理由で、彼らの学校生活を奪うべきではない。急ぐべきは12歳以上のワクチン接種。“学校をどうする”と考えるより、ワクチン接種に注力するほうが建設的だと思います」
=============
換気を怠ると「空気感染」
Q.学校から持ち帰る子どもに言い聞かせるのは? 
「“学校が終わったらすぐ帰ってきなさい”と伝える。また子どもにはかわいそうでも、友だち同士で遊びに行くのは、いまは控えてもらったほうがいい。大人の目が行き届かない場所では、子どもはマスクを外してはしゃぎがちだからです」
と矢野医師。また、
「集団に出入りするときは、しっかり手洗いし、登下校中には、いろんな人が触れる場所には触れないように言いましょう。接触感染は少なくても、子どもは手を口に入れたり、手で目をこすったりするので」
と話す角田副会長は、こういう提案もする。
「感染したらみんなが入院し、死んでしまう病気ではないことを理解させ、ただ、他人にうつしてしまうリスクがあるので対策するのだ、と伝えましょう」
=============
Q.手洗い、うがいのコツは? 
「外出からの帰宅時や、会社に着いたときなど、手で目や口を触ってしまう前に、指先だけでなく、しっかり洗ってください」
と矢野医師。その効果を角田副会長が説くには、
「流水で15秒以上洗うだけで、手に付いたウイルスは100分の1になる。さらに石鹸を使うと1万分の1になります。子どもなどアルコール消毒で手が荒れる人もいるので、無理にアルコールは使わなくても、とにかく手を洗うことです」
うがいはどうか。
「のどに付いたウイルスはすぐに侵入するので、15分に1回など頻繁にできない以上は、あまり効果がない。鼻うがいも同様で、5分に1回といったペースでやらないと意味がない」
矢野医師も懐疑的で、
「うがいが感染対策に有効だというデータは一つもなく、むしろ飛沫が飛ぶのでやめたほうがいい」
=============
Q.「空気感染」はどうやって防ぐ? 
「デルタ株の蔓延では、飛沫感染のなかでもエアロゾル感染が非常に増えていると考えられます」
と、宮坂氏は強調し、実例を挙げる。
「ラグビーの合宿で、夜暑いので窓を閉め、エアコンをつけて寝ていたら、部屋にいた8割が感染しました。寝るまではマスクをしていたので、寝息から出た細かいエアロゾルによって感染が広がったと考えられます。また、剣道の道場で稽古をしていた子どもたちばかりか、見学した父母も含めてその場にいた7、8割が感染した。道場の窓を閉めきってエアコンを回していたのです。エアロゾルは細かな水滴で、厳密には空気感染ではありませんが、極めて細かい粒子で感染する以上、空気感染に近い」
エアロゾルは4時間滞留するという情報もあるが、防ぎようはあるか。
「マスクと送風、換気が大切です」(同)
=============
Q.正しい換気とは? 
「エアロゾルを防ぐなら窓をすべて開け、送風機を置きましょう。エアロゾルは首から上に滞留しがちなので、送風機を上に向けて吹き飛ばします。ウイルスはカビや細菌と違い、空気中や壁の上で増殖しないので、物理的に吹き飛ばすと一定の効果があります」(同)
=============
電車でクラスターの可能性
Q.マスクは「不織布」〇、「布」「ウレタン」は×? 
寺嶋教授は、
「飛沫やエアロゾルは、粒子が小さすぎると、マスクで防ぐのに限界がある」
と言う。だから、なおさらしっかりマスクをすることが重要だというが、マスクのどこに留意すべきか。
「鼻を出していたり、何回も洗って緩んだりしているものはよくない。マスクと顔の間に隙間がある人が感染していると、ウイルスをまき散らすことになります。一番いいのは、顔との隙間が少ない不織布です」
と説くのは矢野医師。また、角田副会長は、
「マスクは何歳からというのはありませんが、本人が許容できるならつけてほしい。子どもは布マスクが多いですが、息がしやすい分、ウイルスも通すので、不織布のほうが断然いいです」
もちろん、ウレタンより不織布。ただし、矢野医師はこう加える。
