2021/02/27【新型コロナウイルス:COVID-19】「歯を磨くことも苦痛に」 1000人以上を診てきた医師と患者に聞く新型コロナの後遺症とは

新型コロナの後遺症を訴える人が増えています。渋谷区で後遺症外来を開くヒラハタクリニックには、1日10名以上の新規患者が訪れ、再診を含めると1日100名程度の患者が通院(オンライン診療含む)しています。コロナ感染時には無症状や軽症であっても後遺症が発症し、中には、激しい倦怠感や、息苦しさ、体の痛みなど、家の中での日常的な動きも制限されるほどの症状に苦しむ人がいるそうです。平畑光一院長に、新型コロナ後遺症の実態や対処方法、また実際に後遺症を経験している女性から日常生活の困難についてお聞きしました。
新型コロナの「後遺症」とは
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、昨年3月ごろから現在(2021年2月下旬)に至るまで、ヒラハタクリニックでは1000人を超える後遺症・後遺症疑いの患者を診療しています。1日に10名以上の後遺症疑いの新規患者が訪れ、その数は増加傾向にあるそうです。
–新型コロナの後遺症とはどのようなものでしょうか
平畑院長: 一般的には新型コロナ感染後、2週間以上身体の異常が続いていれば、コロナの後遺症と考えてよいと思います。一番多い症状は倦怠感です。重い方ですと、お風呂に入るだけで1日寝込んでしまったり、ドライヤーを持っていることができない症状が出ています。ドライヤーを持ち上げることはできても、それを維持できない。また、歯ブラシを持って歯を磨くことが体力的に非常に苦痛であるなど、そういう状況まで追い込まれる方がいらっしゃいます。
–後遺症になる人の傾向はありますか?
平畑院長: 普通の方が急に悪くなることがよくあるというのがこの病気の恐ろしさだと思います。例えば、10代の学生さんで運動部で飛び跳ねていたような方がコロナにかかった後、突然動けなくなってしまって、ずっと寝ていないとつらい状態になったりしています。学校に行ったら非常にだるくなり、次の日まったく動けなくなる。トイレに行くのも限界で、ベッドの横にトイレを置くようなことも考慮する必要がでていたりしています。
また、ヒラハタクリニックでは、後遺症を訴える患者は女性のほうが男性よりも1.4倍多く、幅広い年齢層に症状が見られ、10代、20代の方も少なくない状況です。
言語に絶する倦怠感
平畑院長によると新型コロナの後遺症では、倦怠感の他に、気持ちの落ち込みや、息苦しさ、身体の痛み、脱毛など様々な症例が見られると言います。「思考力の低下」では、言ったことを覚えていない、言われたことを思い出せないなどの症状のほか、頭に霧がかかったような感じがする症状(ブレインフォグ)を訴える方も多くいるそうです。
–倦怠感の原因は?
平畑院長: 倦怠感の原因として考えられているのは、新型コロナに感染した後、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群という病気にだんだんと移行してしまう方がいらっしゃることが分かっています。全員がなるわけではなく一部の方だけなのですが、それが非常に強い、言語に絶するきつい倦怠感を起こしてしまう病気なんですね。その筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の傾向がある方が、そういった強い倦怠感を呈してしまうということになります。
感染時に軽症でも後遺症が発生
–新型コロナ感染時の重症度は後遺症の発症率と関係はあるのでしょうか?
平畑院長: 実は関係がないと考えています。当院の患者さんのほとんどは軽症だった方、もしくは無症状感染だったけれども、後遺症だけが出てきたという方がいらっしゃるんです。また海外の文献にも、「最初の症状の強さが後遺症にどういう影響を与えるか」という研究がありますが、「重症でも軽症でも変わらない」という結果が出ています。
数カ月後に急に後遺症が出ることも
–後遺症はいつ発症するのでしょうか?
平畑院長: 新型コロナ感染時に症状が出た後、つながって後遺症が出ている方が一番多いのですが、全く症状がない期間が3カ月程度あった後、強い運動をした後に急に後遺症が出てきてしまうという方もいます。最近のWHO(=世界保健機関)の見解でも「半年以内に出てくることがある」という言い方をしていますので、感染してから半年は後遺症が出てくる可能性があると考えていただいた方がいいと思っています。
新型コロナ後遺症の特徴
–後遺症/後遺症疑いの人が気をつけたほうがいいことは?
