2019/03/01【インフルエンザ】インフルエンザの症状は風邪とどう違う?乳幼児の特徴と対処法

インフルエンザが流行する12月〜3月は、風邪がはやる時期でもあります。インフルエンザと風邪では、症状はどのように違うのでしょうか。特に乳幼児のインフルエンザの症状や対処法について詳しく説明します。
この記事の監修ドクター
ほしこどもおとなクリニック院長 星 礼一 先生 埼玉医科大学医学部卒業。天心堂へつぎ病院小児科(大分県)、埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター新生児部門等を経て、現在ほしこどもおとなクリニック院長。
赤ちゃんのインフルエンザの症状
インフルエンザと風邪の症状の違いを知って、正しく対処しましょう。特にインフルエンザの場合は、早めの対応が大切です。
インフルエンザの特徴
インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することで急激に発症する病気です。個人差はありますが、高熱(38℃以上)、頭痛、関節痛、筋肉痛、倦怠感(だるさ)などの全身症状が強いのが特徴で、併せて喉の痛み、鼻水、咳などの風邪と同じような症状もみられます。
また、風邪よりも重症化しやすく、子供ではまれに急性脳症、高齢者では肺炎などの合併症を起こす場合があります。また、呼吸器や心臓などに持病がある人がインフルエンザにかかると、もとの病気が悪化することもあります。
風邪の特徴
一般的な風邪の多くは、ウイルス(ライノウイルス、コロナウイルスなど)に感染することによって起こります。発症は比較的ゆっくりで、喉の痛みや、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、咳など鼻と喉の局所的な症状が主です。発熱することもありますが、インフルエンザほどの高熱になることはあまりありません。
子供のインフルエンザで注意したい症状とは
インフルエンザがきっかけで発症する注意したい病気に「インフルエンザ脳症」があります。
子供で発症が多いインフルエンザ脳症
インフルエンザ脳症とは、インフルエンザによる感染症に続いて急性脳炎を引き起こし、意識障害を主な症状とする症候群のことを言います。重症化すると四肢の麻痺、知的障害、てんかんなどの後遺症が残ることもあり、死に至る場合もあります。
発生頻度としては、2009-10シーズンから、毎年およそ60〜100人くらいの人がインフルエンザ脳症になっているという報告があります(感染症発生動向調査 2015年より)。年齢別でみると、シーズンによって多少の差はありますが、0〜4歳、5〜9歳がほぼ同じくらいに多く、毎年、0〜9歳までの子供で50〜70%を占めています。
インフルエンザ脳症が疑われる症状
インフルエンザ脳症の診断は容易ではなく、血液・尿検査や頭部のCT検査・MRI検査、脳波検査などで診断されますが、インフルエンザ脳症が疑われる症状としては、発熱、意識障害、頭痛、けいれん、異常言動・行動などがあります。
中でも発熱は、インフルエンザにかかった多くの人に現れる症状です。しかし、発熱に続いてインフルエンザ脳症を起こしやすいため、発熱時には特に注意が必要です。また、異常言動・行動やけいれんもインフルエンザの発熱時に起こりやすい症状であり、インフルエンザ脳症の初期症状として現れることもあります。
意識障害は、痛みなどの刺激や呼びかけに対して反応が鈍かったり無反応な状態、または、自分の名前や生年月日が言えない状態などです。
大切なのはこれらの症状が出たとき、その後の状態を注意深くみることです。状態が回復すれば緊急受診の必要はないといえますが、インフルエンザ脳症は早期受診、早期治療で予後が異なります。症状が続けば早めに受診してください。
小児や未成年者は異常行動にも注意を
インフルエンザにかかると、インフルエンザ脳症を起こしていなくても、急に走り出す、部屋から飛び出そうとする、ウロウロするなどの異常行動がみられる場合があります。昨今、異常行動が抗インフルエンザウイルス薬の服用後に起こったこととして報告があったため、これらの異常行動が薬の服用が原因という見解もありましたが、これまでの調査結果などからは、因果関係は明らかにはなっていません。
抗インフルエンザウイルス薬を飲んでいなくても同じような異常行動が現れることがありますので、インフルエンザ罹患時には、薬の服用の有無に関わらず異常行動に対しての注意が必要です。
事故につながるような異常行動は発熱から2日以内に現れることが多いとされています。異常行動による事故を防ぐために、発熱から数えて少なくとも2日間は大人が見守り、患者さんを一人にしないようにしてください。
事故を防ぐ具体的な対策としては、窓や玄関に施錠する、ベランダに面していない部屋に寝かせる、1階で寝かせるなどがあります。なお、事故の割合は、就学以降〜未成年の男子で多くなっています。
インフルエンザにかかった時の対処法と注意点
インフルエンザにかかったら早めに治療を開始し、休養をとるなど正しい対応をすることが肝心です。また、他の人へうつさないためにもマスクの着用を心がけましょう。
インフルエンザ、早すぎる受診はNG?
