2020/05/01【新型コロナウイルス:COVID-19】「長丁場前提に新しい生活様式を」専門家会議提言

新型コロナウイルスの対策について話し合う政府の専門家会議が、5月1日、新たな提言を出しました。
感染の状況が厳しい地域では、新たな感染者数が一定水準まで低くなるまでは、引き続き「徹底した行動の変化」が必要になるとし、新たな感染者が限定的になっている地域でも、感染拡大を予防する「新しい生活様式」に移っていく必要があるとしています。
専門家会議が示した状況分析と提言の「ポイント」と、「記者会見での主なやりとり」をまとめています。提言の全文も載せています。
専門家会議の「状況分析」と「提言」のポイントは
現在の全国の感染状況は?
・多くの市民の協力により、爆発的な感染拡大「オーバーシュート」は免れ、新たな感染者数は減少傾向に転じている。
・緊急事態宣言をはじめとした一連の対策の効果が現れはじめていることは確かだと考えられる。
・しかし、3月20日すぎから生じた発症者数の急増のスピードに比べれば、減少のスピードは緩やかに見える。
東京の感染状況は?
・東京都の新たな陽性者は4月9日には250人近くに上っていたが、直近では100人を下回るようになっており、減少傾向にあるものと考えられる。
・ただ、東京都の減少のスピードは、増加したときのスピードに比べれば緩やかになっている。
・東京都の内訳では、夜間の接待を伴う飲食店での感染者数は減少する傾向にあるが、病院内や福祉施設内での集団感染や家庭内感染が多くなってきている。
・市民の行動の変化が成果を上げ、全国的に新たな感染者数が減少傾向にあることは確か。
・しかし、いまだにかなりの数の新たな感染者が発生し、現在の水準は、爆発的な感染拡大「オーバーシュート」の兆候を見せ始めた3月中旬前後の水準までは下がっていない。
医療体制:入院期間や入院者数は
感染が確認され入院した人の入院期間は、およそ2週間から3週間となっている。とりわけ人工呼吸器を要するような重症患者は、入院期間が長期化して、入院中の患者の数が減少しにくい状態が続いてる。
このため、医療現場のひっ迫した状況は、新たな感染者数の増え方の鈍りに比べて、緩やかにしか解消されない。
今後の見通しは
イギリスやアメリカの論文では、1年以上の対策の必要性を予想し、一定の再流行を想定している。また、医療崩壊が生じないよう徹底した政策を講じる必要性が指摘されている。
いまの日本では外出自粛や営業自粛など前例のない対策が講じられ、それにより日本の新たな感染者数は減少傾向に転じたとみられている。
感染の状況が厳しい地域では、新たな感染者数が一定水準まで低くなるまでは、医療崩壊を防ぎ、市民の命を守るため、引き続き「徹底した行動の変化」が必要になる。
新たな感染者が限定的になり、対策の強度を緩められるようになった地域でも、感染拡大を予防する「新しい生活様式」(後述)に移っていく必要がある。
「徹底した行動の変化」を維持するのか、緩和するのかの判断は?
次のような要素を総合的に判断することに。
▽新たな感染者数の水準が十分に抑えられているか。
▽必要なPCR検査が迅速に実施できるか。
▽地域の医療機関の役割分担が明確で、患者の受け入れ先の調整機能も整うなど、重症者から軽症者まで病状に応じた迅速な医療の提供体制が構築されているか。
今後求められる対応
再度まん延しないようにするためには、「新しい生活様式」の定着が求められる。
「新しい生活様式」とは
▽「3つの密」を徹底的に避ける
▽手洗いや人と人との距離の確保など基本的な感染対策を続ける
▽テレワーク、時差出勤、テレビ会議などにより接触機会を削減する
学校は?
感染拡大のリスクをできるだけ低くした上で、学校活動の再開のあり方を検討していくことが必要。
さまざまな社会課題への対応は?
まん延の防止を第1としながら、社会経済活動との両立を図ることが課題になる。
国は、感染拡大の防止に配慮しながら、次のような課題にも対応するため、適切な措置を講じていくべき。
▽外出自粛に伴う心の健康への影響
▽配偶者からの暴力、児童虐待
▽営業自粛による倒産、失業、自殺
▽感染者や医療従事者への差別や風評被害 など
専門家会議会見 主なやり取り
緩和への数値目標は
行動制限を続けるか、緩和するかは新規感染者数が十分に抑えられていることを判断の基準とすると書かれているが、どの程度の数字、水準を満たせばいいのか、数値を今後示す予定はあるのか?
