【ワクチン】渡航前のワクチン接種が命を救う

【ワクチン】渡航前のワクチン接種が命を救う

ブラジルで黄熱流行が拡大

今年に入ってからブラジル南東部で黄熱(黄熱病)の流行が拡大しています。ブラジルでは以前からアマゾン川流域などで黄熱が流行していましたが、今回はサンパウロやリオデジャネイロなどの大都市近郊でも多くの患者が発生しているのです。患者の中にはヨーロッパや近隣の南米諸国からの旅行者も含まれています。

黄熱は蚊が媒介するウイルス感染症です。1928年に野口英世が、西アフリカでこの病気の研究中、自らが感染して命を落としたことでご存じの方も多いと思います。今でもアフリカや南米の赤道周辺で流行が続いており、3人に1人が死亡するという恐ろしい病気です。

今回のブラジルでの流行を受けて、世界保健機関(WHO)は都市部に滞在する旅行者にも黄熱ワクチンの接種を強く推奨しています。また、近隣の南米諸国の中には、流行が及ぶのを防ぐため、ブラジルからの入国者に黄熱ワクチンの接種証明書提出を求める国も出ています。
黄熱ワクチンの開発者

黄熱はワクチンの接種でほぼ100%防ぐことができます。このワクチンは、野口英世の死から約10年後の37年に、米国・ロックフェラー研究所のマックス・タイラーが開発しました。彼はこの業績により、51年のノーベル医学生理学賞を受賞しています。実は、野口英世もロックフェラー研究所の一員として、黄熱ワクチンの開発にあたっていました。彼の後任となったタイラーが見事に偉業を成し遂げたのです。

黄熱ワクチンは生ワクチンで、弱毒化したウイルスを接種して免疫をつけるものです。このワクチン接種後の有効期間が、今までは10年間とされていましたが、その後の研究で、1回接種により生涯免疫が持続することが明らかになっています。このため、2016年にWHOは、黄熱ワクチンの接種証明書であるイエローカードの有効期間を「生涯有効」に修正しました。
病原体発見前に作られた最初のワクチン

黄熱以外にも最近は数多くの感染症がワクチンで予防できる時代になっています。では、最初のワクチンが作られたのは、いつごろでしょうか。それは、感染症の原因がまだ不明だった1796年のことでした。この年、イギリスの医師、エドワード・ジェンナーが天然痘ワクチン(種痘)の開発に成功したのです。

彼は「乳搾りの娘は天然痘にかからない」といううわさを耳にして、その理由が牛痘にかかるためではないかと考えました。牛痘とは牛の天然痘で、人間に感染しても軽い症状しか起こしません。そこでジェンナーは、地元の少年の皮膚に、牛痘にかかった女性の膿汁(のうじゅう)を接種しました。それから1カ月後にヒトの天然痘を接種したところ、この少年は天然痘にかからなかったのです。これは現代の生ワクチンと同じ原理です。

やがて19世紀後半になり、フランスの細菌学者、ルイ・パスツールによってワクチン開発は大きく進歩します。この時代までに数多くの病原体が発見されていましたが、彼はその病原体を弱毒化することで、ワクチンを大量に生産する方法を開発したのです。

ところで、このワクチン(Vaccine)という言葉は、パスツールがジェンナーにちなんで名付けたものです。牛のことをラテン語でVaccaと呼びます。これがワクチンの語源になっているのです。

渡航者に推奨するワクチン

海外でも発展途上国に渡航する場合は、感染症にかかるリスクが高くなります。このため、渡航前にいくつかのワクチン接種を推奨しています。

まず、短期の旅行や出張であればA型肝炎ワクチンをお勧めします。この病気は飲食物からかかる病気で、とくに海産魚介類から感染するケースが多くみられます。また、屋外での活動が多い方には、ケガをした時に傷口からかかる破傷風のワクチンもお勧めです。さらに、滞在地域がアフリカや南米であれば、先に紹介した黄熱ワクチンが候補に挙がります。

滞在が1カ月以上の長期になる場合は、B型肝炎や狂犬病ワクチンの接種も検討しましょう。B型肝炎は血液や体液から感染しますが、発展途上国では医療機関の注射器などから感染することがあります。狂犬病は動物にかまれたり引っかかれたりしてかかる感染症で、アジア、アフリカ、中南米などで流行しています。発症すると100%死んでしまうため、動物に近寄らないなどの予防も大切ですが、長期滞在の場合は渡航前のワクチン接種をお勧めしています。これ以外にも日本脳炎、腸チフス、髄膜炎菌、麻疹などのワクチンが滞在地域によって推奨されます。

日本の渡航者は接種率が大変低い

こうした渡航者のワクチン接種率が、日本では大変に低いという調査結果があります。これは、ネパールのカトマンズで行われた調査で、2000年に国際的な医学雑誌に発表されました。欧米からの渡航者は、A型肝炎と腸チフスワクチンの両方を接種している人が90%でしたが、日本からの渡航者は、どちらか一つを接種している人がわずか5%だったのです。この論文の著者(ネパール人)は「日本の渡航医学関係者は接種率を向上させるように、もっと努力すべきである」と手厳しい指摘をしています。

私たちも渡航者のワクチン接種状況について調査を行ってきました。16年に東京国際空港(羽田)でアジアに出国する渡航者を対象に行った調査では、ワクチン接種率が5%以下と、最近でも低いことが明らかになりました。その一方で、企業からの海外駐在員に関しては、ワクチン接種率が高くなっています。11年に海外派遣企業を対象に行った調査では、駐在員にワクチン接種を指導している企業が90%以上に上りました。

このように、仕事で渡航する人のワクチン接種率は向上していますが、海外旅行者にはワクチンの情報が伝わっていないことなどもあり、まだまだ接種率が低い状況です。これを改善させるため、私たちは、旅行業界などと連携して旅行者への情報提供に努めているところです。

ワクチンは社会から感染症を駆逐する

冒頭で紹介したブラジルでの黄熱流行を制圧するため、WHOは現地の住民に対して大規模なワクチン接種を開始しています。ワクチンは個人が感染症にかかるのを防ぐとともに、社会から感染症を駆逐するためにも大変有効なのです。

ジェンナーが開発した種痘は、その後も世界中で実施され、1970年代末に地球上から天然痘という病気を消滅させることに成功しました。ワクチンは個人だけでなく、社会を感染症という災難から守るためにも大いに役立っています。

http://mainichi.jp/…/…/articles/20180327/med/00m/010/014000c

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