2019/09/15【ワクチン】ロタウイルスワクチン「早ければ来年度中」定期接種化

厚労省部会、ワクチンメーカーと「価格引き下げ」初の話し合い
厚生労働省は9月13日、第33回厚生科学審議会予防接種基本方針部会(部会長:脇田隆字・国立感染症研究所長)を開催し、これまでの審議を踏まえ、ロタウイルスワクチンについて「定期接種化が妥当」と結論付けた。今後、「早ければ来年度(2020年度)中」(厚労省事務局)の定期接種化を目指し、予防接種法上の疾病区分(A類・B類)や接種の具体的な方法などを審議していく(資料は、厚労省のホームページ)。
同部会では、ロタウイルスワクチンの定期接種化で焦点となっていた「費用対効果」「腸重積に関する情報提供」などを改めて審議した。「費用対効果」については、審議の前にワクチン製造企業〔グラクソ・スミスクライン(GSK)、MSD〕へのヒアリングを実施。「ワクチン価格の引き下げ」を非公開で話し合った。予防接種部会がワクチン製造企業にワクチン価格の引き下げを打診したのは初めて。
ロタウイルスワクチンの評価報告書は、2012年から2016年にかけて3回取りまとめられている。定期接種化には「費用対効果」と「腸重積の有害事象(副反応)報告」の取り扱いが焦点とされていた(『承認から8年目、ロタワクチン定期接種化に向けた審議続く』を参照)。
費用対効果が良好となる水準の価格引き下げには至らず
費用対効果については、ワクチン評価に関する小委員会が「現状で入手可能なエビデンスにおいては、ロタウイルスワクチンは費用対効果が良いとは言えないことから、現状の接種にかかる費用でロタウイルス感染症を予防接種法の対象疾病とすることには課題がある」と指摘。「ロタウイルスワクチン接種群の費用対効果は良好ではなく、ワクチン価格(または接種費用)が少なくとも4000円程度低下すれば、費用効果が良好となる」などの推計を示していた。
厚生労働省は8月1日、国内でロタウイルスワクチンを販売する2社にワクチン価格の引き下げが可能かの検討を依頼。今回の審議の前に非公開で、当該企業からのヒアリングを行った。ヒアリングにはGSK代表取締役社長のポール・リレット氏らと、MSD医薬政策部門統括兼社長室長の諸岡健雄氏が参加した。委員の日本医師会常任理事の釜萢敏氏によると「非常に元気を無くす結果」だったとのことで、費用対効果の課題を解決できる水準の引き下げには至らなかったようだ。ただし、一定の価格低減には応じられると回答したもよう。
定期接種に2社のワクチンを採用
審議ではこの他、ロタウイルスワクチン接種後の腸重積に関する被接種者の保護者への十分な情報提供を徹底することを求める意見が出された。
定期接種化により「同ワクチン接種後に腸重積が起きた時にワクチンとの関連の否定は難しい。任意接種と違って(接種後の健康被害は)国の責任になる。(定期接種化された後の)マスメディアの報道も心配だ。HPVワクチンと同じ(積極的勧奨の中止)ことが起きるのではないか」(委員の国立病院機構本部総合研究センター長の伊藤澄信氏)、「既に70%の子どもが接種しているので、医療機関での経験も蓄積されている。接種後1週間は腸重積のリスクがあること、早期受診のための情報提供も必要」(委員の国立感染症研究所感染症疫学センター第三室長の多屋馨子氏)などの意見が出た。
脇田氏は「これまでの議論を踏まえ、ロタウイルスワクチンの安全性・有効性の点からは定期接種化して差し支えないが、費用対効果には課題が残る。今回の2社へのヒアリングでの企業からの回答から、費用対効果が非常に良好になるという水準ではないが、現時点ではこれ以上の費用の低減を求めるのは難しい」と結論付けた。委員らに対し「総合的に判断して、ロタウイルスの定期接種化を進めるよう提言する。腸重積等の有害事象(副反応)に対する事前の十分な情報提供を行っていくこと、定期接種のワクチンは2社のワクチンを対象とするということで今後の議論を進めていく」と諮り、了承された。
https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/699894/

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