2021/05/01【新型コロナウイルス:COVID-19】新型コロナ感染対策 あらためて基本を抑えたい、職場内クラスターを防ぐ10のポイント

2021年4月23日に東京、大阪、京都、兵庫の4都府県を対象に緊急事態宣言が発出されました。感染性と病原性が強まった英国由来の変異ウイルスが流行している地域では、これまで重症化しにくいと言われていた20代や30代にも人工呼吸器が必要となる方、そして、基礎疾患がないにもかかわらず不幸にして亡くなる方が出てきています。
このような状況において、人と人が接触する機会を可能な限り減らすために、政府はこれまでのようにテレワークや休暇の取得、出勤者の7割削減を呼び掛けていますが、思うようには進んでいません。
職場ではどのような場面で感染が起きているのか、また、どうすれば職場での感染を防ぐことができるのか。2021年4月30日現在の情報をもとに解説します。
職場内感染はどのような場面で起こるのか?
これまでに発生した職場内クラスターの調査などから、職場における感染のリスクは次のような場面で高まることが分かっています。これらの場面(条件)の組み合わせ次第で、リスクが高まりますが、すべてが揃わなくてもリスクは生じます。
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① マスクをつけずに会話をする
- 飲食をしながら会話をする(ランチ、宴会、休憩中、移動の車中など)
‐ 喫煙しながら会話をする
- 仕事中に一部の職員がマスクをしていない/マスクで鼻と口を覆っていない
② 互いの距離が近い(密接)
- 職場や車内で互いの座席が近すぎる
③ 大勢が集まる(密集)
- 大人数で車に乗って移動する
- 大人数で宴会をする(屋内外を問わない)
④ 換気が不十分(密閉)
- 換気不良の会議室や飲食店に滞在する
⑤ 物品の共有・不十分な手指衛生
- 電話やインカムなどを消毒せずに使いまわす
- 適切なタイミング・方法で手を洗わない
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職場内感染をどう防ぐか
まず、ウイルスの感染経路となるような行動・場所を避けることが感染を防ぎます。感染経路について、あらためて基本的な考え方を紹介します。
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【飛沫感染】
呼吸、会話、歌唱、咳、くしゃみの際に感染者の鼻や口から出る飛沫(水分を含む微粒子)が近く(約1~2m)にいる人の目、鼻、口に入って感染する経路。新型コロナの主要な感染経路と考えられている。
【接触感染】
感染者の飛沫に含まれるウイルスが付着した環境表面やモノに触れた手で、目、鼻、口に触れることで感染する経路。飛沫感染に比べ、接触感染が起こる頻度は低いと考えられている。
【空気感染】
エアロゾル感染などと呼ばれることもある。人が集まり、発声がある換気の悪い閉鎖空間で起こりやすい。感染者の鼻や口から出る飛沫の水分が蒸発し、軽くなった粒子が空気中を浮遊し、近くにいる人だけでなく、やや離れたところにいる人も吸い込んで感染する経路。レストラン、ジム、合唱練習などで起きている。
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主な感染経路を紹介したところで、以下で職場内感染を防ぐために有効な具体的な10の対策を紹介します。
対策① 飛沫を飛ばさない・浴びない
□ 屋内でも屋外でも、社内でも社外でも、昼でも夜でも、1~2メートル以内に近づいて会話をするときはマスクをつける。←重要!
