病原体を媒介し、刺されれば感染症で死に至る危険もある「マダニ」を紹介する企画展が、和歌山県海南市の県立自然博物館で開かれている。会場には実物の標本や巨大模型などが並び、来場者からは「怖い」「気持ち悪い」との声が上がる一方、夏休みの自由研究の参考にするためか、子供たちが興味深そうに眺める姿も。お堅いイメージの博物館が仕掛けた異色の企画展は意外と反応がいい。

まるでモンスター

「マダニにご注意!!」と題した企画展。会場に入ると、まず目を引くのが、ガラス越しに展示してあるマダニの大型模型だ。赤黒い体に白黒の毒々しい模様。そこから生える8本の足…。まるで映画に出てきそうなモンスターを思わせる。

マダニは、学術的には8本脚からなる節足動物。昆虫ではなく、クモやサソリに近い生物とされる。唯一の栄養源として動物の血を吸い成長する。成体は体長2~3ミリ程度だが、吸血後は一円玉大(2センチ)まで膨らむことも。

湿潤な場所を好み、森や公園の葉の裏などに潜み、近づいてくる動物の振動を察知し、肌に寄生して吸血する。その際にウイルスなどの病原体を媒介。深刻な感染症を引き起こす危険性がある。

国立感染症研究所(東京)によると、マダニを介したウイルス感染が中心の「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の国内での患者報告例は434人(今年6月26日現在)で、うち死亡例は66人。血液などの患者体液と接触することでヒトからヒトへの感染も報告されている。

ホームページにある説明によると、SFTSに感染すると6~2週間の潜伏期を経て発熱や嘔吐(おうと)、下痢などの症状が認められ、神経症状や出血症状などを起こす。致死率は6・3%~30%と報告されているという。

同研究所は「治療は対症的な方法しかなく、有効な薬剤やワクチンはない」として対策の徹底を呼びかけている。

そんなマダニを大々的に紹介したのが、今回の企画展。大型模型は、博物館が実物の約25倍となるサイズを特注した。模型の近くには、博物館の学芸員らが捕獲したマダニの実物標本もある。

生態を知れば対策も

恐ろしいマダニだが、担当の佐々木歩学芸員は「彼らも生きるために必死なんです」と話す。

佐々木さんによると、マダニには羽も脚力もなく、飛んだり跳ねたりできない。そのため、高い位置にある葉の裏などに“けなげに”一歩ずつ移動し、吸血する動物をじっと待つしかない。潜んでいる場所にまで吸血する動物が運悪く来なければ、そのまま餓死することもある。

もちろん、マダニによる感染症は死に至る危険があるため、生態を知れば対策にもつながることを企画展で理解してほしいという。

展示でも、野外では肌の露出を少なくする▽帰宅後は入浴し、ダニにかまれていないか確認する-など、マダニから身を守る服装や方法も紹介している。

上々の反響に来年も

そんな企画展は来場者の反応も上々だ。マダニに刺された経験があるという女児(8)は、「自分を刺したのはこれだったんだ」と興味深そうに展示をながめていた。

会場でマダニの危険性や対処方法を学んだという女性(33)は「公園などに行くときはダニよけスプレーを使い、帰宅後は早めに入浴して刺されていないか確かめたい」と話した。

企画展はインターネット上でも話題で、「見てるだけで痒(かゆ)くなってきました(苦笑)」などのコメントも。

博物館は来年以降も、マダニに刺される危険性が高まる夏のレジャーシーズンを前に企画展を開催する予定。佐々木さんは「世間で『殺人ダニ』といわれるマダニが普段どんな暮らしをしているか知り、同時に、予防法や対処法も学んでもらえれば」と話している。

https://www.sankei.com/we…/news/190814/wst1908140001-n1.html

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