【耐性菌】インド産耐性菌、旅行者がばらまく /インド

【耐性菌】インド産耐性菌、旅行者がばらまく /インド

天然痘やペスト、コレラなど世界で最も悪名高い疫病のいくつかは、無防備な旅行者のおかげで急激に広まった。そして今、旅客機の利用者が年間37億7000万人に達する中、疾患を引き起こす新たな細菌はかつてないほどの速さで世界中を飛び回っている。

◆トイレ不足が助長

米ネバダ州ワショー郡で昨年、70代の女性がまれな感染症で死亡した。同郡保健局によれば、女性はインドで脚の骨折と臀部感染症の治療を受けており、その際に肺炎桿菌(かんきん)と呼ばれる細菌の変異株に感染した疑いがあるという。変異株は26種類の抗生物質に対し、耐性を持っていた。

これは、インドに滞在した旅行者が極めて高い確率で望まない細菌を母国に持ち帰るというケースの典型例で、北米や欧州、オーストラリアでは10年以上前からよくあったことだ。大抵の場合、薬剤耐性のある微生物は糞(ふん)便に汚染された食品や水を介して体内に入り、腸で正常な腸内細菌に取り込まれる。忍び込んだ細菌が危険な存在になり得るのは、腸からぼうこうや血流など、他の組織に逃れたときだ。

ワシントンに本拠を置く疾病動態経済政策センター(CDDEP)のセンター長、ラマナン・ラクスミナラヤン氏(ニューデリー在勤)は「インドに滞在するとこうした感染症のリスクがあることを示した研究は数多くある」と述べた。

抗生物質耐性菌に関しては、インドは世界有数の被害国だ。ラクスミナラヤン氏によれば、同国では薬剤耐性細菌が引き起こす敗血症が原因で、毎年5万8000人以上の新生児が死亡している。さらに、抗菌剤の使い過ぎとトイレや浄水の不足が細菌の変種の増殖と拡散を助長する。

インド政府もこうした状況に対処しようとしている。抗生物質の過剰で不必要な使用に歯止めをかけるため、2014年3月には直販を禁止。同年末、同国のモディ首相は「クリーン・インディア」キャンペーンの一環として、5年以内に屋外排泄(はいせつ)を一掃する計画に着手した。

カルガリー大学の臨床微生物学者、ヨハン・ピットアウト氏は、旅行と薬剤耐性菌の関連を指摘した最初の医師の一人だ。南アフリカで経験を積んだ同氏は02年にカナダのカルガリーに活動拠点を移した際、大病院ではなく一般開業医や介護施設から研究室に持ち込まれる患者検体の中に、抗生物質耐性菌に感染したものが多くあることに気づいた。

同氏の関心を引いた細菌は、ありふれた腸内細菌でありながら、大半のペニシリン系およびセファロスポリン系抗生物質を分解する「基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)」という特異的酵素を産生するものだった。原因を探るため、同氏は患者への聞き取り調査を開始し、彼らの旅行歴の中にその答えを見つけた。大半の患者は過去にインドや中国に滞在していたのだ。

◆8人中7人で検出

インドは35年までに世界3位の航空旅行市場になると予測されている。ピットアウト氏が感染症との関連を指摘して以降、オーストラリアやニューヨークなどの研究者チームによる少なくとも8件の研究で、インドは旅行者が帰国時にESBL産生菌を腸内に定着させている可能性の最も高い国として取り上げられた。ある研究では、スウェーデンの医師らが海外旅行に出かける直前の被験者105人に直腸検査を実施。薬剤耐性酵素の産生が見られる大腸菌を出発前から保有していたのは1人のみだったが、残り104人のうち100人に対し、帰国後に2回目の直腸検査を実施したところ、24人から薬剤耐性酵素を産生する大腸菌が検出された。インドへの渡航者では8人中7人に薬剤耐性菌が見つかった。ピットアウト氏によれば、旅行者が下痢の治療などで抗生物質を服用するのは、正常な腸内細菌の働きを妨げ、新たな細菌の出現を許すことになるため、リスクが高いという。

ESBL産生菌への感染で入院した患者は通常、カルバペネム系抗生物質で治療されるが、現在ではこうした強力な抗生物質でさえ効果を失いつつある。コリスチンが可能性のある唯一の抗生物質というケースも多いが、それさえも耐性菌が中国を筆頭に20カ国以上で発見された。

メルボルンのオースティン病院で感染症疾患の責任者を務めるリンジー・グレイソン氏は「こうした研究により、抗菌薬耐性が南アジアや東南アジア、中国、ギリシャなどの南欧諸国を中心に、世界的な問題であることが示された」と述べた。オーストラリアでは中国から帰国した後に手術を受ける予定のビジネスマンなどについて、懸念が高まっているという。

ネバダ州の女性を死亡させた細菌は、ニューデリーメタロβラクタマーゼ(NDM)と呼ばれる遺伝子により強化されたもので、カルバペネム系とコリスチン系の両方の抗生物質に耐性を示した。この遺伝子は今では米国を含め世界各地で見つかっているため、ネバダ州の女性がインド滞在中に感染したと証明することは不可能だ。それでも、インドが感染源である可能性は高い。CDDEPのラクスミナラヤン氏は「インドでは地域社会にも病院にも、カルバペネム耐性菌がはびこっている」と述べた。

http://www.sankeibiz.jp/…/ne…/170302/cpd1703020500002-n1.htm

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 2017-7-3

    感染症.comのご利用ガイドMAP

    一緒に問題を解決しましょう! お客様の勇気ある一歩を、感染症.comは応援致します! 当サイトを…
  2. 2017-7-3

    感染症ガイドMAP

    様々な感染症情報のガイドMAPです 下記のガイドを参考に、情報をお調べください。 感染症.com…
  3. 2017-7-13

    業界最安値保証の格安な検便検査!

    業界最安値保証の格安な検便検査! 他社の価格より5%以上お値引き致します! 格安な検便検査(腸内…
  4. 2017-8-7

    学術雑誌「医療看護環境学」を創刊致しました!

    学術雑誌「医療看護環境学」を創刊致しました! どうぞご利用ください! 医療看護環境学の目的 …
  5. 2020-7-10

    新型コロナウイルス対策セミナーのお知らせ

    介護事業者だけでなく、一般企業からも大好評をいただいております 感染症.comでは、新型コロ…

おすすめ記事

ページ上部へ戻る