2021/08/29【新型コロナウイルス:COVID-19】ウレタンマスク、家族以外とお茶…「デルタ株」に感染する行動パターン、最新情報からわかること

発表された「デルタ株への最新行動様式」
このデルタ株に私たちはどう立ち向かえば良いのか? その大きなヒントは前述のデルタ株の感染力の試算に表れている。
従来株と比べデルタ株の感染力は、京都大学の西浦教授の試算で2倍弱、米CDCの試算で約3倍。この差は何か? 
後者は特段何の防御もない、あるいはしない場合の感染力を試算している。それに対し、前者は「実効再生産数」と呼ばれる今現在の状況、具体的に言えば市中の多くの人がマスクをし、店舗入口に消毒薬が設置され、国民の5割以上がワクチンの1回接種を終えている市中の状況を織り込んだ感染力である。
裏を返せば、私たちはデルタ株の感染力をゼロにはできないが、「感染しない」努力次第でその感染力を一定程度相殺することは可能という証左でもある。
では個々人が何をすべきか? 実は政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会がすでに6月時点で「変異株が出現した今、求められる行動様式に関する提言」を発表している。以下、要約して列挙する。
———-
(1)マスクは鼻にフィットさせてしっかりとした着用を徹底し、感染リスクの比較的高い場面では、できればフィルター性能の高い不織布マスクを着用。三密のいずれも避け、特に人と人との距離には気を付ける
(2)マスクをしっかりと着用しても、室内で会話時間は可能な限り短くし、大声は避ける
(3)今まで以上に換気には留意
(4)出来る限り、テレワークとし、職場でも、(1)~(3)を徹底すること
(5)体調不良時は出勤・登校をせず、必要な場合には医療機関を受診
(6)ワクチン接種後も国民の多くがワクチン接種を終えるまではマスクを着用
(7)ワクチン接種後も国民の多くがワクチン接種を終えるまでは大人数の飲み会は控える
———-
いくつか補足しよう。まず、7つの提言全てのベースは「今まで以上に、体調の良し悪しにかかわらず外出は最低限にし、家族・同居者以外とは、1対1であれ、日中の小一時間程度のランチタイム、ティータイムであれ、当面は飛沫感染リスクが高い食事・お茶をするのは止めましょう」というものだ。
デルタ株では従来株と違い、短時間のマスクなし会話、換気が悪い空間でのマスク越しの会話などでも感染してしまう可能性があるからだ。(7)で「大人数の飲み会」との文言があるため、少人数でランチなら良いだろうと思う人もいるかもしれないが、デルタ株蔓延以前も職場のランチミーティングでの感染も報告されている。
デルタ株ならばこうしたシーンさらに危険だ。全国の感染者総数が右肩上がりの増加を示している以上、こうした注意は緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の対象地域に限らず全国どこでも同様である。
もっともリモートワークができない職種の人や学生、その他さまざまな事情で家族以外の人と接触せざるを得ない人も少なくないだろう。その場合には(1)でも示されたマスク選びとその装着の厳格化が重要となる。
他者からの飛沫カット率「ウレタンマスクは30~40%」
国立研究開発法人・理化学研究所のスーパーコンピューター「富岳」によるシミュレーション結果で、マスク着用者が吐き出す飛沫のカット率は、不織布マスクが80%、ウレタンマスクが50%、布マスクが66~82%、他人から吐き出される飛沫のカット率は、順に70%、35~45%、30~40%。
不織布マスクとそれ以外のマスクの性能差、とりわけ頻用されているウレタンマスクの性能の低さは明白。対デルタ株でこの差はかなり大きい。
なお、敏感肌や皮膚疾患があるため、かぶれ防止で不織布以外のマスクを選択している人もいるだろう。その場合は不織布マスクと皮膚の間に綿ガーゼを挟む、マスクの接触部分の汗をこまめに拭くなどで、一定のかぶれ防止効果があることを覚えておこう。
また、装着法も要注意だ。不織布マスク着用時に鼻の部分をフィットさせるノーズピースに無頓着な人もいるが、着用時はまずノーズピースをきちんとフィットさせ、そこを抑えたままプリーツを引き延ばして顎にかけ、最後に耳ゴムをかけることでマスクと顔面の隙間をなるべく少なくする。
なお、「外出は必要最低限、外食もせず、職場でも常にマスクをしていたが感染してしまった」と嘆く人の話をよく耳にすることがある。
しかし、そういう場合でも丹念に行動を振り返ると、勤務先でマスクが窮屈になり顎マスクにした時に隣席の人と会話をした、休憩所や更衣室でマスクを外した時に他の人と会話をした、混んでいた喫煙所に入ってタバコを吸ったなど、感染リスクのある瞬間が確認できたりする。デルタ株流行下の今、これらは特にリスクの高い行為となる。
さらにウイルス量が多いデルタ株の場合、当然ながらマイクロ飛沫感染のリスクが高まるため、(3)の換気も今まで以上に重要だ。換気のポイントは窓や扉を2か所以上開けて空気の流れを作ること。構造上1か所しか開けられない場合は、空気の流れを作るために可能ならば扇風機や換気扇を併用する。
一見すると新味がない、あるいは必要以上に細かいと思うかもしれない。しかし、感染経路は変わらないため、デルタ株対策は今まで言われていた予防対策をどれだけ徹底できるかにかかっている。
その意味では上記の注意事項と自分の行動を照らし合わせ、最近面倒と思い始めた対策、自分が時々うっかり忘れている対策をまずは一つ見つけ、それを漏れなく習慣づけることから始めるのもアリだ。
2回接種後のデルタ株発症予防率「ファイザー88%、アストラゼネカ67%、モデルナ96%」
しかし、最大の予防策はワクチン接種だ。
