2017/06/22【パンデミック】次のパンデミック、感染源はコウモリか 2位は霊長類、3位はげっ歯類

【パンデミック】次のパンデミック、感染源はコウモリか 2位は霊長類、3位はげっ歯類

次のパンデミック(感染症の世界的大流行)は、どこからやって来るだろう。研究によると、可能性が高いのはコウモリだ。

新たな感染症との戦いには、何十億ドルもの費用がかかる。パンデミックを引き起こしたエイズ(後天性免疫不全症候群)や、西アフリカで最近流行したエボラ出血熱などがその例だ。そこで、ニューヨーク市に本拠を置く非営利団体「エコヘルス・アライアンス」の研究チームは数年前、将来のパンデミックがどこでどのように発生し得るか特定する試みに着手した。野生動物のほか、ヒトを含む哺乳類に感染することが知られているウイルスのデータベースを分析し、未知のウイルスがどのくらい存在し得るか、そのウイルスを持つのはどの動物か、そして、それがどこにいる可能性が高いかを予測した。

エイズや、エボラ出血熱、重症急性呼吸器症候群(SARS)といった新たな感染症は、動物が発生源となってヒトに広がった。感染症の原因となるウイルスがヒトからヒトへと感染するようになると、大流行が起きる可能性がある。

感染症が専門の生態学者で、エコヘルス・アライアンスの代表を務めるピーター・ダスザク博士は、次のパンデミックの予測がかつてないほど重要になっていると指摘する。新種のウイルスがヒトに感染するスピードは速くなっている。その一因は、人々が世界中を移動するようになったことと、経済発展だ。「私たちは1日で世界を移動し、取り込んだウイルスを運んでいる。そして、ウイルスがパンデミックをひき起こす」と話す。

研究チームは、哺乳類とウイルスの関係性を示す2805件のデータベースを使い、ヒトの脅威になるウイルス、あるいは脅威になり得るウイルスをコウモリが最も多く宿していることを突き止めた。そのウイルス数は、霊長類(サルなど)が持っているウイルス数の2倍近くだ。霊長類に次いで3位はげっ歯類だった。コウモリのウイルスはヒトに直接感染したり、霊長類などの他の動物を介して感染したりする恐れがある。

ダスザク博士は、「過去20年間を振り返ると、エボラ、SARS、MERS(中東呼吸器症候群)、ニパウイルス感染症、さらにはオーストラリアのヘンドラウイルス感染症があったが、これらのウイルスは全てコウモリが宿している」と述べた。同博士は研究チームを率いた論文の主執筆者だ。

同博士によると、1200を超えるコウモリの種のそれぞれが、ヒトの脅威になる可能性の高いウイルスを平均で17.22種保有していた。これまでにヒトに感染したコウモリのウイルスは53種類だけで、大半はまだ知られておらず、今後被害をもたらす可能性があるという。「コウモリには感染の潜在性のあるウイルスが文字通り何千種類も存在し、発見されるのを待っている」

研究チームは、どのタイプのウイルスがヒトにとって最も危険かを分析。その結果、多くの動物種に感染するウイルスは、ヒトにも感染する可能性が高いことが分かった。

チームはその後、未知のウイルスを宿すコウモリや霊長類、その他の哺乳類が多く存在し、ヒトと接触する機会が増えている要注意地域として、ブラジルのアマゾンや西アフリカなどを特定した。アマゾンでは、野生動物の多く生息する森が森林伐採ビジネスや横断道路による影響を受けている。また西アフリカでは、農業の発展に伴ってネズミなどのげっ歯類のすみかが掘り起こされている。

げっ歯類は、米国の山岳地域や南西部でも脅威となっている。ダスザク博士によると、郊外の開発が進んでいるほか、アウトドアの活動に興じる人が増えているからだ。霊長類は中央アフリカと東南アジアでリスクとなっている。中央アフリカでは霊長類の狩猟が行われているほか、東南アジアにはマカク属(オナガザル科)の生息地に近い場所で暮らす人々がいるからだ。

ダスザク博士は「その場所に出向いて(パンデミックを)阻止するのが狙い」だとしたうえで、「阻止のための第一歩は、そうしたウイルスがどこに存在するかを理解することだ」と話した。

世界の移動・輸送能力や経済の発達具合を考えると、「ウイルスの立場からみて、いまは最良の状況であり、(ウイルス伝播の)機先をいかに制するかが課題だ」。同博士はさらにこう続けた。「座して待っていれば、いずれ未知のウイルスがすべて発見できる。だがそれではパンデミックというあまりに大きな代償が伴うことになる」

http://jp.wsj.com/…/SB1002478745854960392390458322284258902…

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