2021/07/28【新型コロナウイルス:COVID-19】データで読む感染拡大動向 ワクチンは効果アリも医療逼迫の危機…五輪の影響は? 自殺者数も深刻

東京では新型コロナウイルスの感染者が急拡大し第5波の様相を見せている。オリンピックが開幕、夏休みもスタートし人流抑制が難しい状況の中、感染はどこまで広がるのか。そして、ワクチン接種の効果は。
BSフジLIVE「プライムニュース」では、最新データや独自データを読み解きながら、今後の感染動向と経済・社会活動への影響を徹底分析した。
ワクチンの効果は確実に出ているが、デルタ株は強く医療逼迫は深刻
新美有加キャスター:
東京都では新規感染者数が第3波を超える勢いで拡大する一方、重症者数は最近、増加傾向にはあるものの医療崩壊が懸念された第3波よりは低水準。しかし、専門家はさらなる感染拡大の可能性を指摘。新規感染者数はさらに増え、第3波のピークを大きく上回ると警鐘を鳴らしています。
和田耕治 国際医療福祉大学大学院 医学研究科 教授:
重症者の手前の「中等症」と呼ばれる酸素投与が必要な方々を診る病床が、都心ではすでにかなり逼迫。これからは、4月ごろ関西であったような、医療に繋がらず在宅で亡くなるという事態をいかに防いでいくかという、非常にクリティカルな状況。
仲田泰祐 東京大学大学院経済学研究科 准教授:
我々が数理モデルで分析してきた2021年1月以来、今が一番感染拡大のリスクが大きい時期と見ている。現状の感染拡大はデルタ株の感染力が非常に強いことを示唆している。そこで今後に関して、楽観的・悲観的2つのシナリオを提示した(7月24日作成)。
仲田泰祐 東京大学大学院経済学研究科 准教授:
この悲観シナリオでは今週約2000人、そして来週は1日平均2500人というレベル。医療逼迫がニュースとなって人々の行動が徐々に変化し、2500人で横ばいに。宣言が予定通り8月22日に解除され、その後、経済を慎重に回復させていく。都より広い定義の国基準の数字で重症患者数を出しているが、医療キャパシティにおけるリスクが高い。
反町理キャスター:
8月22日に緊急事態宣言を解除しない場合は。
仲田泰祐 東京大学大学院経済学研究科 准教授:
その場合のシナリオも提示していく。ただ、国の政策や人々の行動に関して1カ月先のことはまったく分からない。ここで読み取れるのは、ワクチン接種が順調に進むことで、新規感染者数と重症患者数の関係が従来から大きく変わること。
反町理キャスター:
試算では、11月以降で急激に新規感染者が減っていく。これもワクチンの効果だと思うが、和田さんはこの効果が出るとご覧になりますか。
和田耕治 国際医療福祉大学大学院 医学研究科 教授:
中長期の予測にはかなり不確実性があるが、少なくともこの冬は非常に厳しいと見ている。コロナかインフルエンザか本当にわからないという、昨年恐れた事態も考えられる。
反町理キャスター:
重症患者数は、悲観シナリオでは病床使用率が100%を超える状態になっている。しかしワクチンの効果もあり、過去の第3波・第4波などと比べると重症者数はかなり低く抑えられる試算になっている?
仲田泰祐 東京大学大学院経済学研究科 准教授:
ワクチン接種がなかった場合をシミュレートすると、もっと高いレベルになってしまう。デルタ株に対するワクチン効果については、確実に数字になって現れる。
反町理キャスター:
都内で病床使用率が100%を超える状況が発生したら何が起きるか。
和田耕治 国際医療福祉大学大学院 医学研究科 教授:
東京都では約6000床近い病床のうち2000床超を使っている。重症者となる手前の酸素を吸う必要がある人のうち、若い年代の人たちが大体、ホテルや自宅療養されている。その方々が自宅で亡くなることがないようにどうするか。来週、再来週から東京でこの事象が出始めてもおかしくないと考えている。
五輪による入国者の感染への影響は限定的。むしろ行楽も含めた国内人流に注意
新美有加キャスター:
東京オリンピックでは、選手や大会関係者を合わせ約5万2000人が国外から入国。組織委員会によれば、感染者は7月1日から26日までで、国内在住者も含め148人。想定内でしょうか。
仲田泰祐 東京大学大学院経済学研究科 准教授:
3つに分けて考える必要がある。ひとつは、海外からの入国者が数週間滞在する影響。そして、会場に人が行き来するなどの国内人流。そしてもうひとつ、日本中でお祭りムードが広まって人の動きが活発になること。
1つめの影響は相対的には限定的。入国者約約5万人は、東京都の人口約1400万人の0.5%にも満たない。重症患者も1人も出ていない。安心しすぎてはいけないが。
反町理キャスター:
あと2つについては。
仲田泰祐 東京大学大学院経済学研究科 准教授:
