2017/09/19【はしか:麻疹ウイルス】「麻疹」海外で感染、国内で発症 8割が成人、予防接種励行を

【はしか:麻疹ウイルス】「麻疹」海外で感染、国内で発症 8割が成人、予防接種励行を

強い感染力を持ち、高熱や発疹など重い症状が出る麻疹(はしか)。この夏も米疾病対策センター(CDC)が、欧州で麻疹が流行しているとして注意喚起した。日本は世界保健機関(WHO)から「排除状態」と認定されているが、海外からの帰国者が日本に持ち込んだとみられる集団感染が度々起きている。とくに20~30代の大人が感染するケースが多く、対策が求められている。 (平沢裕子)

肺炎・脳炎で死亡も

「麻疹は決して子供の軽い病気ではありません」

今月初旬、東京都内で開催された「トラベラーズワクチンフォーラム研修会」で、国立感染症研究所感染症疫学センター第3室の多屋馨子室長は訴えた。

麻疹は合併症を引き起こしやすく、肺炎や脳炎を合併すると死亡することもある。また、麻疹をきっかけに、「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」と呼ばれる難病になることも。SSPEは、麻疹にかかって数年が経過してから知能障害やけいれんなどの症状が出て、数年から数十年で死に至る重篤な疾患。多屋室長は「SSPEを予防するためには、麻疹にかからないこと」と指摘する。

潜伏期も感染拡大

平成27年にWHOから麻疹の排除状態にあると認定された日本だが、その後も集団感染が度々起きている。

昨年8~9月には、大阪府の関西国際空港を中心に30人以上が感染。同空港を7月下旬に利用した中国在住の日本人から空港スタッフが感染したのがきっかけとみられている。また、今年2~4月には山形県を中心に1都6県で約60人が感染。インドネシアのバリ島から帰国した男性が、感染に気付かないまま自動車教習所の合宿に通ったことで広まったという。どちらのケースも、二次感染したのは20~30代の成人だった。

国立感染症研究所の感染症発生動向調査によると、今年に入ってからの麻疹感染者は、インドネシアなど東南アジアからの帰国者が多く、アフリカやヨーロッパからの帰国者もいた。麻疹は感染してから症状が出るまでに10~12日の潜伏期がある。この間の体調は悪くないため、気付かずに行動し、感染を広げる一因となっている。

接種費用の負担は?

28年と29年(32週まで)に報告された麻疹患者の約8割が成人。小児が少ないのは予防接種効果のためとみられる。

麻疹の感染力は極めて強く、免疫を持っていない場合はほぼ100%発症する。予防にはワクチン接種が勧められる。ワクチンは麻疹を100%予防するわけではないが、接種すると、たとえかかったとしても症状は軽く、肺炎や脳炎など重篤な合併症は防げる可能性が高い。

麻疹は昭和53年から定期接種となっており、平成18年度からは1歳児と年長児の2回接種となった。1回の接種では免疫が付かないことがあるためだ。40~50代が子供のころは、日本でも数年おきに麻疹が大流行したため予防接種の有無にかかわらず免疫を獲得している人が多いが、20~30代では免疫が付いていない人が多数いるとみられる。

医療機関では、スタッフの採用時に麻疹の免疫の有無を確認、免疫がない人には予防接種を義務付けるところが増えているが、一般企業ではこうした対応をしているところはまだ少ないのが現状だ。また、すでに働いている人では、接種費用を誰が負担するかという問題もある。

関西福祉大学の勝田吉彰教授(産業医学)は「海外赴任者や出張者、ハイリスクと考えられる職場では、ワクチンの未接種や1回接種のみの従業員にワクチン接種を勧奨してほしい」としたうえで、「予防接種施策の変遷により世代によって免疫に差があることを踏まえ、費用の会社負担や公的負担の検討が必要では」と話している。

http://www.sankei.com/life/news/170919/lif1709190013-n1.html

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