□ 換気の程度が分からない部屋を複数で利用する場合は、マスクをつけ、滞在時間は最小とする。
□ マスクを過信せず、以下に留意する。
‐ 他の人との間隔を1メートル以上あける。
‐ 対面で行う会議は短時間ですませる。リモートでの参加が可能な場合は、リモートを選択する。
‐ 大きな声を出さない。
【マスクの選び方・つけ方】
・不織布マスクを第一選択にする。
・顔にフィットしやすい形・サイズのマスクを選ぶ。
・肌荒れなどで不織布マスクがつけられない場合は、布製マスクを選択する。
 布製マスクはなるべく目が詰まった、2層以上の製品を選ぶ。
・ポリウレタン製マスクの使用は避ける。
 飛沫を抑える効果も、吸い込むのを防ぐ効果も弱い(上図参照)。
・フェイスシールド・マウスガードをマスクの代わりに使用しない。
対策② 換気をはかる
□ 窓は常時少しだけ開けて、適切な室温を維持しながら換気を行う。
□ ドアと窓がある部屋は、部屋の対角線上に空気の通り道を作ると良い。
□ 窓のない部屋では、サーキュレーターを回して、排気口に向かう空気の流れをつくることを検討する。→具体的な方法はこちら
□ オフィスに人がいる状態で二酸化炭素濃度を測定することも検討する。→具体的な方法はこちら
対策③ 感染リスクが高まる場面を徹底的に避ける
□ マスクのない会話や密集が起こりやすい場所を洗い出し、社員間で共有する。
例えば、
- 昼食をとる場所(社員食堂、飲食店、公園、移動の車中)
‐ 仕事終わりや休憩中にホッとする場所(休憩室、トイレ・洗面所、ロッカールーム、喫煙所、給湯室、移動の車中)
‐ 会議室など人が集まって協議をする場所
‐ 宴会を行う場所(飲食店、社員の自宅、公園、BBQ場)
といった場所が考えられる。これらの場所でのマスクのない会話や密集を避けるための取り組みを行う。
□ 複数人でのランチや宴会はクラスターの原因となりやすい。食事は1人でとる「ぼっち飯」や食事中に会話をしない「黙食」を推進する。
□ 新型コロナの検査が陰性であっても、感染していないことが証明されたわけではない。検査陰性だからマスクなしの飲食や会話を安全にできるという判断をしてはならない。
□ 密集が生じやすい場所について、一度に利用する人数を制限したり、利用時間をずらすなど、安全な活用方法を検討し、ルールを周知する。
□ 会議室や休憩室などの閉鎖空間の換気を改善する。
対策④ 環境消毒はやりすぎず、手指衛生を適切なタイミングと方法で行う
□ 環境表面やモノに触れることによって感染する可能性は低いと考えられており、それらの消毒に多大な労力と時間をつぎ込むことで得られる利益は少ない。
□ 置き型や首から下げる空間除菌剤の使用、空気中への消毒剤の噴霧は、効果が不明であるだけでなく、健康被害を起こす場合があることから行わない。
→ 厚生労働省 空間噴霧について
→ 健康被害について詳しい記事
□ 電話の受話器、キーボードやマウスのように職場内で共有する器材は、別の人が使用する前に薄めた洗剤かアルコールを含むクロスなどで拭くか、使用者が頻繁に変わって拭くのが面倒な場合は、使用後に手指消毒または手洗いを行う。使用場所の近くに手指消毒薬を置いておくと便利である。
□ ドアノブやエレベーターのボタンのように、不特定多数が日常的に頻繁に触れる環境表面から感染するリスクはさほど高くはないと考えられているが、気になる場合は、触れたあとに手を消毒するか手を洗うと良い。
□ 手の消毒や手洗いはやりすぎず、こちらの記事で紹介しているように、適切なタイミングと方法で行う。
対策⑤ 予防接種
□ 感染と重症化を防ぐ効果、そして安全性が高いmRNAワクチンの接種が国内で段階的に始まっている。職員の接種率を高めることは、職場内クラスターの発生やそれに伴う業務縮小・停止のリスクを下げることにつながる。
□ 職員一人ひとりが正確な情報に基づいて接種するかしないかを判断するために、正確でわかりやすい情報源を紹介する。また、各職員の判断を尊重する。
□ 接種翌日から数日間は、接種部位の腕の痛みや倦怠感、発熱などの副反応がみられることがあるため、必要に応じて休養できる体制を整える。
□ ワクチン接種後に高い感染予防効果が発揮される時期は、2回目の接種から約2週間後と報告されている。接種後すぐに予防効果が現れるわけではないことに留意する。また、感染予防効果は100%ではないため、接種後も基本的な感染対策は継続する。
【新型コロナワクチンに関する正確でわかりやすい情報源】
・厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A
・こびナビ
・コロワくん
・首相官邸 新型コロナワクチンについて
・NHK 新型コロナ ワクチン情報一覧
対策⑥ 健康状態の確認と体調不良者への対応
□ 出勤前に新型コロナで見られる症状の有無を確認する。
【新型コロナでみられる症状】
発熱、、咳、のどの痛み、息苦しさ、倦怠感、寒気、頭痛、関節痛、味や臭いを感じられない、腹痛、下痢、吐き気、嘔吐、結膜炎
