2020/06/05【食中毒対策】意外なところに「細菌」が…保存食・テイクアウトが実は危ない理由

買い物自粛による「作り置き」が…

緊急事態宣言が全国的に解除されました。少し自由度は高まりましたが、新型コロナ感染症が起こる前とは大きく生活が変わりました。スーパーマーケットなどでの買い物時間の短縮や触れた商品の購入、少人数での来店や入場制限、来店頻度を下げる要請などと、楽しかった買い物がなんとなく窮屈になったような気がします。
また、在宅時間が増えてお掃除や片づけ、お料理にかかわる時間が増えたようです。家がきれいになるのは良いことですが、これからの時期、ちょっと心配なのはお料理です。
6月から9月は細菌による食中毒が多く、しかもほとんどの原因は温度管理と不衛生な環境から起こっています。食中毒とは、細菌やウイルスが付着した食品や、有毒・有害な物質が含まれる食品を食べることによって、 有害物を体外に出そうとする体の防衛反応で下痢や嘔吐・発熱などの症状が出ることです。ひどい場合は腎臓障害や呼吸麻痺等を起こし死亡することもあります。
スーパーマーケットへの来店頻度を減らすために「作り置き」や「保存食」を作る方も多いかと思いますが、食中毒を起こさないためには、どんなことに注意すればよいのでしょうか。調理や食べ方の工夫をご紹介します。

細菌を「付けない」「増やさない」「やっつける」

食中毒を予防するためには、細菌を「付けない」「増やさない」「やっつける」という3大原則があります。
まず、「付けない」ために、新鮮な食材を購入し、調理用具と手は洗剤やせっけんを使い流水でよく洗います。生鮮食品は表面を流水で洗うことで細菌を減らすことができます。特に、肉や魚など生ものを触った手で、生で食べる果物や野菜に触らないようにすることや、肉・魚・野菜とまな板を分けることが大切です。
細菌を「増やさない」ために、要冷蔵や要冷凍の食品は持ち帰ったらすぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れるようにしましょう。調理の途中や調理後でも室温で長時間放置すると、その間に原因になる菌などが増殖して、食中毒を起こしやすくなります。
多くの細菌は20℃から50℃で増えやすくなり、人間の体温である37℃前後が最も増殖します。それ以下の温度(特に10℃以下)ではほとんどの細菌の増殖は極端に遅くなり、60℃以上になると、一部(芽胞を作る菌)の細菌を除く多くの細菌は死滅していきます。加熱時間を守り、適切に管理していくことが食中毒対策において重要になるのです。中心温度が75℃以上で1分間以上の加熱を実施すれば、大半の細菌を殺すことができます。
しかし、安心は禁物です。芽胞を作る菌は生き残り、50℃くらいになると増殖が一挙に進みます。また、蓋をあけっぱなしで常温で料理を放置した場合、空中の埃などを介して細菌が混入することも考えられます。「二日目のカレーは菌だらけで危ない」というニュースもありましたが、それはまさにこのこと。カレーが冷める過程で、菌が発生しやすい50℃から20℃の温度帯をゆっくり通過するからです。

冷めるまで放置は危ない!