平畑院長: 感染時に重い症状があって、ICUに入ったり人工呼吸器につながれていた方は(リハビリのため)運動する必要があるのですが、そうではない軽症だった方々が後遺症になった場合は、「運動をすると悪くなる人」が非常に多いのです。特に一番やってはいけないのが、だるくなることを繰り返すということです。例えば10分、20分ほどの短い時間を歩いたり買い物に行っただけで、ものすごく疲れてだるくなってしまう方が、訓練だと思って頑張ってそれを毎日続けてしまうと、どんどんできなくなっていき、最終的に寝たきりに近づいてしまうことがよくあります。なので、「だるくなるレベルまで動いてはいけません」ということを患者さんには申し上げています。
また、だるくない方でも強い運動をすることで急に悪くなることがあり、例えばマラソンや、1時間以上頑張ってウオーキングしてしまったり、ゴルフの長いラウンドに行ってしまうなどすると、症状がきつくなってしまうことがありますので、避けていただくようにしています。これが一番大事です。
後遺症患者の悩みとは
–患者さんの後遺症の悩みで一番多いものは何ですか?
平畑院長: 働けないというのが一番多いと思います。当院の500~600人の患者さんのデータを見ますと、十数人は解雇、もしくは退職に追い込まれていますし、200人近い方が休職になっています。後遺症で当院にかかられている方の6割以上が仕事に何らかの影響が出ているという状況です。
–今後、改善すべき課題はどのようなことでしょうか?
平畑院長: やはり国の方で「コロナには後遺症がある」ということを公式にアナウンスしていただきたいと思っています。例えば、ホテル療養した後に、後遺症の案内はなく「あなたは治りましたから出て行ってください」というように言われてしまうのですけども、療養が終わった後に、非常に強い倦怠感等を訴えられる方が多いわけです。
頑張って働くと、悪くなってしまうことが非常に多いのが後遺症の特徴なので、働くことでだるくなってしまう人は、悪化させないために絶対に休まないといけないです。そういう方々はまず会社に伝えて、休ませてもらうということが大事です。その時に必要であれば医師にかかって、診断書を書いてもらうということも必要になってくると思います。
「後遺症でこういう症状が出ることがあります」ということを紙一枚で構わないので国からアナウンスしていただけるだけで、後遺症に悩む方々は会社に相談しやすくなります。まず国の方で「コロナの後遺症は起き得る」ということを罹患者の方々に伝えていただけたらと思っています。
「病は気からではない」–後遺症に悩む患者に聞く
新型コロナ後遺症に悩む中村さん(30代女性)から話を聞くことができました。中村さんは2020年11月中旬に新型コロナに感染し熱と倦怠感に襲われましたが、約2週間で回復しました。その後、気になる症状はありませんでしたが、回復から約3週間後に仕事で負荷の高い作業を行った翌日から「身体が鉛になったような倦怠感」と、頭に霧がかかったような状態(ブレインフォグ)が発生。その激しい倦怠感と筋肉痛は2カ月たった今でも続いています。
<中村さんの現在の症状>
・歯磨きや、カーテンの開け閉めといった、ごく軽い日常的な動作の後に、動悸や息切れが発生。治まるのに数十分から数時間かかることも
・激しい倦怠感と筋肉痛が長時間発生。その間は寝たきり状態に
・長く続く微熱
中村さん: 何もできずに伏せっている時が一番つらいです。痛み止めもこれ以上飲むことができず、ただただ過ぎ去るのを待つのが本当につらいです。シャワーは週に1回程度。自分で髪の毛を洗うことが難しいので、同居するパートナーや訪問介護士にシャワーの介助をしてもらっています。
もともとは福祉関係の仕事に従事しており、ハードワークもこなせる体力に自信がありました。今は、その仕事ができないことが精神的に一番つらいです。
後遺症患者の様々な症状やニーズに合わせた制度や支援がすぐにでも必要だと思います。私はたまたまパートナーや友人に恵まれ、助けてもらうことができましたが、一人暮らしの人のことを思うと胸が痛いです。また、ご家族に「甘えだ」とか「後遺症なんてない」とか「気の持ちようだ」というふうに言われて傷ついている人たちがたくさんいると聞いています。後遺症は「病は気から」とか、「気の持ちよう」ではありません。もし今つらさを感じている方がいたら、すぐに医療機関に相談してください。感染後、ホテル療養等が終わられた方も、充分すぎるかなと思うくらいに安静にして様子を見てほしいです。
誰にでも感染するリスクがあること、重大な後遺症が残る可能性があることを知ってほしいです。同じ思いをされている方はどうか使える制度を使って、人に頼って、自分を責めないで過ごしてほしいと自戒を込めて思います。
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