急な悪寒や発熱、関節痛、全身倦怠感などがありインフルエンザかな? と思った時は、どのようなタイミングで受診すべきでしょうか。
検査を受けるタイミングが早すぎると、インフルエンザにかかっていても陽性反応が出にくいと言われているからといって「必ず半日待ってから受診」ということではありません。
インフルエンザウイルスの迅速検査は、発症12時間以降でないと正しく陽性反応が出ないとされていましたが、年々検査キットの性能が進歩しており、最近の調査では発症後3〜6時間時点での検査でも80%以上の陽性率を示すことが報告されています。
インフルエンザの際の薬服用の注意点
インフルエンザ治療薬(抗インフルエンザウイルス薬)の中でも主に処方されるものは、2018年に発売された新薬を合わせて5種類あり、内服薬、吸入薬、点滴薬などがあります。これらのインフルエンザ治療薬は、患者さんの状態や年齢などに合わせて選択されます。
インフルエンザ治療薬は、発症から48時間以内に服用を開始すると、発熱などの症状が1〜2日間短くなりますが、症状が出てから時間がたってしまう(発症後48時間以降)と服用しても十分な効果がえられません。
また、インフルエンザ治療薬とは別の薬も処方される場合もあります。肺炎や気管支炎を合併したり、重症化させないための抗生物質、熱を下げる解熱剤、その他、鼻水や咳がある場合に症状を抑えるための薬などで、これらはインフルエンザウイルスに直接作用はしませんが、必要に応じて処方されます。このように一人ひとりの症状に合わせて薬が選択されますので、医師や薬剤師の指示どおりに正しく服用しましょう。
インフルエンザの時、医師が解熱剤が必要と判断した場合はアセトアミノフェンが処方されます。解熱剤は多くの種類がありますが、誤った使い方をすると悪化の恐れや脳炎発症のリスクがあります。市販薬もしくは処方薬であっても以前に他の病気に対して処方された解熱鎮痛薬などは、絶対に服用しないようにしましょう。特に、アスピリン、サリチル酸を含む製剤、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸は使用してはいけません。
安静を心がけ、睡眠と水分補給を十分に
インフルエンザにかかった場合は、薬を服用するだけでなく、以下の対応についてもしっかり守りましょう。・安静を心がけ、休養と睡眠をしっかりとりましょう。・水分を十分に補給しましょう(お茶、ジュース、スープなどでもOK)・他者への感染をふせぐため、マスクを着用し外出は控えましょう。
出席停止日数を守ろう
インフルエンザによる出席停止期間は、学校保健安全法で「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」となっています。
発症した日から数えると、最短でも6日間の出席停止が必要になり、あとは解熱した日によって出席停止日が延長されることになります。出席停止期間中は、家で安静に過ごすようにしましょう。
ただし、医師に他者への感染のおそれがないと認められたときは、この限りではありません。
まとめ
インフルエンザは風邪とは違うため、速やかに治療を開始しましょう。検査を受けるタイミング、症状の変化への注意、薬の服用法、出席停止期間など正しい知識を身に付け、重症化や他者への感染を防ぎましょう。

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