「不織布のマスクもネットに入れて洗えば、4回くらい使える気がします。しかし、付着した菌が3日は残るので、洗わないなら毎日捨ててください。また、不織布とウレタンのマスクを二重にすると、すき間が少なくなって有効だと、米CDCも発表しています」
=============
Q.人との距離はこれまで通り? 
「マスクをしっかりしていれば、1メートル以内の距離で話しても、ほとんどの飛沫はブロックされる一方、相手がマスクを適当につけていれば、エアロゾルは3~4メートル以上飛ぶので、距離をとってもリスクがあります」
とは矢野医師の話。角田副会長はこう説く。
「これまで飛沫感染の場合、飛沫にある程度の大きさがあって放物線上に落ちていくので、1メートルくらい距離をとっていれば安心だという考え方でした。ただ、デルタ株のウイルス量が多いことを考えると、小さなしぶきにもある程度ウイルスが潜んでいて、小さい飛沫の場合はもう少し遠くまで飛ぶので、2メートルくらいは距離をとったほうがいい」
=============
Q.電車でもうつり始めたのか? 
「会話がない、窓が一部開いている、という条件が揃えば、電車が混んでいても大丈夫なはずです」
と宮坂氏は言うが、愛知医科大学循環器内科の後藤礼司医師はこう述べる。
「電車は、換気されていても明らかに密集地帯で、満員電車は特に危険だと思う。感染が広がるのは、人と共有している場所やモノからで、電車がそういう場所である以上、リスクがないとは言えません。どうしても乗るときは、できるだけ騒がずマスクをすること。それでも、マナーを守らない人と乗り合わせる危険性はあります。電車でクラスターが起きないのは、隣に座っている人がだれだかわからず、クラスターと認識できない、という事情もある。感染拡大が起き、家庭に持ち込まれている可能性もあると思います」
=============
Q.帰宅後すぐシャワーは必要か? 
「衣服を着ていて、皮膚にウイルスは付着していないでしょうから、帰宅後すぐシャワーを浴びる必要はありません。手を洗うだけで十分です」(角田副会長)
=============
Q.祖父母は孫の「世話」をしていい? 
「祖父母がワクチンを打っていれば、孫の世話をするのは手です。ただ、元来リスクが高い層なので、ワクチンを打っていなければ絶対にやめてください」
と矢野医師。角田副会長はこう話す。
「同居の場合、ワクチンを打っていれば、祖父母は孫たちと普段通りに接していいでしょう。ワクチンを打っていない場合、孫たちから打つように声をかけてもらい、“孫と遊ぶためには打つしかない”と思ってもらえればいいですね」
=============
家庭生活の送り方
Q.食事は家族一緒でOKなのか? 
「食事はできれば時間差にしたり、対角線上に座って、向き合わないようにしたりする工夫が必要です。食事中の会話もなるべく控えるのが望ましい。あとは部屋の換気で、概ね30分に1回は必要ですが、デルタ株の場合は30分に2回か、常に窓を開けて網戸にしておくくらいのほうが、よいかもしれません」
と寺嶋教授。角田副会長がつけ加えるには、
「できれば外出していた人だけでも、時間をずらしてほしいと思います。食器は洗うのは普段通りで構いませんが、共有するのは避けましょう。おかずも大皿で出すより、個人個人で分けて出すほうがよく、大皿なら取り箸をつけるだけでもだいぶ違うと思います」
=============
Q.空気清浄機の出番はあるか? 
「換気には窓を開けるのが一番ですが、空気清浄機にも効果があるとわかっています。その場合、部屋の真ん中に置くと空気が効率よくきれいになる、という実験結果があります」
矢野医師はそう話し、換気について加えて言う。
「天井が低い部屋は空気が淀みやすいので、窓を開ける回数を増やすといい」
=============
Q.消毒はどこをどこまでする? 
