2021/12/09【研究報告】血小板で新型コロナの重症化リスクを予測

合田 圭介(化学専攻・教授/カリフォルニア大学ロサンゼルス校非常勤教授/武漢大学 非常勤教授)
矢冨 裕(医学部附属病院・副院長/大学院医学系研究科・教授)
西川 真子(医学部附属病院・助教)
新田 尚(株式会社CYBO・代表取締役社長)

■発表のポイント

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)において、血栓症(特に微小血管血栓症)がCOVID-19の重症度や死亡率の重要な要因の一つであることが明らかになっている。実際に、COVID-19で死亡した患者の剖検(病理解剖)報告では、肺、心臓、その他の臓器の末梢毛細血管や細動静脈内に広範に存在する微小血栓が認められており、多臓器不全との関連が想定されている。
血小板は血栓形成に重要な役割を果たすが、本研究では、COVID-19における微小血栓の形成過程を理解するために東大病院に入院したCOVID-19患者(110名)から採取した血液を詳しく調べた結果、驚くべきことに、全患者の約9割において、過剰な数の循環血小板凝集塊が存在することを世界で初めて発見した。また、その循環血小板凝集塊の出現頻度とCOVID-19患者の重症度、死亡率、呼吸状態、血管内皮機能障害の程度に強い相関があることを発見した。
本研究成果は、COVID-19における血栓症発症機序の解明、重症化リスクの予測、より良い抗血栓療法の探求・評価、後遺症の理解に資すると期待される。

■発表概要

研究の背景
COVID-19において、血栓症(特に微小血管血栓症)(注1)(注2)がCOVID-19の重症度や死亡率の重要な要因の一つであることが報告されてきましたが、その詳細は謎に包まれていました。その謎を解くために、東京大学大学院理学系研究科の合田圭介教授、東京大学大学院医学系研究科の矢冨裕教授、米国バージニア大学Gustavo Rohde教授が率いる共同研究グループは、東京大学医学部附属病院(以下、東大病院)に入院したCOVID-19患者(110名)から採取した血液内の循環血小板凝集塊(注3)を、マイクロ流体チップ上で高速流体イメージングにより大規模撮影し、取得した循環血小板凝集塊の画像ビッグデータを解析しました(図1、図2、図3)。その結果、驚くべきことに、全患者の約9割において、過剰な数の循環血小板凝集塊が存在することを世界で初めて発見しました(図4)。また、循環血小板凝集塊の出現頻度とCOVID-19患者の重症度、死亡率、呼吸状態、血管内皮機能障害の程度に強い相関があることを発見しました(図4、図5)。本研究成果は、COVID-19における血栓症発症機序の解明、重症化リスクの予測、より良い抗血栓療法の探求・評価、後遺症の理解に資すると期待されます。
本研究成果は、2021年12月9日(午後7時)に Nature Communications のオンライン版で公開されました。
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