2017/09/15【梅毒】「昔の病気」ではない梅毒 今は若い男性で増加

【梅毒】「昔の病気」ではない梅毒 今は若い男性で増加

今回も性行為感染症(STD)の代表である「梅毒」についてお話しします。

梅毒というと「遊郭」が栄えた江戸時代に花魁(おいらん)に代表される遊女たちが苦しめられたということで有名な感染症です。感染経路は性行為以外ではめったになく、少量の唾液(だえき)といった飛沫(ひまつ)感染はまず考えにくいです。

血液感染は十分考えられ、昔に行われていた、不衛生な刺青の刺入(しにゅう)や注射の打ち回しでは感染があったと考えられます。梅毒の原因菌の保菌者と避妊具なしで性交すると、30~40%の確率で感染すると言われています。

梅毒の症状は4期に分かれています。

1期では、感染してから3週間後ぐらいに感染部位(性器、口、肛門(こうもん)など)の皮膚や粘膜に小豆大のしこり(軟骨の硬さ程度)ができます。その後、しこりの中心部が硬く盛り上がります。また太ももの付け根の部分(リンパ節)が腫れますが、これらの症状は放置しても数週間で消えます。

2期では、感染から3カ月後くらいにピンク色のあざや赤茶色の盛り上がったブツブツが、体の中心線にあたる部分を中心に顔や手足にできます。また、脱毛症も出現します。これらの症状は、数カ月から数年続きますが無治療でもまた自然に消えます。

3期では、感染して3年以上たってから結節性梅毒疹やゴム腫と呼ばれる大きめのしこりができます。

4期は末期的症状で心臓、血管、神経、目などに重い障害が出ます。

梅毒は現在でもペニシリンが非常によく効くので、そこまで悪くなる人は見られません。昔の人は、2期を超えて症状が治まると、「完治した」と勘違いしてしまいました。梅毒は「昔の性病」という印象ですが、近年、世界中で増加しています。

特に欧米では、男性同性愛者間を中心に広がっていることが報告されています。男性同士だとコンドームを使わないことが多いでしょうし、肛門や直腸に傷がつきやすく、そこから感染しやすいのです。

国立感染症研究所の調査によると、2013年の国内での梅毒総報告数は1226例で、前年の875例と比べて1・4倍に増加しました。

性別では、男性が80・7%で、25~29歳の若い男性で最も多く見つかっています。女性でも20代が最も多いです。

感染経路は、男性では87・1%が性的接触と報告されています。その内訳は、「同性間接触」が50・2%、「異性間接触」が35・9%、「異性+同性間接触」が1・3%でした。女性では異性間接触が88・1%を占めています。

一般的な性行為は異性間が圧倒的に多いはずなのに、これだけ男性の同性間性的接触で梅毒が多いというのは、やはり日本でも男性同士の性行為が増えてきて、それが梅毒を増やしている大きな原因となっていると考えられます。

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