「国立成育医療研究センターのHPに、子どもがいる家庭での注意点が書かれていますが、“汚れた衣服の洗濯”“共用部分のそうじ・消毒”などは、環境感染がほとんどないいま、あまり意味がありません」(宮坂氏)
その分、飛沫対策に注力すべきだという。
=============
Q.妊婦が感染前に絶対しておくべきことは? 
「妊婦の感染は8割が家庭内なので、まずは家族が気をつけること。できればワクチンも打ってもらいたいです。米CDCや日本産科婦人科学会も、いまは妊娠中のいずれの時期にも接種可能だという見解です。妊婦にも普通の人と同程度の効果があり、打っても妊娠の経過に変わりがないなど、情報が積み重なってきました。妊婦が感染すると重症化リスクが高いという報告もあり、感染した際の早産の恐れも考えると、ワクチンを打つリスクより感染したときのリスクのほうが大きいです」(寺嶋教授)
北須磨訪問看護・リハビリセンターの藤田愛所長が加えてアドバイスする。
「自分がコロナに感染した場合、家族が感染した場合、どうしたらいいか、かかりつけの産科の先生に相談しておくといい。いまは妊婦さんへの対応は十分に整備されていないと思いますが、相談することは整備が進む契機にもなると思います」
感染者が入院できず、やむなく自宅で産んだ新生児が死亡するという、痛ましい事例があった。再発を防ぐためにも留意したい。
=============
「自宅療養」を乗り切る重要ポイント
これまで述べてきたような感染予防策を講じてみても、猛威を振るうデルタ株だ。家族に感染者が出てしまうかもしれない。
報じられているように、現在、医療現場の逼迫に伴い、これまではホテルなどで隔離されてきた無症状や軽症の患者、そして入院が原則だった中等症の患者の一部も、自宅療養を検討すると政府方針が変更された。感染者の多くが家族のいる自宅での療養を余儀なくされ、多くのケースで家族も濃厚接触者と認定されて家に籠ることになる。
そうなってから慌てないように、準備とシミュレーションを行っておこう。
=============
Q.食料・市販薬……必要な備蓄品リストは? 
感染者は発症日から10日間かつ症状軽快日から3日間、濃厚接触者も最後に感染者に接触した日から14日間は自宅待機を強いられる。
「それだけの間、家から出られないことを想定し、普段から必要なものを揃えておくのが大切です」
と述べるのは、前出の藤田さんである。
「感染したときのために10日分程度の食料、飲料。市販の解熱鎮痛剤、ティッシュやトイレットペーパーなどもいつもより準備しておいた方がいい。食料については嘔吐や下痢の症状が出る方もいますので、レトルトのお粥やインスタントのお味噌汁、スープなど消化に良いものがお勧めです。飲料はポカリスエットなどのスポーツドリンクが飲みやすくていいでしょう」
市販薬について、角田副会長が補足する。
「熱や頭痛などの症状がある場合に備え、カロナールやロキソニン、イブなど、普段から使っている薬を用意しておくといい。感染者がこれらで症状を和らげても問題はまったくありません」
=============
Q.パルスオキシメーターの選び方・使い方は? 
パルスオキシメーターとは、指先に光を透過させ、血中の酸素飽和度を測定する機器だ。なぜこれがコロナ感染者に重要かといえば、
「これが96%以上であれば健常者と変わりませんが……」
とは矢野医師。
「93以下になれば、入院が必要になってくるケースも。デルタ株は2~3時間で唐突に悪化するので、保健所に早急に連絡し、相談する必要があります。それを迅速に行うためにも、パルスオキシメーターはあった方がいいですね」
価格帯は安いものでは千円台から売られているが、
「比較的まともなものを、という意味で5千円以上のものが推奨できます」(同)
なかなか値が張るが、いざという時のことを考えれば、高いか安いかは言うまでもない。
「これからは体温計のように、一家に1台は常備しておくべきものですね」
と後藤医師。
「ただし、指先で計測するため、冷え性だったり、マニキュアを塗ったりしていると変な値が出るので、注意が必要です」
