2017/11/07【研究報告】腸内細菌はほぼ無害、口腔細菌は有害のわけ

【研究報告】腸内細菌はほぼ無害、口腔細菌は有害のわけ

前々回、前回とヒトの体(特に口腔<こうくう>内と腸管内)には多くの常在菌が生息していることをお話ししました。常在菌は時に病気を引き起こしますが、体の部位によってその危険性は全く違います。口腔ケアを怠ると、口腔細菌は歯周病などの病気を引き起こします。一方で、食習慣などを配慮すれば直接ケアをしなくても、腸管内で腸内細菌が病気を引き起こすことはめったにありません。不思議ではありませんか? 今回は、その理由を説明したいと思います。

細菌が「感染する」とは?

細菌が体内に入り込んで増殖し、体に害を及ぼすようになった状態を「感染」といいます。口腔内や腸管内には細菌がたくさんいますが、これを感染とは言いません。なぜなら口腔内や腸管内は「体内」ではないからです。

感染とは何かを理解していただくために、まず、「体内」と「体外」との違いは何かをお話しします。

口から肛門まで続く消化管は1本の管になっています。ちくわをイメージしていただくと分かると思いますが、ちくわの穴はちくわではなく、ちくわの外ですね。同じように、消化管の内側は「体外」なのです。感染は、一部の細菌は粘膜に付着した状態でも感染を起こしますが、基本的には細菌が消化管の壁(粘膜)から「体内(=組織内)」に入り込んだ時に起こります。

ドジョウやウナギの表皮と同じ腸管内

突然ですが、ドジョウやウナギが、たくさんの細菌がすむ泥の中に潜んでいても、それらの細菌に感染しないのはなぜだと思いますか。死んだ細胞の角質で外側が覆われ、強いバリアーになっているヒトの皮膚とは異なり、ドジョウやウナギを含めた魚類の表皮は全て生きた細胞でできていて、感染には弱いはずです。それでも平気なのは、ドジョウやウナギの表皮がムチンという粘液の層で覆われて、表皮には泥(の中の細菌)が直接触れていないからなのです。

ヒトの腸管内も同じ仕組みと考えられます。腸管表面の粘膜は生きた細胞でできており、栄養素や水分の吸収・排出といった重要な役目を担うデリケートで壊れやすい組織です。そのため、700~800μm(μ<マイクロ>は100万分の1)のムチン層で覆われています。したがって、糞便中を含めた腸内の細菌は、直接粘膜に触れることはないのです。

一方で、赤痢菌やサルモネラなど腸管で病気を引き起こす細菌は、このムチン層内に自ら侵入する能力があり、粘膜表面の細胞に到達して感染します。

凝集する口腔細菌

口腔内にもムチン層はあるのですが、厚さは腸管内の700~800分の1の1μm程度です。保護する力は強くありませんから、口腔細菌は歯や粘膜に直接付着します。歯に付着した細菌が増殖すれば虫歯になりますし、歯と歯肉の間の歯肉溝に生息する細菌が増殖して歯肉に感染すれば歯周病になってしまいます。

さらに、腸内細菌と口腔細菌には大きな性質の違いがあります。口腔内は唾液が大量に分泌され、かみ合わせの強力な圧力がかかるため、それらに耐えなくてはなりません。ですから、口腔細菌は強い凝集能力を持っています。

口腔細菌の大部分を占めるのはレンサ球菌です。就寝前に歯磨きをしても朝起きたときには同じ種類のレンサ球菌同士が凝集したプラーク(歯垢<しこう>)が歯や歯肉を覆っています。この早期に凝集する細菌集団は健康な口腔環境を維持するための重要な働きをしています。

病原菌を増やす「共凝集」

しかし、口腔ケアを怠ったり、歯と歯の間や歯と歯肉の接触部位に磨き残しがあったりすると異なる種類の細菌も一緒に凝集します。これを共凝集といいます。共凝集では、毒性を持つ細菌や歯肉組織を破壊する酵素を産生する細菌などと、レンサ球菌が複雑に結合し合って、プラーク量は一気に増加します。酸素濃度の低いプラークの深部では酸素があると発育しない嫌気性の歯周病原菌などが増えていきます。

通常は歯肉溝内に細菌が入ってくると、好中球やマクロファージといった免疫担当細胞が飛んできて、侵入者を食べてくれます。しかし、これらの細胞は自分より大きな細菌の塊は食べられません。また、共凝集した塊の中心部にいる細菌は、好中球に食べられても生き残ることができます。こうして細菌が歯肉に感染し、歯周病になってしまうのです。

同じようにたくさんの細菌が生息していても、「環境」と「常在菌の性質」の違いで、口腔と腸管では病気になる危険性が全く異なります。口腔ケアが必要な理由が分かっていただけたでしょうか。

https://mainichi.jp/…/health/a…/20171106/med/00m/010/008000c

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