会場人流に関しては無観客で、リスクはゼロではないが大きな影響は考えにくい。問題は間接的な影響。五輪というイベントによって個人の感染症対策レベルが低下してはいけない。普段会っている家族や友達と自宅で応援することを徹底してほしい。
反町理キャスター:
先日の4連休における人流を見ると、オリンピック以外の行楽による感染拡大のほうが怖いように見える。
和田耕治 国際医療福祉大学大学院 医学研究科 教授:
やはり国内の人流により接触が増えたことによる感染拡大のほうが、数として積み上がるのは間違いないと思います。
自殺者は「病気を原因としないコロナ死」 特に女性の自殺者増加が顕著
新美有加キャスター:
新型コロナの自殺者数との関連性について、どのような分析を。
仲田泰祐 東京大学大学院経済学研究科 准教授:
コロナ危機が起こらなかったとして想定できる自殺者数と、実際の自殺者数を比べる。2020年3月から2021年5月までで約3200人プラスとなっているが、うち約1200人は実際の失業率が予測よりも高いレベルになっていることで説明できる。しかし、残り約2000人がそれだけでは説明できない。
反町理キャスター:
病気としてのコロナではなく、コロナという社会的な現象によって、2000人が失業率ではない原因で自殺されたという理解でよいか。
仲田泰祐 東京大学大学院経済学研究科 准教授:
そうなる。また、今回は女性の自殺者増加が顕著。現時点では推測でしかないが、非正規雇用の女性への経済的ダメージが圧倒的に大きいという背景がある。経済難、人と人とのつながりが弱くなったことに起因するストレス、メンタルヘルス、さまざまな理由があると思う。後遺症によるストレスを感じられている方も。公衆衛生の危機だけではなく、社会的・経済的な危機があることを皆さんに感じてほしい。
ワクチンパスポート開始。ポストコロナの景気回復に出遅れることへの危機感
新美有加キャスター:
イタリアなど5カ国への渡航に関して各市町村で申請の受け付けが始まった、ワクチン接種の証明書となるワクチンパスポートについて。経団連が提言した活用の方向性は大きく2つ。まず、出入国時に提示することで隔離の免除、隔離期間の緩和、検疫手続きの迅速化を図ること。そして、日本国内の飲食店や娯楽施設などでの各種割引や特典の付与。提言書を政府に提出した理由は。
正木義久 経団連 ソーシャル・コミュニケーション本部長:
ワクチン接種が進んでいる諸外国・地域でも行われている、科学的な知見に基づいて感染対策を打ちながら社会経済活動を正常化する、その一段階目としてのツール。
反町理キャスター:
例えばアメリカ、イギリス、中国など、コロナの現状にある程度見切りをつけ、経済に注力して成長率にブーストをかけている。ポストコロナの景気回復に日本が乗り遅れることへの危機感の表れでは。
正木義久 経団連 ソーシャル・コミュニケーション本部長:
その通り。今も中国や韓国のビジネスパーソンはどんどんアジア諸国に乗り込んでいっている。新しいビジネスのためには、テレワークではなく直接対面しなければ、戦わずして負けてしまう。
ワクチン接種消極層に対しては、医療従事者や周囲の接種者からの好影響に期待
新美有加キャスター:
ワクチン接種へ向けて政府の取るべき対応について。「あまり接種したいとは思わない」「接種したくない」と消極的な人は17.0%。
和田耕治 国際医療福祉大学大学院 医学研究科 教授:
「もう少し様子を見たい」を含めた積極的な約8割の方には、2021年11月末~12月ぐらいまでには接種が行き届くようにすべきと思っています。
反町理キャスター:
特に女性でワクチンに対する不信が強い。
和田耕治 国際医療福祉大学大学院 医学研究科 教授:
特に重症者も増えている50代が重要。だいたい80代の親がおられ、お子さんがいれば20代と想定できる。それら別の世代にも良い影響が起こるように、50代がスムーズに接種していただくことが優先事項。
反町理キャスター:
政府の予防接種に関する情報について、全く信頼しない人が4分の1以上いる。どうすればよいか。
和田耕治 国際医療福祉大学大学院 医学研究科 教授:
例えば、かかりつけの先生からの説明。内科だけではなく眼科や歯科でも話題にしていただく。医療従事者の役割は大事。また、接種済の方が日常会話の中で話題にしていただければ。そして、秋口にインフルエンザのワクチンと同時接種をできるようにすることもポイント。
正木義久 経団連 ソーシャル・コミュニケーション本部長:
65歳以上の感染者数は現在、少ない。ワクチンを打てば確実に数字が変わる。効果がわかるようにデータを公表することで、メリットが伝わっていくのでは。
https://news.yahoo.co.jp/…/82dfdc97c26bbb77850aa1eb6dd7…

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