他方、肺炎になった時に備え、スポーツ用の酸素スプレーを用意すべし、との話がネットを中心に広がっている。ドラッグストアなどでは品切れが続出しているが、
=============
Q.酸素スプレーは必要か? 
角田副会長によれば、
「1缶分の酸素を吸ったところで、それだけでは肺炎にはとても対処できませんから、持っていても意味はないでしょう」
=============
ティッシュにもウイルス
では、こうした準備をした上で、実際に家族が感染した場合、自らの罹患リスクを減らすため、他のメンバーはどのように世話をすべきだろうか。
Q.家でもマスク? 
「当然、そうなります」
と角田副会長が続ける。
「感染者の方とは部屋を分ける。住宅事情でそれが無理なら、少なくとも2メートルは空けてカーテンなどで区切ります。患者さんは食事は自分の部屋で。食器も使い捨てがベター。部屋は頻繁に、1回につき5~10分程度は換気をする」
患者の世話をする家族については、
「1人に限定し、接触リスクを最小限にします。患者さんに接触した後は念入りに手洗いや消毒をしてください」
=============
Q.シーツ、トイレ、入浴は? 
「患者さんの使用したシーツは嘔吐や下痢などがあれば、ウイルスが付着している可能性もあるので、80℃、10分以上の熱湯消毒をしてから洗濯を行うのが理想です。衣服は患者さんと家族のものを一緒に洗って問題ありません。トイレは家の中に二つある場合は分ける。共有する場合は、換気扇を働かせ、感染者が使用した場合は、便座、流水レバー、ドアノブなどを消毒する。風呂は入っても問題ありませんが、感染者は最後に入るようにしましょう」
=============
Q.ゴミ処理の仕方は? 
「鼻をかんだティッシュなどにもウイルスが付いています」
と寺嶋教授。
「まずは感染者自身に密閉してもらう。その後、家族が手袋などをしてゴミ袋を二重にして捨てるのがいい」
自宅療養で最も悩ましいのは、感染者が、子どもや老親などお世話や介護の対象者を持つ場合である。
=============
Q.親が感染した場合、子どもはどうする? 
「大変困難ですが、感染しても、その親が面倒を見るしかありません」
とは、矢野医師。
「その場合は、十分な感染予防体制を取り、うつさないようにする。非常に難しいですが……。もし祖父母がいて、既にワクチンを2回打っているのであれば、任せたり、預けてしまうのも一考です。リスクが高い方たちなのでなるべく避けた方がいいですが、親子が共倒れするより、ましでは」
=============
Q.要介護者がいる場合は? 
「こちらも非常に難しい問題です」
と角田副会長。
「本来は接触しないようにしてほしいですが、なかなか難しいですよね。介護保険を受けているのであれば、ケアマネージャーに相談し、訪問介護をお願いするなどしてみるのはどうでしょうか」
付随して言えば、8月20日には痛ましい事例が発生している。熊本県で50代の単身男性が自宅療養中に死亡した。この男性は症状が悪化し、保健所に入院を勧められたが、ペットの猫の預かり先がないことを理由にそれを拒否。自宅に籠ったままだったという。
=============
Q.ペットはどうする? 
「知り合いに預かってもらうのが肝要です」
と解説するのは、京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授。
「コロナはヒトから犬猫にも感染しますが、ほとんど発症しません。逆に犬や猫からヒトに感染した例は報告されていませんので、感染者のペットを預かっても大丈夫。知人が見当たらない場合でも、預かりサービスを行っている自治体や企業があります」
事前にこうした情報を調べていれば先の男性も救われたはずだ。正しい知識は命を守るのである。
=============
ワクチン難民がズルなしで接種できる裏技
デルタ株から命を守る術をご紹介してきたが、最大の防衛策がワクチン接種であることは言うまでもない。