脇田座長
地域によってどの程度の新規感染者数まで下がる必要があるかはさまざまであろうと考えている。クラスター対策によって新規感染者、クラスターを十分にトレースして、そこから広げないような対策ができるような状況がまず非常に重要だというところ。それから院内感染、施設内感染を起こさないような状況に持っていくことが重要だと考えているので、数字が何人以下とお示しするのは難しいと考えている。
対策を続ける期間は
一部報道で1年以上、今の対策を持続する必要があると話し合ったとあったが、提言には期間が盛り込まれていない。議論の経過は?
尾身副座長
専門家の中のコンセンサスは「時期を明確に言えるようなウイルスではない」ということ。したがって、1年とか半年とかそういうことは残念ながら誰も言えない。むしろ大事なことはそのつど、指標を基に評価して、必要なら対策も変化させること。1年とか2年とか今の段階では言えない。
次のフェーズへの具体的数値は
今後の見通しとして「徹底した抑え込み」を続け、ある程度落ち着いたら「新しい生活様式」の普及と継続で感染拡大を予防すると言ったが、例えばどのくらい感染者数が減ったら、あるいは医療機関にどのくらい空きができたら次のフェーズに入っていくという具体的な数値を示せないか?
尾身副座長
例えば「東京都では感染者数が何例」だとかはっきりしたことは言えない。われわれはいろんな要素を総合的に判断することが必要だと思っている。まずは感染者状況、PCR検査、医療の態勢、各地域の取り組みの状況など総合的に判断する。感染者が何人を切ったからと言って、医療の態勢が整っていなければ、ということもあるので、なかなか言えない。
都立駒込病院 感染症センター 今村センター長
病床に関してはも何床残せばいいということではなくて、北海道の例にもあるように最初の流行よりも次の流行の方が人数が多くなることもある。問題は急に自分たちの予想よりも増えたとしても迅速に、柔軟にその病床を広げられること。かつ病床数ではなくて、それが運用できるスタッフ、備品、その他、すべて含めて有効に使える有効病床数として急な増加にも対応できるということになってくる。質的評価も入るので病床数では難しい。
新しい生活様式とは
新しい生活様式とは具体的に何をどのように気をつける生活が必要なのか? 自粛が続くようなイメージなのか?
尾身副座長
感染防御の基本、3密の回避とか、フィジカルディスタンスなどの基本的なことを中心にやる。例えば職場や学校で、それぞれオール・オア・ナッシングではなくて、二者択一ではなくて、いろいろな工夫ができるので、専門家会議としても、そうしたものの考え方を示せればと思っている。それと同時にみなさんも工夫していただきたい。
感染者数少ない県で対策必要か
感染者数が少ない県でも緊急事態宣言を継続する必要性と意義は?
脇田座長
感染者数の評価は絶対的に必要だが、それに加えて、次に感染が拡大してきたときに準備ができる状況にきちんとなっているかということが非常に重要だと思う。感染者数が急増した時に対応できるような医療態勢の準備、これがきちんとできていること。それからPCR検査の態勢が十分に整えられていること。さまざまな要因をここで準備しておいていただきたいというのがわれわれの願い。
PCR検査迅速か
今後、PCR検査の態勢が整えられていることが緊急事態宣言解除の条件の1つだと思うが、その判断基準はどこに設けたらいいのか?
脇田座長
症状が出てから、相談してからどのくらいの期間で検査に至っているかが指標になる。もう一つは陽性率。それが非常に高い値であればPCR検査が十分にできていないということになるが、それがある程度の数値に収まってくれば迅速にできていることの判断基準になる。
抗体検査
PCR検査は結果が出るまでに4~6時間かかる。それに対して、抗原検査(抗体検査)は15分。精度の問題がクリアできたらPCR検査と同等に扱えるのか?
脇田座長
PCR検査と同様にウイルスに感染している人をその場で検出する新しい抗原検査、あるいは抗体検査はインフルエンザの抗原キットと同様に使えるものだと承知している。非常に短時間で結果が出る。抗原を検出するのでPCR検査より低いがかなり感度は高い。これが導入されると迅速に感染が診断できて、その場で入院の必要があれば入院になる。非常に有用だ。
見えてきた兆し
尾身副座長
このまま何もしないとヨーロッパ型のオーバーシュートの軌道に入ってしまって、医療の態勢がひっ迫してしまうということで、これだけの戦後初めての皆さんが協力し合ってということになった。強制的に街を封鎖しなくても、皆さんの協力で、(感染者数が)上がり気味になっていたものを、ある程度下方に、終息の方向に向けたというのは、日本人みんなの兆しというか、よかったことだと思う。さらにもう少し努力が必要だというのは言うまでもない。

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