2019/08/08【研究報告】新発見の恐るべき真菌、カンジダ・アウリス

真菌とはカビのこと。真菌が起こす病気を真菌症と呼び、最も有名なものは白癬菌による水虫だが、患部が皮膚にとどまらず全身の感染症を生じる例もある。
カンジダ・アウリス(Candida auris)は、2009年に日本から報告された新しい真菌である。70歳の女性の耳だれから見つかったため、ラテン語で耳を意味するaurisと名付けられた。発見当初は高齢者で外耳道炎を起こす程度で、病原性は高くないと思われていたが、今やこの真菌が各国の病院や老人施設で死亡例を含む集団感染を引き起こし、世界的流行(パンデミックと呼ばれる)となっている。発見者である帝京大学大学院医真菌学教授の槇村浩一氏に話を聞いた。
槇村氏は、病気を引き起こす真菌を専門とする日本では数少ない医真菌学者だ。「カンジダ属の代表であり、カンジダ症の最大の原因となるカンジダ・アルビカンスは丸くて大きいが、日本で見つかるアウリスは小さくて形はいびつだ(図1)」と言う。アウリスが重篤な全身感染症の原因となることを、初めて報告したのは韓国である。2011年、アウリスが血液を介して全身に広がる敗血症の原因となった3例を見つけたのだ。その後の拡散は速やかで、インド、パキスタン、南アフリカ、ベネズエラ、英国、米国、クウェート、イスラエル、コロンビア、中国などから続々と報告されるようになった。
アウリスは発見も消毒も治療も困難
アウリスには厄介な問題点が幾つもある。まず、免疫機能の低下した例において重症の全身性感染症を引き起こす点だ。死亡率は30〜40%と推定されている。その最大の理由は、抗真菌薬の効かない菌が多いこと。アウリスの9割は最もよく使われる抗真菌薬のフルコナゾールに耐性を示し、5割は複数の抗真菌薬が効かない多剤耐性、4%はどの薬も効かないといわれている。
第二に、菌種の特定が困難な点が挙げられる。この真菌は新種であるため、従来の検査法では見つけることができない。アウリスを意識して特殊な方法を取らないと、見つからないのである。発見の遅れは、治療の遅れ、拡散防止の遅れに直結する。槇村氏は、大学にカンジダ・アウリス・レファレンスセンターを立ち上げた。怪しい真菌を送ってもらえれば、同定や分析を引き受けるという。
第三の問題点は、環境に定着しやすく消毒が困難な点だ。今年(2019年)4月、ニューヨーク・タイムズに掲載された記事によると、ブルックリンのマウント・サイナイ病院でアウリスに感染した高齢の男性が亡くなったが、病室の至るところにこの菌が残っており、病院は根絶のため「天井やタイルの一部を剝がした!」という。にわかに信じ難い話だが、アウリスはそうした環境でも数週間は生きられることが確認されているという。
日本もアウトブレイク対策を怠るな
日本では強い病原性を示さなかったアウリスが、海外で多くの死者を出しているのはなぜか。槇村氏は、遺伝子型の違いを指摘する。米疾病対策センター(CDC)がゲノムシークエンスという方法で詳細に分析したところ、アウリスには4つのタイプがあることが分かった。東アジア株、インド株、南アフリカ株、南米株である。その違いは大きく、病原性や薬剤耐性にも影響を与えている。
日本や韓国の東アジア株は、病原性は低く、抗真菌薬が比較的効果を発揮する。これに対してインド株は、致命率も耐性率も高い。英国でも米国でも多くの施設でアウリスの院内感染が発生しているが、南アフリカ株が主体の英国では今のところ死者は出ていない。これに対し米国では、州によって異なるもののインド株が多いとされ、死亡例も発生しているという。
米国での感染例に関しては、最近、インドや南アフリカ共和国、ベネズエラなどで医療機関に滞在した人が関与しているとの報告がある(図2)。となると、気になるのが中国で昨年、インド株によるアウトブレイクが起きた点だ。中国人観光客の増加や医療ツーリズムの流行を考えると、日本でのアウリスのアウトブレイクは間近に迫っていると同氏は指摘する。
「アウトブレイクが起き、死者が出てから大騒ぎするのではなく、今できる準備をしておこう」と呼びかける。大事なのは、高病原性のアウリスが国内に最初に現れたとき、そこで封じ込めること。CDCの真菌部門の責任者であるチラー氏は、「アウリスは一度、環境に定着してしまうと本当に大変。最初に抑え込むべきだ」と語ったという。そのためには、まず、医療従事者に対する啓発を進めること、そしてガイドラインを整備し、いざというときへの備えを固めておくべきだと、同氏は提言している。
https://kenko100.jp/articles/190808004909/#gsc.tab=0

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