□ 発熱や咳以外の症状にも注意する。特に発症初期には熱が出るとは限らない。37.1度程度の微熱のこともある。鼻汁や鼻閉をアレルギー症状だと思っていたら、新型コロナであったケースも珍しくない。そのため、いずれかの症状があれば積極的に感染を疑う。
□ 症状のある職員が、医療機関を受診する手順を明確にする。症状がある場合は、市販の検査キットなどは使わず、医療機関に電話連絡のうえ、受診する。
□ ごく軽い症状(なんとなくだるい、のどに違和感があるなど)が出現した場合の対応を明確にする。例えば他の職員とマスクを外した接触は避け、症状が強くなったときは直ちに就業を停止するなどの対応を明確にしておく。
□ 職員自身や世話や介護が必要な家族が体調不良のときに休暇を取得しやすい体制を作り、気兼ねなく申告できる文化を醸成する。→参考 新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
□ 体調不良の際の就業停止の期間や復職の条件について定める。新型コロナで見られる症状が出現して受診し、検査が陰性であっても感染が否定されたわけではない。感染性期間※は自宅療養するか、出勤が可能な体調であってもマスクをつけて、人との接触を可能な限り避けるなどの配慮が必要である。
※感染性期間:症状が出た日から10日間、かつ、症状軽快(解熱剤を使わないで解熱し、咳などの呼吸器症状が改善)してから72時間が経過するまで
□ 職員が濃厚接触者となった場合の就業停止の期間や症状が出現した際の対応について定める。濃厚接触者になった場合は、検査結果にかかわらず、潜伏期間※が過ぎるまでは就業停止とするのが安全である(注)。
※潜伏期間:最終接触から14日間が経過するまで
注:米国疾病対策センター(CDC)は、新型コロナワクチン(ファイザーまたはモデルナ社製)の2回目を接種後2週間以上が経過している人が濃厚接触者となった場合、就業制限は不要としている。但し、その場合でも14日間が過ぎるまでは症状の出現に注意し、症状が現れたら直ちに就業を停止して、受診する必要がある。
□ 新型コロナが疑われる職員が発生したときの対応について定める。→新型コロナウイルスの陽性者等が発生した場合における衛生上の職場の対応ルール(例)
□ 必要時、産業医や保健所に相談する。
対策⑦ 都道府県間の移動や海外渡航に関する規定を設ける
□ 業務に関連する国内の移動について規定を設ける。
□ 海外出張を行う場合の出国時、帰国時、滞在中の注意事項について定める。
対策⑧ 職員教育
□ 幹部・管理職は、新型コロナ対策に関する定期的に職員研修を企画し、実行する。
□ 日本語を母語としない外国人労働者の理解を支援する。
対策⑨ 予防のための体制
□ 地域における新型コロナの発生状況、推奨される予防策、感染者(疑いを含む)が発生した時の対応などについて協議する体制(部門あるいは会議体)を設ける。組織の長は、ここで協議した内容を把握し、迅速に必要な支援および指示を行う。
□ 新型コロナについて職員が相談可能な窓口を設け、中立的かつ非懲罰的な対応を行う。症状を申告した職員や感染した職員を責めるようなことはあってはならない。懲罰は積極的な申告を阻むという弊害を生みやすい。
対策⑩ 有給休暇の取得、テレワーク、時差出勤を推進する
□ 在宅勤務(テレワーク)の選択を可能にする。
□ 公共交通機関が混雑しない時間帯に出退勤できるようなフレキシブルな勤務体制とする。
□ 自転車や自動車通勤を選択する職員のために駐輪場や駐車場の利用を容易にする。
□ チーム制を導入して勤務時間帯をずらすことや、1日の就業時間を短縮する。
□ 職員は労働組合等を通して、上記の選択肢が提供されるように勤務先に働きかける。
現在の懸念事項と今後の展望
感染性と病原性が強いと言われている英国由来の変異ウイルスが人の動きとともに広がれば、これまでにない早いペースで、より多くの感染者、そして重症者が各地で発生する恐れがあります。特にこの変異ウイルスの流行地域で高齢者に限らず、就労世代も重症化している点は大きな懸念事項です。
職場では人と人が接触する機会が多く、接する時間も長いことから、ウイルスにとって都合よく人から人に伝播する機会が多数生じます。有給休暇の取得、時差通勤、テレワークの推進は、ウイルスが伝播する機会を減らすために必要な対策であり、今後さらに実施率が高まることが望ましいと言えます。
ただ、そうはいっても出社しなければならない人がいるのも事実です。職場内感染を防ぐ手段にウルトラCはありません。これまで通り、飛沫を飛ばさず・浴びず、換気をはかり、適切なタイミングと方法で手を洗い、体調が悪い場合は休むといった基本的な対策を企業で働くあらゆる人が標準的に実施することが重要です。
効果的で安全性の高いワクチンの開発は、感染予防と経済活動の再開という両面で長いトンネルの先に見える希望の灯りです。多くの人が納得したうえで接種に臨めるよう、職場内でのワクチンに関する正確な情報の共有も望まれます。
https://news.yahoo.co.jp/…/sakamotof…/20210501-00235662/

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