2018/02/22【研究報告】薬剤耐性菌、殺さず無害に 大日本住友と北里大

【研究報告】薬剤耐性菌、殺さず無害に 大日本住友と北里大

大日本住友製薬と北里大学は薬剤耐性菌による感染症に対し、新しいアプローチで薬の開発を始めた。従来のようには菌を殺さず、生かしたまま無害にする。薬で無理に殺そうとすると耐性が誘発されていく仕組みに歯止めをかける。5年以内に臨床段階へ進む物質を特定する。

大日本住友は東京・港の北里大キャンパスに研究メンバーを送り込み、大学側と合計30人からなる混成チームを作っている。2017年10月に共同研究の契約を結んでおり、10年間の契約期間で結果を出さなければならない。

先導役はこれ以上望めない顔ぶれだ。15年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智特別栄誉教授がコーディネーターとして助言する。大村氏の弟子である北里大感染制御研究センターの花木秀明部長がプロジェクトをまとめる。薬剤耐性研究の第一人者だ。

挑戦するアプローチは体内で菌など微生物を無理に殺さず、悪さをさせないというもの。1910年に最初の抗菌剤が合成されて以降、菌は殺すものだった。北里大では、微生物を殺さなくても感染しないようにする研究が成果を出しつつあるという。

薬剤耐性は微生物による感染症に対し、特定の薬が効かなくなることを指す。抗菌剤の乱用などが引き起こす。耐性菌が増殖すると軽くて済んだ症状が重くなりやすく、死亡に至る可能性が高まる。

花木氏は「菌は殺すとプレッシャーがかかり、耐性を誘発する」と説明する。このため殺すのでなく、無害にすることに焦点を当てた。「免疫が働き、排除してくれる」

微生物をどうしたら無害にできるか、具体的な手法は色々試す。大日本住友の竹本浩司主席研究員によると、例えば、人間の免疫機能が働かないようにしてしまう菌の機構を無効にするワクチンのような方法がある。細菌の出す毒素を中和して無害にし免疫に排除を任せる、悪い菌のみ選んで体外へ出すといったやり方が考えられる。

どんな感染症を対象にするかも、まだ明らかではない。ただ、花木氏は複数の化合物群が候補としてあり「5年以内に最低1つは臨床試験(治験)入りさせる」と話す。絞り込んだ化合物が治験に入る割合は10~20%という。

大日本住友は感染症の治療薬「メロペン」を持ち、日本では1995年に発売した。現在、米ファイザーが世界100カ国で販売している。同社を代表する薬のひとつとなったが、その後メロペンのような薬は出ていない。

今回の主な資金は、国立研究開発法人の日本医療研究開発機構から出ることから、再び有力な薬を目指す体制が整った。木村徹取締役は薬の開発を促していくため、企業間で試験データの統合データベースを作るなど、開発負担を減らす仕組みが必要だと提案している。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27206870R20C18A2XB0000/

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