2019/08/31【ワクチン】性病「クラミジア」ワクチン開発に光、1億3100万例の新規感染は防げるか
性感染症「クラミジア」ワクチン開発に光
性器クラミジア感染症に対する開発中のワクチンは安全で、有効性についても有望であることが、初期段階の臨床試験で明らかになった。35人の健康な女性を対象としたプラセボ対照二重盲検のランダム化第1相試験で、2種類のワクチンは忍容性が高く、いずれかのワクチンを接種した女性においてクラミジアに対する抗体の産生が認められたことが分かった。
試験結果の詳細は、デンマーク国立血清研究所ワクチン研究センターのFrank Follmann氏らが「The Lancet Infectious Diseases」8月12日オンライン版に発表した。
今回の臨床試験では、19~45歳の健康な女性35人を対象に、2種類のワクチンのいずれかを接種する群またはプラセボを接種する群の3つの群にランダムに割り付けた。その結果、ワクチンを接種した全ての女性において、クラミジアに対する抗体の産生が認められた。特に「CTH522:CAF01」と呼ばれるワクチンを接種した群では、もう一方のワクチンを接種した群と比べて抗体産生が約6倍であることが確認された。
なお、最も頻度の高い副作用は、注射部位の疼痛や圧痛だった。ただし、軽症例がほとんどで、2~4日ほどで消失したとしている。
ただ、この結果だけでは、ワクチンでクラミジア感染症が予防できるのか、あるいはその効果が長期にわたり持続するのかどうかは不明だ。Follmann氏は「抗体とT細胞を組み合わせると、クラミジアに対する防御効果が発揮されることが研究で示されている。しかし、ヒトで感染を予防できるかどうかについては、大規模かつ長期の臨床試験で検証する必要がある」と話している。
また、Follmann氏らは、ワクチンの実用化にはさらに検証を重ねる必要があるとした上で、今回の結果を踏まえて、より大規模な臨床試験の実施を計画しているという。同氏は「ワクチンが実現すれば公衆衛生だけでなく、経済的にも多大な影響をもたらすだろう」と説明。性器クラミジア感染症対策においても、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンと同様の成功を収めることが期待できるとし、「最終的には、性行為を経験する前の女児や、場合によっては男児も対象としたワクチン接種の普及につなげたい」と同氏は話している。
今回の報告を受け、専門家の一人で米国セクシャルヘルス協会のスポークスパーソンであるFred Wyand氏も「有望な結果だ」と評価。「性感染症のクラミジアのワクチン開発は困難の連続だった」と振り返り、「この試験結果を考慮すると、ワクチンの実現は夢ではないようだ。ただ、その実現はかなり先になるだろう」と話している。
性器クラミジア感染症は世界で最も一般的な性感染症の一つで、新規感染例は年間約1億3100万例に上る。感染例はティーンエイジャーや若年成人に多くみられる。また、クラミジア感染症には男女を問わず罹患する可能性があり、女性の場合は子宮頸部や直腸、咽頭、男性の場合は性器や直腸、咽頭などに感染する。
論文の付随論評を執筆した米ノースカロライナ大学チャペルヒル校教授のToni Darville氏は「クラミジアワクチンの臨床試験は始まったばかりだが、将来的に有望だといえる」とした上で、ワクチンによって感染を防げなくても、卵管など上部の生殖器の損傷を防げるのかどうかなどを解明すべき課題として挙げている。