その効果を改めて寺嶋教授に説明していただくと、
「イギリスのデータでは、デルタ株に関して、ファイザー製ワクチンの発症予防効果が、初回接種後は30・7%、2回目の接種後には、88・0%と出ています。また、アメリカのデータでは、デルタ株とアルファ株とを合わせた数字ですが、ファイザー製の2回接種後の感染予防効果は76%、入院予防効果が85%。モデルナ製でもそれぞれ86%、92%となっています」
すなわち、どちらのワクチンでも感染、発症、入院すべての予防効果が大きく、1回の接種より2回接種した方が大幅に効果は上がる。
「やはりデルタ株といえども、ワクチン効果は高く、しっかりと2回打つことが最善の予防策」(同)
しかし問題は日本において接種がなかなか進んでいないことだ。8月下旬の時点で、高齢者こそ9割近くが2回の接種を終えているが、国民全体で見れば初回の接種ですら半数程度。住んでいる自治体で予約が取れない「難民」も続出しているのは周知の通りである。
しかし、そんな方々が合法的に前倒しして接種できる“技”――。
スマホやパソコンで、例えば、「ワクチン+キャンセル+クリニック」などのキーワードで検索すると、さまざまな医療機関のキャンセル待ちフォームのページがヒットするはずだ。
「個別接種を行っているクリニックでは、毎日、少なからぬ数の予約キャンセルが出ています」
と解説するのは、さる医療ジャーナリスト。
「当日、体調が優れないとか、用事ができた、受けるのが怖くなったなどの理由で姿を見せない人が結構いる。が、例えばファイザーのワクチンは解凍、希釈してしまえば6時間ほどしかもちませんから、その時間内に打たなければ無駄になってしまいます。クリニックの中には廃棄を防ぐため、こうしたキャンセルワクチンの接種希望者を予め募集しておき、キャンセルが出た時点で片っ端から連絡してすぐに来院できる人に接種を行っているのです」
急に出向かなければならないという難点はあるものの、朗報である。
また、通常、接種は住まいのある自治体で行われる。新宿区在住の方は、新宿の病院で接種するが、キャンセル待ちの場合は、居住自治体外の機関で受けてもOKのケースが多いという。
「こうしたキャンセルワクチンを、都道府県や市区町村が窓口となって希望者にマッチングしているところもある」(同)
こうしたフォームに複数、登録しておけば、接種が早まる可能性も高まる。
=============
厚労省予防接種室の話。
「キャンセル接種は、余ったワクチンを無駄にしないための工夫の一環で、抜け駆けや違法行為ではありません。恐れることなく利用してください」
「ワクチン難民」はこうした「裏技」も一考すべきか。むろん強制はできないが、自らの命を守ることに繋がるのであるから。
.

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 2017-8-7

    学術雑誌「医療看護環境学」を創刊致しました!

    学術雑誌「医療看護環境学」を創刊致しました! どうぞご利用ください! 医療看護環境学の目的 …
  2. 2021-4-1

    感染症ガイドMAP

    様々な感染症情報のガイドMAPです 下記のガイドを参考に、情報をお調べください。 感染症.com…
  3. 2021-4-1

    感染症.comのご利用ガイドMAP

    一緒に問題を解決しましょう! お客様の勇気ある一歩を、感染症.comは応援致します! 当サイトを…
  4. 2022-9-1

    感染対策シニアアドバイザー2022年改訂版のお知らせ

    感染対策シニアアドバイザーを2022年版に改訂しました! 感染対策の最前線で働く職員の…
  5. 2022-9-1

    感染対策アドバイザー2022年改訂版のお知らせ

    感染対策アドバイザーを2022年版に改訂しました! 一般企業の職員でも基礎から学べ、実…

おすすめ記事

ページ上部へ戻る