2020/05/02【新型コロナウイルス:COVID-19】ロシア 首相や閣僚 軍に感染広がり深刻な事態に 新型コロナ /ロシア

ロシアでは、新型コロナウイルスに感染した人が4月に入って急激に増えてこれまでに12万人を超え、感染対策を担う首相や閣僚、さらに軍の内部でも感染が広がるなど深刻な事態になっています。
ロシアでは、先月中旬から首都モスクワを中心に感染が拡大し、新たな感染者が2日の発表では9600人余りとなるなど1日数千人規模で増え続けて、これまでに12万人を超え、亡くなった人は1200人を上回っています。
先月30日には、感染対策を担うミシュスチン首相が感染して入院したのをはじめ、閣僚や政府高官、さらにロシア軍の内部でも感染が広がる事態となっています。
国営テレビも、感染者の急増でモスクワ市内の病院の集中治療室のベッドに空きがない状況を詳しく伝え、医療態勢もひっ迫しているとみられます。
感染者が急増した背景として、ロシア政府がすべての国際線の運航を停止した3月下旬までにイタリアなどから多くの人が帰国したことや、これまでに390万人以上を対象にウイルス検査を行うなど検査態勢を強化したことがあるとみられます。
ロシア政府は、3月下旬から全国一斉の休業措置をとり、モスクワでは徒歩での買い物などを除いて外出する際には当局が発行する電子通行証の携帯を義務づけ、違反者には罰金を科すなどの対策を進めています。
しかし、感染拡大に歯止めがかからないことから、プーチン大統領は先月28日、国民に対して「個人の無制限な自由が人々の命を脅かしかねない」と警告し、休業措置を少なくとも今月11日まで延長するなど対策を徹底させる方針を示しています。
大統領の支持率 ここ数年で最低に
プーチン大統領は、新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない現状に加えて、財政の根幹をなす原油などエネルギーの価格急落という二重苦に見舞われ厳しい状況に立たされています。
ロシアでの感染者は、3月末の時点で2300人ほどと、ヨーロッパ各国に比べて少なく、プーチン大統領は、「事態はコントロールできている」と強調していました。
しかし、先月中旬から、新たな感染者が1日数千人規模で増え続け、プーチン大統領は地方の知事などを集めて開いたテレビ会議で「きちんと対応できないのであれば犯罪的な職務怠慢とみなす」と強い口調で対応を求めるなど、急激な感染拡大にいら立ちを示しました。
また、原油価格は、一時、プーチン大統領が初めて就任した20年前の水準にまで下がるなど、財政の根幹をなすエネルギーの価格急落で経済も深刻さを増しています。
ロシアの世論調査機関が3月に実施した調査では、かつて80%以上を誇った大統領の支持率は63%とここ数年で最低となりました。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大は、プーチン大統領が重視する政治日程にも影響を与えています。
プーチン大統領が再び大統領選挙に立候補することを可能にする憲法改正の是非を問う国民投票は、先月22日に行われる予定でしたが、延期に追い込まれました。
また、安倍総理大臣など各国の首脳を招待して今月9日に行われる予定だった、ナチス・ドイツに対する戦勝記念75年の大規模な祝賀行事も延期となりました。
プーチン大統領には、憲法改正をめぐる国民投票で高い支持を得て、戦勝記念の行事で改めて内外に存在感をアピールして強大な影響力の維持をはかるねらいがあったとみられますが、こうしたもくろみが外れた形となり、一転厳しい状況に立たされています。
ロシア経済に深刻な影響
新型コロナウイルスの感染拡大は、ロシア経済にも深刻な影響をおよぼしています。
ロシアでは、3月末から全国一斉の休業措置と首都モスクワなど主要都市での外出制限が行われ、多くの工場が一時操業を停止し、ほとんどの飲食店も休業を余儀なくされています。
また、感染拡大にともなう世界的な需要の落ち込みによって原油価格は一時20年前の水準に下落し、ロシア経済を支える石油やガスの大手企業の大幅な減収が見込まれています。
さらにロシアは、財政のおよそ4割を石油やガスに依存していることから財政悪化は避けられないとみられています。
民間のシンクタンクは、ことし1年間の経済成長率が最大でマイナス12%に落ち込むとする厳しい予測を発表し、中央銀行も、マイナス4%からマイナス6%になると、大幅に下方修正しました。
原油価格の急落と連動して通貨ルーブルもドルとユーロに対して大幅に値下がりし、輸入品を中心に物価の上昇が懸念されています。
こうした状況を受けて、南部の都市ウラジカフカスでは先月20日、およそ1000人の市民が、地方政府の庁舎前に集まって収入の減少に抗議し、警察に拘束される人も出ました。
プーチン政権は、経済の低迷が続いた場合、国民の不満が高まり、抗議集会などが各地に広がることを警戒しています。
専門家“プーチン政権へ批判高まる可能性”
ロシアの民間銀行「ロスバンク」のエコノミスト、アンナ・ザイグリナさんは、ロシア政府がとった臨時休業や外出制限といった措置の影響について「最初の1週間となった4月の第1週だけで、国民の11%が、仕事を失ったり収入が減少したりした」と述べ、すでに大きな影響が出ていると指摘しました。
ロシア政府は、中小企業を支えるため、日本円で4兆円規模の資金を拠出するとしていますが、ザイグリナさんは「中小企業が4月分の休業支援金を受け取るための申請は5月にしかできない。実際に資金を受け取れるのは早くても5月末になる」と述べ、早急な資金の手当てが必要だとしています。
そして、「この先2~3か月以内に政府が、大多数の企業を支援するための現実的な方策を取らなければ、政府に対する世論は確実に悪化する」と述べ、経済の悪化に対応できなければプーチン政権への批判が高まる可能性もあるという考えを示しました。

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