現在日本の公的接種に用いられているワクチンはメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンである米ファイザー・独ビオンテック共同開発のコミナティ筋注(以下、ファイザー・ワクチン)と米モデルナ社のモデルナ筋注(以下、モデルナ・ワクチン)、さらに最近40歳以上を対象に使用が始まったウイルスベクターワクチンであるアストラゼネカ社のバキスゼブリア筋注(以下、アストラゼネカ・ワクチン)の3種類だ。
いずれも2回接種が必要で、臨床試験で分かった有効率は、ファイザー・ワクチンが95%、モデルナ・ワクチンが94.1%、アストラゼネカ・ワクチンが76%。
この有効率は感染予防ではなく、体内に入ったウイルスによる発症を予防する有効率。また、有効率95%とは、新型コロナの発症率がワクチン未接種集団に比べると、ワクチン接種集団で95%低下していたという意味だ。
もっとも前編で述べたようにデルタ株はヒトの免疫から逃れやすくなるため、ワクチンの効果は低下すると言われている。
実際、英イングランド公衆衛生庁が感染者報告やワクチン接種状況のデータベースを基に行った研究から、2回接種完了後のデルタ株に対する発症予防の推定有効率はファイザー・ワクチンが88%、アストラゼネカ・ワクチンが67%だった。
モデルナ・ワクチンに関しては、米国立アレルギー感染症研究所のグループが人工的に再現したデルタ株に対する2回接種完了者の血液中の抗体の効果を確認し、2回接種完了半年後でも96%のウイルス抑制効果があったと発表している。
ブレイクスルー感染者はごくわずかで重症化率も低い
ただし、ワクチン接種を完了しても(1)体内の新型コロナに対する抗体が時間とともに減少する、(2)ワクチン接種完了後に感染する「ブレイクスルー感染」が起こり得る、(3)無症状の「ブレイクスルー感染者」は体内に大量のウイルスを保持して他人に感染させる可能性がある、などの課題が浮上している。
(1)では、昨年12月からいち早く国民への接種を開始したイスラエルが6月6日以降の感染状況などから7月上旬時点のファイザー・ワクチンの発症予防有効率が64%に低下したとの試算を発表している。
ただ、有効率64%でも発症リスクはワクチン未接種者の3分の1程度に抑えられているほか、発症予防の有効率は低下しても重症化・入院予防の有効率は93%と高いことが分かっている。
(2)はワクチンの有効性が100%ではないため避けられない問題だが、現時点で判明しているブレイクスルー感染発生率は、アルファ株流行時のイスラエルからの報告で無症状者も含めわずか2.6%。
デルタ株ではこの数字が高くなる可能性はあるものの、例えば接種者の半数以上でブレイクスルー感染が起こるなど、ワクチンの存在意義がなくなるような事態は現状の各種データからは考えにくい。また、ブレイクスルー感染例では未接種者と比べ、重症化率も低いのが現実である。
つまり(1)、(2)の課題があったとしても、依然としてワクチンの発症・重症化予防効果は一定以上維持されており、接種は有効といえるのだ。実際、現在10代以下の感染者が急増しているが、これはデルタ株の性質というよりは、この年齢層にワクチン接種が行きわたっていないことが大きい(11歳以下に至ってはワクチン接種対象外)。
ちなみに前述のイングランド公衆衛生庁の研究では、ワクチンの1回接種だけではデルタ株に対する発症予防の有効率は35.6%に過ぎないので、1回接種後も厳重に感染対策をして、しっかり2回接種を完了する必要がある。
ワクチン接種後でも他人に感染させる可能性も
一方、今後問題になるのは(3)だ。すでに一部研究からワクチン接種完了者がデルタ株による無症状のブレイクスルー感染を起こした場合、その人の体内にあるウイルス量はワクチン未接種で感染した人の体内ウイルス量とほぼ同レベルと判明している。
つまりワクチン接種者本人がワクチン効果で発症予防ができて無症状にとどまっていても、他人に感染させる量のウイルスを運んで、ワクチン未接種者などに感染させる可能性がある。
「ワクチン接種が終わってもマスクを着用しよう」と呼びかけられているのは、こうした背景があるからだ。もっともワクチン接種完了者が増えれば増えるほど、この危険性も低下することは確実である。
何かと厄介な性質を持つデルタ株だが、これまで分かっていることを総合すれば、従来から言われてきた対策をより徹底し、ワクチンを可能な限り接種することでかなりのリスクは回避できる。政府による大局からの対策も重要だが、それと同じくらい私たちのちょっとした日常的な注意も重要なのである。
https://news.yahoo.co.jp/…/62c12cbd875e3978bdf8006ac981…

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 2017-8-7

    学術雑誌「医療看護環境学」を創刊致しました!

    学術雑誌「医療看護環境学」を創刊致しました! どうぞご利用ください! 医療看護環境学の目的 …
  2. 2021-4-1

    感染症ガイドMAP

    様々な感染症情報のガイドMAPです 下記のガイドを参考に、情報をお調べください。 感染症.com…
  3. 2021-4-1

    感染症.comのご利用ガイドMAP

    一緒に問題を解決しましょう! お客様の勇気ある一歩を、感染症.comは応援致します! 当サイトを…
  4. 2022-9-1

    感染対策シニアアドバイザー2022年改訂版のお知らせ

    感染対策シニアアドバイザーを2022年版に改訂しました! 感染対策の最前線で働く職員の…
  5. 2022-9-1

    感染対策アドバイザー2022年改訂版のお知らせ

    感染対策アドバイザーを2022年版に改訂しました! 一般企業の職員でも基礎から学べ、実…

おすすめ記事

ページ上部へ戻る