専門的にいうと厚生労働省が発行する『大量調理施設衛生管理マニュアル』で記述されているように、30分以内に中心温度を20℃付近(または、60分以内に中心温度を10℃付近)まで下がるように管理しなければなりません。食品工場などで温度を急速に下げる機材を使い対応していますが自宅ではなかなか難しいものです。ですから調理後はなるべく早く食べ、残ったお料理は常温に置かず、冷蔵庫で保存しましょう。
今はほとんどの食品に賞味期限が記載されているので、期限が来ると中身も確認しないで処分する人が多く、本当に食品が腐っているか分かる人が少ないそうです。賞味期限内の食材を利用して料理にしてしまうと、もはや「期限」はなくなってしまいます。自分の五感を使い、問題ないか確認するようにしたいものです。少しでも変なにおいがしたり、加熱して離水があれば廃棄してください。
菌やウイルスを「殺す」過程も大切です。細菌は加熱すれば死滅するので、肉や魚は十分に加熱しましょう。前述した「2日目のカレー」のような例は、高温でも死滅しないウェルシュ菌という細菌に汚染された食材を使用した場合に起こります。ですので、すべての煮込み料理で起こるわけではありません。
もし汚染されたとしてもウェルシュ菌は嫌気性細菌といい、空気の少ないところで増殖するので鍋底からしっかり混ぜて空気を入れて加熱しましょう。カレーなどは粘性があるので余計に空気が回りにくくウェルシュ菌が好む環境になりがちです。お玉でカレーを鍋底から混ぜ、混ぜていても沸騰するくらいまで火入れをすれば問題なく食べられます。
火入れが終わったらなるべく早く粗熱を取り、冷蔵庫へ入れましょう。3日以上食べる予定がなければ冷凍するのも手。また、できれば深い寸胴鍋などで作るのではなく、空気に触れる面の多い、浅いお鍋を使用するのがおすすめです。
また、鶏肉の加熱不足で発生するカンピロバクターやサルモネラは夏場に起こりやすいので、よく焼いて食べましょう。魚も買ってきたらすぐに冷蔵庫へ。4℃以下で保存することで腸炎ビブリオによる食中毒を防げます。腸炎ビブリオは塩を好み、真水で洗うと死滅するため、魚は真水で洗います。ある事例として、魚を切ったまな板を良く洗わずにきゅうりを切り塩もみして浅漬けにしたら、塩分が大好きな腸炎ビブリオが浅漬けの中で増殖して食中毒になったということもあります。
いかがでしょうか。自宅調理では「よく洗う(食材や調理器具とも)」「低温保存(買ってきたときも調理済のものも)」「よく火を通す」の3点に注意していただきたいです。

出来立てのテイクアウトの罠

もう1点、気を付けなければならないこととして出来立てのテイクアウトです。これはファストフード店やナショナルチェーン店の商品ではなく、緊急事態宣言による休業要請で売り上げが下がりお弁当などを販売している、テイクアウト慣れしていない飲食店の商品です。
行政の要請でイートインを自主的に休業しているのですから救済措置としてテイクアウトを許している的な側面もあり、ルールを順守していなくても販売ができています。元々、イートインはその場で作り、その場で食べてもらうので、余程でなければ食中毒は起こりません。
しかし、テイクアウトは作ってから食べるまである程度の時間があるので、前述した50℃~20℃の温度帯が長く続きます。そのため、きちんとした衛生管理に慣れて調理していないと食中毒が起こりやすい環境になっています。通常の飲食店であれば保存料などの食品添加物など使い方もわかりませんし、そもそもその類のものは持っていないと考えられます。また、調理場の室温が高くなると菌が増殖しやすくなりますが、室温の低い清潔な環境で、他の作業の影響を受けないスペースを確保するのも難しいでしょう。

日中の「ワゴン販売」で…

このように、テイクアウト前提でできていない厨房や調理機材で行うのですからリスクは高まります。できた商品を道端の太陽がサンサンと当たるワゴンに入れて販売するのも、高リスクと言えるでしょう。
食中毒菌は栄養・水分・温度の条件がそろうと一気に増殖しますので梅雨の時期から食中毒が増えていきます。食品や残菜、調理器具類についた食品や汚れは細菌の栄養となります。高タンパク質の食品は、細菌にとって最良の栄養源です。細菌は水に溶けている栄養分を分解して摂取するため、水分のない食品では増殖できません。そのため、乾物は日持ちがします。調理器具もよく乾燥させることで除菌ができるのです。
今回のコロナの影響で医療従事者の皆様にお弁当を供給した飲食店の中でも保健所のチェックが入り、行政指導を受けた店舗も多く、それを機に衛生管理意識が醸成され、厨房環境が変わったなどとも聞きました。
食べることは体を作るうえで大切な事です。作る側が食べる人の健康を考えてきちんと作るということは家でも、お仕事でも同じことだと私は考えています。まだまだコロナ収束とは言えない状況ですが、しっかりと、かつ安全に食べて、うっとおしい梅雨の時期を乗り越えていきましょう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/73032

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